日本4.0 国家戦略の新しいリアル (文春新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 岸田首相の欧米歴訪「敵基地攻撃能力」など防衛力強化のポジションを説明の記事を読みシリーズ3作目を再読◆「同盟による抑止」が通用しない相手から国を守るための「日本4.0」先制攻撃能力の構築◆同盟だけに頼りすぎた「戦後システム」を更新し、自ら戦える国に進化する!と書かれた通り。慧眼の朝鮮半島問題がキーで、中共の意に反し、日本は防衛費を増額する事態に至る。バラマキ外交に軍事的要素が入り、国内世論も容認の方向。中共の戦略的失策が大きいか?少子問題は中国を含めた先進国共通の問題では…。とにかく興味深い(2018年)

  • 日本の抱える課題の抽出力に脱帽。直面する危機をみな知りながら頰被りしている現状への厳しいので指摘にも同感。リアリズムを軽視し、言葉遊びに終始していることへの危機感が示されている。

  • 本書全体を通して、中国に対する軽視が感じられ、大戦略としてその認識でいいのか大きな疑問はぬぐえなかった。「日本4.0」と言いながら、その内容は対北朝鮮問題の認識だけで、本書後半は直接的には関係以内論文の寄せ集め(それぞれはおもしろかったが)。もう少し構成上の不空はできなかったのか。

    18世紀以前の戦争が過去にはスタンダードという話はおもしろかった。
    ローマ軍の包囲戦(及び現代における貿易封鎖)のメッセージは、ナポレオン式な戦術的即効性を狙うのではなく、戦略的に忍耐強くあれ、ということ。

    地経学の項目での、経済(貿易)の比重が高まった場合の予測も、「技術の時代」を考える上で参考になる。国家の定義も参考になった。

    期待外れなところはあったが、期待しなかったおもしろさも一応はあったし、短い時間で読めたので、まあよかったかな。

  • 戦略論の革命児ルトワックによる日本への戦略論である。「同盟メンテナンス」から「自前の国家安全保障」への転換を目指すべきだとする。特に、日本の少子化対策への提言は秀逸である。世界各国の諸事情を分析した上で、日本の進むべき方向性が提示される。イスラエル・フィンランドの作戦、自衛隊の変質の必要性、シリコンバレーからオースティンへの移行等、これらに共通するワードは「ゲリラ戦法」といったところだろうか。

  • まったく積読にしているつもりはなかったが、Kindleの構造上、すっかり忘れて埋もれていたので、あわてて読み続けた。1年かかって読了。面白かったがこういった時事もの(話題もの)は、興味が湧いたら一気に読むべき。面白かったが購入当初の知識欲がさめた後では、知的興奮が半減。

    星4つ。

    下記にハイライトした個所をコピペ:

    38
    黄色のハイライト | 位置: 75
    日本人は、つねにひとつの完全な戦略的システムを作り上げてきた。しかも、そのシステムが危機に直面するたびに、新たに包括的なシステムに更新してきたのである。これは世界でもあまり例を見ないことだ。


    黄色のハイライト | 位置: 95
    家康が選んだのは、外交によって敵対的な他者を減らし、消滅させる同盟の戦略だ。適切な同盟相手を選び、戦術レベルの敗北に耐え続けることができれば、百回戦闘に負けても、戦争に勝利することができる。


    黄色のハイライト | 位置: 98
    これを「江戸システム」もしくは「日本1・0」と呼びたい。このシステムは三百年近くも有効だったの


    黄色のハイライト | 位置: 124
    「戦後システム」は軍事的敗北を経済的勝利に変えることができたシステムである。このシステムで最も重要だった省庁は「通産省」だった。


    黄色のハイライト | 位置: 126
    このシステムにおいては、外交を担当する外務省の実態は「日米関係省」だったといえる。彼らにとって最も重要だったのがアメリカであり、それ以外は無視できる存在だったからだ。


    黄色のハイライト | 位置: 145
    私はそれを江戸、明治、戦後に続く「日本4・0」と名付けよう。私の考えでは、「日本4・0」が戦わなければならないフィールドは、北朝鮮の脅威、米中対立を軸とした「地経学」(ジオエコノミックス)的紛争、そして少子社会である。


