縄文文化が日本人の未来を拓く【電子特別版】 [Kindle]

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  • 日本人のルーツ、縄文時代に思いを馳せることが出来る一冊。

    縄文時代は、1万年以上にわたって自然と共存共生した、世界でも稀有な時代。そして、その文化的遺伝子(=言葉)は、現代の我々まで脈々という受け継がれているという。

    縄文人は、ムラ(竪穴住居、食料貯蔵穴・小屋、祭事等を行う広場、ゴミ捨て場、墓地等)で定住生活を営み、ムラの外に広がるハラ(自然的空間)で狩猟、漁労、採集により生計を立て、農耕とは無縁の生活だった(縄文人はハラでいろんなものを栽培はしていたが、農耕=人間の都合に合わせて土地を作り替えて生産する営みは行っていなかった)。一方大陸では、ハラをせっせと開墾してノラ(田や畑)に作り替え、自然を征服した。

    縄文人は、太陽運行をとても気にしていて、二至二分(夏至、冬至、春分、秋分)に聖なる山(左右対称の三輪山型(神奈備山型))の頂から日が上り、日が落ちる場所にムラやモニュメント(ストーンサークル、巨木柱列、土盛・土手)を造っていた。聖なる山は、富士山の他、相模大山、蓼科山、三ツ峠山、白山、岩木山など全国各地にある。

    縄文土器(火焔型土器、王冠型土器)が、複雑に意匠を凝らしたおよそ実用的でない形状なのは、「物語性を表現している」のだという。土器の口縁に付いている飾り(モチーフ)には一定のルールがあり、「神話のようなストーリーを火焔型土器にこめて伝え方のかもしれないし、自分たちがどこからやって来たのかというアイデンティティーにかかわるストーリーかもしれ」ないという。

    土偶は、「一瞥するとヒト型に見えるものの、決してヒトを表現したものではな」く、「何かしら縄文人の観念世界に跳梁跋扈するナニモノカ(精霊)の仮の姿」を表現しようとした苦肉の形態なのだという。

    縄文人は縄文大和言葉を話しており、万葉大和言葉を経て現代の日本語までしっかり受け継がれているという。その最たるものが、オノマトペ(擬音語、擬声語、擬態語)。日本語ほどオノマトペが発達した言語は他になく、「縄文人が1万年以上にわたって自然と共存共生してきたことの大きな証拠」。自然が奏でる「音を、聞き耳を立ててキャッチしているのではなく、自然が発する声を聞」き、「自然との共感共鳴」と言えるほど自然と深い関係を結んでいたためだ。現代の俳句ブームにもその片鱗が見られるという。

    縄文人は、「縄文カレンダー」ともいえる(狩猟、漁労、採集、土器づくりなどの)年間活動計画のもとで生活を営んでいた。

    著者のユニークな仮説が多く含まれているようではあったが、それでも縄文時代研究、ここまで進んでいるんだな。ちょっと感動した。縄文文化が、決して(昔学校で習ったように)辺境の地の劣った文化などではなく、むしろ、日本独自のユニークで人類的に貴重な文化を育んでいたことがよく分かった。その実像、もっともっと解明されていくといいな。

    そういえば、子供のころ、大山の阿夫利神社によく行ってたな。また行ってみたくなった。

  • 本書は、縄文文化の持つ深遠な世界観と、現代日本文化との密接な関係性を示した力作です。著者は考古学の権威として、縄文人の思考や生活様式に新たな解釈を加えています。

    特に興味深いのは、富士山や自然への畏敬の念、食文化、数の概念など、縄文人の精神性と現代日本文化の共通点を指摘している点です。俳句の源流にも言及し、縄文の自然共生思想を継承する大切さを訴えかけています。

    さらに、世界最古の土器としての縄文土器の価値を再評価し、単なる器物を超えた存在意義を論じています。縄文人の土器への想い、装飾への意味付けなど、革新的な視点から考古学の可能性を広げています。

    一方で、文中に散りばめられた著者の問題提起は、縄文文化理解を一層深めるための示唆に富んでいます。私たち現代人が失いつつある縄文的価値観の重要性を警鐘しているようにも読め、大いに刺激的です。

    確かに縄文は日本文化の原点ですが、より積極的に次代に継承すべき叡智が豊富に宿っていることが伝わってきます。全体として、縄文文化を単なる過去の遺産とせず、これからの日本を拓く可能性を秘めた宝の山として位置付けた好著と言えるでしょう。

  • 学校習った縄文人のイメージは真実ではないと聞いて、読んで見た。
    なるほど豊かで知的な暮らしぶり。そして現在の日本人にも脈々と続いている文化的遺伝子。
    面白かった。

    縄文人に思いを馳せながら環状石列遺跡を観に行きたい。

    ※読みやすい文体ではあるけど、全体を通して重複する内容や繰り返される言い回しがあって、せっかくの良い内容が薄まってしまっているように感じた。

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著者プロフィール

1937年新潟県生まれ。國學院大學大学院博士課程修了。博士(歴史学)。
東京都教育庁文化課、文化庁文化財調査官、國學院大學文学部助教授・教授を経て、
現在、國學院大學名誉教授、新潟県立歴史博物館名誉館長。縄文文化の総合的研究により浜田青陵賞を受賞。
主な著書に『縄文土器の研究』(小学館・学生社)、『縄文人の世界』(朝日選書)、
『縄文人の文化力』(新書館)、『縄文の思考』(ちくま新書)、『縄文人追跡』(ちくま文庫)、
編著に『縄文土器大観』(小学館)、『縄文ランドスケープ』(アム・プロモーション)、
『考古学ハンドブック』(新書館)、『総覧縄文土器』(アム・プロモーション)、『世界遺産縄文遺跡』(同成社)、
共著に『世界史の中の縄文』(新書館)ほか多数。

「2012年 『縄文土器を読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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