AIにできること、できないこと---ビジネス社会を生きていくための4つの力 [Kindle]

  • 日本評論社
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感想・レビュー・書評

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  • AIにできること、できないことを平易に解説した書。AIの弱点が(技術に深入りしない形で)整理されていて、とても分かりやすかった。

    知っていることも多かったが、それでも読む価値の高い本と思った(ただ、AIと共存するため未来のビジネスマンに求められるスキルを纏めた5章は、ビジネス啓蒙書っぽくて、ちょっと余計だったかな)。

    AIは、果たして人間のような知性を獲得できるのか。著者は、知性を「自分で考えて環境に対応し、より良い成果を達成する能力」と定義した上で、今あるAIは、「知的な作業に等しい結果を得られる仕組みを、知的ではない方法を使って作る」弱いAIに過ぎず、知性は持たないという。

    AIが知性を持つために必要な要素を著者は、「動機」「目標設定」「思考集中」「発見」の4つに分解(動機:課題を定める力、目標設計:何が正解かを定める力、思考集中:解く上で検討すべき要素を絞る力、発見:正解を見つける力)。

    このうち、「動機」と「目標設定」は今のAIにはできず、人が設定している。「思考集中」に関しても、AIは「考えるべきこと」を予め絞ることはできず、網羅的に調べるのみ。なので、AI設計者が「AIの適用範囲をぐっと狭くして選択肢を限定することで、知的な作業を効率的に実現させている」のが現状。そして、ごく限られた条件の下で「発見」力でAIが人間を超えることができているは、「AIが持つ「人間より圧倒的に早く試行錯誤できる」強みを生かしているから。質を量でカバーしているだけなので、「コンピュータ上の仮想的な世界で高速にシミュレーションできる課題でなければ、強化学習で高い性能を発揮することは難しい」。

    AIは理解しているのか。物事を理解するということは、「2つ以上の異なる既知の情報に新しいつながりを発見する」ことであり、そうするとAIも一応「理解できていると考えて良さそう」だという。ただし、「人間の考える理解」と「AIの考える理解」とには大きな隔たりがあ」るという。

    AIの未来については、「AIが「勝手に」暴走して人間を脅かすという未来は、遠い話と言わざるを得ないでしょう。それより、人間が悪意を持ってAIを設計する可能性の方がはるかに脅威です。つまり、AIを作る側の倫理観が重要となってくるわけです」、「ブレークスルーはそうそう起きないという過去の歴史を鑑みれば、知性の実現に必要な要素が確立されることは、近い将来ではありえないでしょう」と書いている。

    AIは万能でも何でもなくて、上手く使わないと単なるお荷物になりかねない(そのため、ビジネスに合ったAIをコーディネートするデータサイエンティストが求められている)。AIの精度を上げるためには、大量の教師データや強力なマシンパワーが必要とも聞く。システム構築やメンテナンス、人手によるチェックやサポートのコストを考えると、AIの活用はそのうち頭打ちになるのかな?

    そういえば、2045年にはAIが人間を超えるという予想(シンギュラリティ仮説だっけ)というのもあったな。現実には、もっとスローペースでしか変わっていかないんだろうな。

    続篇も読んでみたい。

  • 知性とは
    「自分で考えて環境に対応し、より良い成果を達成する能力」
    と書かれています。
    本書はAIが知性を獲得するかと言う点で書かれています。
    「人が何かを理解する」というのは、「2つ以上の異なる既知の情報に新しいつながりを発見する」ことだと言い換えられる
    と書かれてています。
    知識と知識の間にある課題に気づいて現実とのギャップを埋める作業ができないと知性があるとは言えないと思います。

    知性があると言えるには
    「動機:解決すべき課題を定める力」
    「目標設計:何が正解かを定める力」
    「思考集中:考えるべきことを捉える力」
    「発見:正解へとつながる要素を見つける力」
    の4つの力があるかと言うことが書かれています。