    黄色のハイライト | 位置: 164
    抑止のルールの外側に出ようとする国家に対して必要なのは、「抑止」ではなく防衛としての「先制攻撃」なので


    黄色のハイライト | 位置: 285
    中国は、北朝鮮が単に弱くて自分たちに依存する状態にあることを望んでいる。そのためには核武装は邪魔なのだ。


    黄色のハイライト | 位置: 322
    この「北朝鮮のベトナム化」は日本にとっても最善の選択肢と


    黄色のハイライト | 位置: 324
    では、その次にマシな選択肢とは何か。意外に思われるかもしれないが、現状維持だ。


    黄色のハイライト | 位置: 328
    北朝鮮の核兵器は、日本の安全保障にとって最大の脅威である。しかし、戦略面では、日本にとってポジティブな要素でもあるのだ。なぜならそれは北朝鮮の中国からの戦略的な独立を保障し、中国による朝鮮半島の支配を防いでいるからである。


    黄色のハイライト | 位置: 334
    日本にとって、核武装したままの北朝鮮は最悪だ。しかし中国に支配された朝鮮半島は、より最悪の安全保障上の脅威となってしまう。


    黄色のハイライト | 位置: 431
    しかし米軍が朝鮮半島から撤退することはありえない。非核化が実現し、北朝鮮との関係が一〇〇%改善したとしても、米軍は撤退しない。そもそも北朝鮮もそれを望んでいない。中国の脅威があるからだ。核武装抜きで北朝鮮が中国に対抗するには、米軍の朝鮮半島におけるプレゼンスが不可欠なのである。  朝鮮半島を中国の支配下に置かせない。それが米軍の北東アジアでのポジションなの


    黄色のハイライト | 位置: 438
    一九九三年、南アフリカのデクラーク大統領は「六個の原子爆弾すべてを自主的に廃棄した」と表明した。彼らは核弾頭も作り、運搬手段としてのミラージュ戦闘機も持っていた。つまり、核武装を完成させていたのだ。しかし、最後は核関連物資を海外に引き渡した。


    黄色のハイライト | 位置: 440
    二〇〇三年にはリビアも核兵器の廃棄を宣言している。核弾頭までは完成させていなかったものの、かなりのレベルまで準備していたが、イラク戦争でのイラクの敗北を見て、カダフィ大佐が危機感を抱いたのだ。核関連物資はアメリカや一部、ロシアに運び出されて処分された。


    黄色のハイライト | 位置: 458
    アメリカに拉致問題の解決を頼んでも、十分な結果を得られる可能性は低いだろう。日本自身が提供する資金を、交渉への武器として使うことが大事なのだ。ここでもアメリカ頼みの「同盟メンテナンス」よりも、自力による「 作戦実行 メンタリティ」がはるかに効力を持つだろう。

    メモアメリカ人であるルトワックの希望か。

    黄色のハイライト | 位置: 463
    海外からの支援の窓口となり、それを国内に配分することによって、金正恩はサバイバルすることができる。「核兵器の王」ではなく、「援助の王」として君臨するのだ。  日本は「核兵器の王」と対峙することは難しくとも、「援助の王」とは有利な立場で交渉できるはずで

    メモ北の将軍は、国外の問題だけではなく、国内の問題も抱えてサバイバルしなければならない。

    黄色のハイライト | 位置: 488
    私の考えでは、いま、自衛隊は新たな能力を獲得すべき時期にきている。それは先制攻撃能力だ。


    黄色のハイライト | 位置: 496
    一九九二年、サラエボがセルビア人勢力に包囲され、およそ一万人の死者を出したが、どこも介入しなかったし、何も動かなかった。このように、「国際世論」という、何の頼りにもならないものをあてにしてはならない。  


    黄色のハイライト | 位置: 616
    戦争で最も安全な状態は攻撃を行っているときだ。こちらがイニシアティブを握って行動し続ける限り、相手は反応するしか選択肢がなくなるからである。その意味で、「攻撃は最大の防御」なのである。  よって、戦争で守る原則は以下のようになる。   ① 常にアクションを仕掛けること   ② 即興性を恐れないこと   ③ リスクをとること  である。


    黄色のハイライト | 位置: 845
    人間による情報収集、つまりヒューミント(HUMINT)は本当に不可欠なものだ。実のところ、日本に最も欠けているのはこの点だ。他の点では日本もそれなりの情報収集能力を持っているが、ヒューミントは欠けている。


