世界史とつなげて学ぶ 中国全史 [Kindle]

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  • 東洋経済新報社
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感想・レビュー・書評

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  • 「多元的な社会を一つにまとめようとする試みは、中国史のみならず、程度の差はありますが、アジア史・東洋史にも少なからずみられます。そのプロセスで生まれる軋轢をどう処理するかが、それぞれの歴史の要諦でした。

    その手段として用いられたのが、宗教でした。だいたい世界三大宗教と呼ばれるイスラーム、キリスト教、仏教は、いずれもアジア発祥です。それはおそらく、多元性をまとめるための普遍性やイデオロギー、おるいは秩序体系を提供することが、アジアの全史を貫く課題だったからでしょう。」p.252

  • 中国史の流れを、気候変動や通貨や経済など他地域との関わりの中でわかりやすく解説している。細かな出来事や年号、人物の描写を少なめにしているのも国全体の通史で理解するにはよかった。モンゴル帝国の影響はやはり大きかったのだと実感。
    今回、オーディブルで視聴したが図表の参照ポイントが多く難儀する場面があった。一応PDFは用意されているが、オーディブルはながら聴きしていることが多く、急に図表を引用されてもすぐに見られなかったり、またスマホだと小さくて見にくいことが結構多くあった。また、中国史ということで漢字表記を見ながらの方がスムーズに理解できるだろうなというポイントもいくつかあったので、ぜひ紙の書籍であらためて読み返してみたい。
    耳で聞く読書も本当に便利だが、今更ながら紙の書籍ならではの良さもあるなと実感した。

  • シルクロードの東端の中国は、オリエントと比べれば後進国だった。後進国たる中国は、シルクくらいしか輸出品がなかったと聞くと、シルクロードの響きもだいぶ変わってきこえてくる。日本を相対化してみるのに、東アジア史(中国史)を学ぶ必要があると思うが、その中国すら相対的に見る視点は必要だろう。華夷秩序といいながら、北方からの相次ぐ侵略の歴史を鑑みれば、実際と建前は異なるもの。歴史は相互作用と改めて思う。
    筆者は14世紀を最大の分水嶺として中国史を捉える。14世紀、明の時代に、中国社会において上と下が分離した故だ。以降、中国の政治史は、コップの中の嵐に過ぎないと言い切る。今の中国を見て感じる、形式主義的な建前重視するところ(上)と、極めて合理的で現実主義的なところ(下)がある中国の「分離」に関する違和感は、この時代に端を発するということか。
    極めて多元的で、政治と経済社会が分離している中国は、近代を「一つの国」として乗り越えるために、瓜分されないように、「中華民族」「中国」を発明する。しかし、これまでの長い歴史の実践が物語るように、建前と実態の乖離を埋めるため、現代中国は、政治と経済システムの分離、「周辺地域」での強権政治といった矛盾を抱え込まずにはいられない。農村から都市を包囲した毛沢東は、階級闘争という絶好のお題がある共産主義というイデオロギーを用いて、緊急事態の戦時下において中国を下層から一つに纏め上げるのに成功した。しかし、魔法の効き目はいつまでか。分離現象は止まらない。それを止めるために、繋ぎ止めるために、現代中国は強権にならざるを得ない。
    今ある一つの中国が当たり前の現象、事実と思っているだけでは見えてこない視点である。中国と国民国家の相性は悪い。

  • 目からウロコのこと多数。
    ユーラシア大陸は、民族が西へ東へ行ったり来たり。
    欧州も中国も、それぞれ西と東の端だったと考えるとわかりやすい。

  • あまり為政者に焦点を当てず、気候・地形・経済のような全世界的な動きと絡めながら中国の歴史を理解できる本。西洋の歴史の流れと非同期にリンクすることもあれば、全く異なる展開になるケースもあり勉強になります。

  • 歴史は暗記ではなく「いかに考えるか」
    ☆歴史事象には『要因』がある
    ①気候 温暖化・寒冷化
    ②農作物の生産高
    ③人口
    ④エネルギー
    ⑤技術
    ⑥軍事
    ⑦⑧⑨⑩

  • 今まで読んだ歴史書とは違う切り口で視点が広がりました。西洋との比較は確かにそうかも。と思わせるものでした。中国史だけでなく西洋史も学びたいと思わせる一冊でした

  • 地球の寒冷期に中国も欧州も乱世となり、存亡掛けた戦いに全てが投じられるため一般人の生活もテクノロジーの進化も停滞するという。つまり寒冷期に文明が後退するという主張だ。一方で温暖期は食料が満たされ、政権も比較的安定し、生活の安定がテクノロジーの発展に寄与しやすいという。

    ーーでは現代はどう見ればよいのか?
    温暖期であることに安心して良いのだろうか?地球規模の観点では実は現代は寒冷期の只中という話を聞いたことがある。それを人類の生み出す温室効果ガスによって温暖化に無理やり傾かせているという主張だ。

    でもそもそも寒冷期が戦乱を引き起こしてしまうのは、食料の枯渇による内政の混乱が原因だ。この状況は長引くコロナ・パンデミックとロシアのウクライナ侵攻によってズルズルと乱世に転がり落ちていっているように見える。

    本書は、中国や世界史だけでなく、近未来を読み解くための潮流を理解するためにも役立つ。

  • 古代から現代までの中国の歴史について、大まかな流れがわかりやすく書かれた本。

    現代中国を正しく理解するには、中国の歴史を知ることが大事。中国の歴史を通して、現代中国の中心軸が明確になります。現代中国を知るための最初の一冊としてオススメです。

  • 「可以嗎?(いい?)」
    マカオ初訪問の時、覚えたての中国語で尋ねた。
    財布にパタカ(現地通貨)は無く、香港ドルだけ。
    でも、雑貨屋の主人はタバコを売ってくれた。
    カジノのチップもOKらしい。

    中国って、懐が広い。
    そんな歴史を知れる一冊です。

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著者プロフィール

1965年、京都市に生まれる。現在、京都府立大学文学部教授。著書、『近代中国と海関』(名古屋大学出版会、1999年、大平正芳記念賞)、『属国と自主のあいだ』(名古屋大学出版会、2004年、サントリー学芸賞)、『中国経済史』(編著、名古屋大学出版会、2013年)、『出使日記の時代』(共著、名古屋大学出版会、2014年)、『宗主権の世界史』(編著、名古屋大学出版会、2014年)、『中国の誕生』(名古屋大学出版会、2017年、アジア・太平洋賞特別賞、樫山純三賞)ほか

「2021年 『交隣と東アジア 近世から近代へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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