    今のAIでは
    ・動機:解決すべき課題を定める力がなく、人が決めなければならない
    ・目標設計:何が正解かを定める力がなく、人が決めなければならない
    ・思考集中:考えるべきことを捉える力は弱く、人の知見に頼る面も多い
    ・発見:正解へとつながる要素を見つける力は、質より量でカバーされている
    ・知性の4要素を組み合わせる力は、ほとんど手つかずである
    と書かれておりまだまだ人間の手によるところが大きいと思います。

    ただ人がAIに仕事を奪われないかは別問題で
    AIに長けた人が「動機」「目標設計」「思考集中」をカバーしてるので仕事の内容によっては置き換わっていくのかなと思います。
    もちろん今ホワイトカラーって言われてるところも例外でなくて
    弁護士や税理士と言った士業も危ういと思います。
    判例の吐き出ししかしてない弁護士は淘汰されていくんやろなあと思います。

  • タイトル通り、今のAIは何が出来て何が出来ないのかを平易な言葉で解説した本。ただ、非常に説明が上手く、それなりにAIに関する知識がある人が読んでも得るものが大きい本だと思いました☆とりあえず、AIに詳しくない人に対してAIの事を説明する際は、この本を読んでから説明すると良いかも??

    この本に記載されているように、基本的に今のAIは、「正解へとつながる要素を見つける力」しか持っていません。従って、いかにして「課題設定」「目標設計」「思考集中」の3点を的確にAIに教えてあげるかが肝になってきます。「大量のデータさえあればあとはAIが良しなにしてくれる」と勘違いせず、ポイントを押さえながらAIを実際にビジネスに活用していきたいと思います☆

  • ChatGPTをよく使うようになり、興味が湧いて読み始めた。
    特に「課題の設定」は人間がする必要がある。

  • AIがSFのように万能になるかどうか、今のAIの現状と人間に頼ってる部分がよくわかった。入門によさそう。

  • 新井紀子先生のAI×子ども本2冊では、
    「結局、AIにできないことは何なの?」が
    良く判らなかったので本書を手に取った。

    手に取って正解だった。
    判りやすい!!

    著者がAIの産業応用を続けてきた方だからなのかと思う。
    学者先生とは違って、細部にこだわりすぎず、ざっくりと、何ができて何ができないかを、紐解いてくださる。

    読んでいるうちに、仕事でAIを活用してみたいという気にさえなってきた。(もともと子育ての参考にしようと思っていたのですが)

    但し、じっくり腰を据えてメモを取りながら読み解く必要がありました。
    メモを取りたくなるくらい、面白かったということでもあります。

  • AIについて、広く浅く理解するには良い本。

  • 今のAIに知性はなく、人が頼んだことを何でも理解してやってくれるわけではない。それぞれの課題に特化され、AI設計により実現させている。らしい。
    AIは人間の補助、協力をする必要があり、全ての仕事をAIが代わりに行ってくれるには、まだまだ時間がかかりそうだと理解させてくれる本。

  • 現在のAI技術では何ができて何ができないのかをわかりやすく解説した本。

    AI技術の本質や現状を知りたいときに、最初に読むべき本だと思います。AI関連の本の中では、一番わかりやすいです。

  • 知性の定義と照らし合わせて、現在の「A I」に何ができて何ができないかを検証する。

    動機:解決すべき課題を定める力
    目標設定:何が正解かを定める力
    思考集中:考えるべきことを捉える力
    発見:正解へとつながる力を見つける力

    そうすると、最近取り沙汰された「AIに仕事が奪われるリスト」がとてもナイーブなものであることが明らかになる。

    これを踏まえて、自分が学ぶべきなのは
    ・原理を理解した上で、いかにAIを、活用できるフレームを考えるか
    ・AIに苦手な分野(動機、目標設定)を伸ばしていくこと

    そのためには
    ・クリティカルシンキング、ロジカルシンキング
    ・多くの立場や価値判断を理解して、目標からブレることなく混ぜ合わせる
    ・「なぜ」を繰り返して物事の関係性を捉える

    データサイエンティストはジェネラリストの一種である

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著者プロフィール

藤本 浩司 (ふじもと こうじ) テンソル・コンサルティング株式会社代表取締役会長

「2023年 『AI人材にいま一番必要なこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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