    黄色のハイライト | 位置: 889
    ・そこでは犠牲者を出すリスクが過剰なまでに回避される。これが「ポスト・ヒロイック・ウォー」である。


    黄色のハイライト | 位置: 919
    フランス革命以前のほとんどの戦争は、国民の熱狂を呼び起こすことはほとんどない、はるかに切迫性の少ない目的のために戦われたのであり、高価なプロの軍隊を温存するために慎重な戦略や戦術が使われていた。


    黄色のハイライト | 位置: 1,149
    つまりローマ兵の身につけていた武具の防御力は非常に高かったのだが、その重さで、兵は撤退する敵を追撃することがほとんどできず、一時的な撤退に対しても追いつくことができなかったほどだ。さらにいえば武具の重さを相殺するために、敵を突き刺すための短剣だけが支給されたのである。ローマ人は、敵の損害を最大化するよりも、味方の犠牲者を最小化することに明らかに努力を傾けていたのである。


    黄色のハイライト | 位置: 1,201
    これが「ポスト・ヒロイック・ウォー」のやり方である。大規模で精緻化されたやり方だ。  同様の作戦を、イスラエルならばどのように実行するか。これには実例がある。一九八一年六月のバビロン作戦だ。このとき、イスラエル政府はイラクが核兵器をもつ危険性があるという情報を入手して、原子力施設を空爆し、原子炉を完全に破壊した。


    黄色のハイライト | 位置: 1,206
    このときイスラエルは、モサド諜報員による調査で、イラクの防空網に引っかからない飛行ルートを割り出すと、F-16 戦闘機八機を飛ばし、原子炉に爆弾を投下した。この爆弾も高度な誘導装置などない自由落下型のものだが、十六発中十四発が命中し、作戦を成功させたのである。これが実際的な戦い方だ。  これに対して、米軍の志向するやり方は、イラクのすべての戦闘機や対空ミサイルや対空砲を破壊したあとに、ようやく原子炉を破壊するようなものである。これによって作戦本体のリスクは軽減されるかもしれないが、規模があまりにも膨張してしまうことで、犠牲者の絶対数はむしろ増える可能性がある。


    青色のハイライト | 位置: 1,286
    ところが、地経学は、フィールドは経済なのだが、国家とその周辺(民間企業も含む)が互いに敵対したり、同盟したりする「戦略の論理」で成り立っている。経済とテクノロジーを舞台にした紛争なのだ。つまり地経学とは、もとになった論文の副題にあるとおり、「貿易の文法」で展開される「紛争の論理」なので


    黄色のハイライト | 位置: 1,340
    この「地経学」という新造語は、「紛争の論理」と貿易の手段の混合、もしくはクラウゼヴィッツの言葉を借りれば「戦争の 論理 と貿易の 文法」というものを説明する上で最適であると私は考えて


    黄色のハイライト | 位置: 1,422
    それゆえに、重商主義の時代には、戦争が経済的な紛争解決の手段としても有効だったのだが、新しい「地経学」の時代では、経済がその紛争の最大の原因であるだけでなく、その紛争に使われる唯一のツールともなる。


    黄色のハイライト | 位置: 1,426
    それらは多かれ少なかれ「輸入の規制」という建前をとるだろうし、補助金による輸出の助成、先端のテクノロジーの開発計画への財政支援、特定の教育への支援、競争上有利となるインフラの提供などの様々な形をとるだろ


    黄色のハイライト | 位置: 1,630
    中国はAI開発戦争の主力兵器であるハードウェアの開発の核心部分を、中国の人民解放軍の研究機関が所有するファーウェイ社に任せている。そのファーウェイ社は国産のCPUを使っているのだが、その技術を提供しているのは、ソフトバンク傘下のイギリス企業なのである。


    青色のハイライト | 位置: 1,653
    すると、プーチンの外交アドバイザーの一人から「モスクワは贈り物を信じない」との答えが返ってきた。ソ連時代によく使われたボリシェビキ用語で言い換えれば「モスクワは涙を信じない」。つまり、「その手に乗るものか」というわけ


    青色のハイライト | 位置: 1,681
    その一つが「反イラン同盟の形成」である。イスラエル、サウジアラビア、アラブ首長国連邦などと、イランに支援されたシリアやイエメンと戦うというもの


