- Amazon.co.jp ・電子書籍 (247ページ)
感想・レビュー・書評
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証券金融分野の門外漢がまずつまづくのが、そもそも「上場」「非上場」ってなんだっけ、という話である。
ぶっちゃけ、世の中のベタな「企業乗っ取り」モノはこの基本的なルールをあいまいにしか理解しておらず、突然TOB!とか、言ってみれば「なに・・・二死満塁でコーナーキック、だと・・・?」みたいな、いやなんの競技だよ、というドッチラケ展開になっているものも多い。その点、著者の牛島氏(というか、先生というか)は、生粋の企業法務弁護士。実務の記述の信頼感が半端ない。
この小説で「正義」とされている主張は、見方によっては昨今はやりの「物言う株主」「アクティビズム」のそれ(の非上場版)ではあるが、逆に言えば、正論で立ち向かう少数株主をヤクザ呼ばわりする一部企業の経営者(ときにはオーナー)の傲慢さに対する批判本とも捉えられるだろう。
ストーリーテリング的には、エンタメサービス的どんでん返しがあるわけでもなく、後半はむしろ事実上著者の主張を登場人物がしゃべっている印象もある。また、60代で功成り名を遂げた金持ちオッサンのウンチク、さらにはそれにあっさり惹きつけられてしまう異性描写に鼻白む向きもあるかもしれない。
が、ここも(私は存じ上げませんが)富裕層をめぐるある種のリアリティはやはり感じるのであった。
そして、ここに書かれている(実現していない不動産価値を解き放て、という)「日本解凍論」は、確かに今日の重大な課題となっているのである。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
新聞の広告で田原総一朗が絶賛していたので読んでみた。この小説は読み込ませる力があり、ストーリーを追ってグイグイ読み進むことができた。少数株主が置かれている現状、そして上場していない会社が株式会社のルールを私物化している点について分かり易く書かれている。