- Amazon.co.jp ・電子書籍 (437ページ)
感想・レビュー・書評
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進化の謎を実験で解き明かそうとする人たちの話。現在の生物の姿はどこまでが必然的で、どこからが偶然の産物なのか。答えは出ないけれども、分かってきたことは多くある。
生命の進化を解き明かすのが難しいのは、歴史にifは無いからである。もし白亜紀に隕石が落ちてこなかったら現在の生態はどうなっていたか。その答えは誰にも分からない。進化に関して仮説と結果は数あれど、直接的な検証は無い。それが進化を解き明かす上で大きな課題となっていた。
だが20世紀の後半から、研究者たちは進化が予想以上の速さで起こることに気がついた。鳥や魚、トカゲといった大きさの生物でも、研究者人生の中で観察できるほどの速度で進化は起きるのだ。微生物レベルになると、再現性があるかまで確認することができる。さらに近年は遺伝子解析技術が発達したことで、具体的にどの遺伝子が変化したかまで突き止められるようになった。こうして現在では、進化についての研究は生物や化石の観察だけにとどまらず、実験によって検証することもできるようになったのである。
本書を読むと、進化は偶然か必然かと、はっきりと分けられるものではないと分かる。例えば同じ形質を繰り返し獲得したからといって、それが同じ遺伝子によって発現したとは限らない。そうすると、その段階では必然と言えても、その後もずっと同じであるとは言えず、偶然の要素が入り込む。しかもこれは環境がコントロールされた実験においてであって、不確定要素の多い自然界ではより偶然に左右される。一方で物理法則から最適解はある程度決まってくるのだから、必然の要素が無いとも言えない。進化ではバタフライ効果と世界線の収束の両方が起きている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ホーキングとか、エドワードウィルソンとか、デネットとか、彼らの仮説がその後の検証でどうだったかは棚に上げるとしてやっぱりワクワクするし面白いわけだが、著者はそう言う面白さはないと言える。進化の実証研究ってこんなに地味で大変なのだなあと言う感想。しかしそれだけでエピソードが全部面白い。