    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,683
     世界中で見られることだが、平和は敗者が負けを認めないと訪れない。パレスチナ人たちは決して負けを認めていない。なぜなら、周りのアラブ諸国が「支援するから決して負けを認めるな、次の戦争では勝つぞ」と煽ってきたからだ。パレスチナが何かを譲歩しようとしても、周辺の国々──いまならイラン──が「決して譲歩するな」と圧力をかけてきたのである。  しかし、当事者であるパレスチナ人たちはもはや紛争に積極的では


    青色のハイライト | 位置: 1,691
    しかも二百万人いるともされるガザ地区でも、徹底抗戦を唱えているのはごく一部に過ぎない。それ以外の人々は純粋にハマスの犠牲者なので


    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,694
    トランプ政権のもう一つの中東政策の柱は、パレスチナ人たちに、これまでのさまざまな国々が受け入れてきた「負け」を認めさせることにある。エルサレムのアメリカ大使館はその象徴なの


    青色のハイライト | 位置: 1,732
    第二が、戦略の理想を実現した存在として、イスラエルやフィンランドを挙げていることだ。とりわけ印象的なのは、軍事演習の現場におけるフィンランド兵の混乱ぶりを紹介している点などだ。クラウゼヴィッツの言葉を引用するまでもなく、実際の戦争というものは、「戦争状態」という言葉があることからも察せられるように、とにかく大混乱が待ち受けている。ルトワックは軍事演習においてもまさにこの大混乱をつくりだすべきであり、このような混乱を切り抜ける現場のイノベーションを育てることに本来の軍事演習の意義があるとして


    オレンジ色のハイライト | 位置: 1,745
    「戦士の文化」とは、ルトワックによれば「リスクを恐れない文化」ということであり、米軍のように、何十回もの上空からの偵察や訓練、そしていざ実行しようとしても直前で作戦そのものを中止してしまうような非効率とは、正反対のものだといっていい。「リスクや犠牲を恐れない」ということは、すなわち作戦や戦略の効率化にもつながるものであると認識しているの

  • 江戸を1.0、明治を2.0、戦後を3.0としたとき、北朝鮮というリスキーな国が近くにある現代は、4.0の日本が求められている。何をするべきなのかを戦略家目線から書かれた本。

    ざっくりとまとめると、第二次世界大戦後、核が損益分岐点を超えたものになってしまった以上、新たに核を持つのは頭のイカれた国としてしかみなされなくなってしまった。
    さらには先進国では少子化もあり、人命が殊更重いものと見なされるになって軍事行動の責任を負うリスクが大きくなっている。
    ゆえに、軍事的な行動ではなく、経済的な面での行動で他国に圧をかけていく形になっているという流れになっていく。
    さらに、冷戦直後は、軍事がまだ重要なものであったが、そこから政治、経済へとプライオリティの高いものが変遷しており、さらには知的財産の確保も重要になっている。

    ルドワック氏への数度のインタビューのまとめのようなもののようなので、後半は米国ロシア中国の最近の政治的な行動の理由などが語られていて日本どこ?みたいにはなっていたが、それはそれでなかなかおもしろい話だった。

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著者プロフィール

ワシントンにある大手シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の上級アドバイザー。戦略家であり、歴史家、経済学者、国防アドバイザーとしての顔も持つ。国防省の官僚や軍のアドバイザー、そしてホワイトハウスの国家安全保障会議のメンバーを務めた経歴もあり。米国だけでなく、日本を含む世界各国の政府や高級士官学校でレクチャーやブリーフィングを行う。1942年、ルーマニアのトランシルヴァニア地方のアラド生まれ。イタリアやイギリス(英軍)で教育を受け、ロンドン大学(LSE)で経済学で学位を取った後、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学で1975年に博士号を取得。同年国防省長官府に任用される。専門は軍事史、軍事戦略研究、安全保障論。著書は約20ヵ国語に翻訳されている。邦訳には『クーデター入門』(徳間書店)、『ペンタゴン』(光文社)、『アメリカンドリームの終焉』(飛鳥新社)、『ターボ資本主義』(TBSブリタニカ)、『エドワード・ルトワックの戦略論』(毎日新聞社)、『自滅する中国』(芙蓉書房出版)、『中国4.0』(文春新書)、『戦争にチャンスを与えよ』(文春新書)がある。

「2018年 『ルトワックの”クーデター入門"』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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