人口減少社会のデザイン [Kindle]

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  • 東洋経済新報社
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感想・レビュー・書評

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  • 人口減少時代における持続可能社会の在り方を追求し続けてきた著者の現在の到達点が俯瞰できる良書。“少子高齢は過去の産物で驚くに当たらず、むしろ若者の地方への関心こそチャンス“”地方都市の空洞化は人口減少自体ではなく社会構想が原因“との現状認識に同意。人口減少社会は、“集団で一本の道を登る時代から解放され、創造性を発揮できる社会”という希望ある認識に共感。

  • 久しぶりの最高評価(五つ星)。広井先生の著作は『定常化社会−新しい「豊かさ」の構想』(2001)に続いて2冊めだが、本書(2019)の方が、断然読み応えがあった。

    人口減少社会の意味から、コミュニティー、ポスト資本主義、死生観、地球倫理と、総合的に今を把握し、今後のデザインを展望できた。特に響いたのが次の2箇所。
    ①「人類史における拡大・成長と定常化のサイクル(p160)」
    ②「(社会保障政策における日本の対応)困難な意思決定を先送りして“その場にいない”将来世代に負担を強いるという点で、もっとも無責任な対応(p196)」

    本書発行後に発足した岸田内閣が、「新しい資本主義」、「成長と分配」を連呼してる。資本主義の見直し、分配の優先順位を上げたのは良いが、まだ「成長」に拘泥している。Japan as No1.の昭和から「失われた30年」を経て、時代は令和。新しい社会を始めなければならない。

  • 著者については、『AIの活用により、持続可能な日本の未来に向けた政策を提言』で知り、こちらの論調が大変興味深いものだったので、本書を手にとった。本書は、少子化や高齢化の現状について世界の状況も踏まえつつ、分析している。加えてコミュニティ、社会保障、医療、死生観、福祉など幅広い分野で提言を行っています。これらは個別に語られるものではなく、複合的に語られるべきものであることを本書を通じて感じました。
    個人的には特にポスト情報化、ポスト資本主義の過程で単なる情報集積及びアルゴリズムから生命(生活)に科学的探究がシフトしていくという議論が大いに賛同できる部分でした。こうしたシフトによって世界的に社会科学、文学への重要性がますます帯びてくることは想像に難くないと思います。
    その一方、今日の日本の大学教育では社会科学野の軽視が大きな問題になっていますが、また何年かしたら欧州の潮流を見習ってやれ見直しだ!改革だ!といった論調がでてきそうな気がします。いいかげんちゃんと日本なりの政治的、社会的理念を持って米国、または欧州の猿真似はやめましょうと思うのですが・・・。
    いづれにせよ、重要な箇所が多すぎて3回読んでも読み足りなかったです。

  • ふむ

  • 素晴らしい学びがありました。
    特に日本や諸国の人口動態、その洞察については必読の内容と感じました。社会保障の規模感や社会の3分類についてもとても学びがあり、日本は社会保障を賄えるような負担を国民がしておらず、負担を増やすことを是としている。方法として消費税増税、相続税増税などを挙げている。
    資本主義の問題点、成長モデル頼ることの限界、また、成長により社会保障の不足を賄うという考えが日本で信じられるのかについてなどについてなども。
    人口減少、それを肯定的に捉えること、さらに定常状態における回答として地域での共同体構想などとても興味深い流れでしたが、成長なし、負担増でも日本がやっていけるというのは、正直難しいのでは無いかと感じました。
    本を読んでいて、地域共同体とエネルギー自給などの施策はとても相性が良いように思えました。
    ただ、取り残され、競争力を失い維持できるほど質素な社会では、日本は無いように思えますが。

  • 内容薄めで根拠となる統計も怪しい

  • コミュニティのあり方。

  • "農村型コミュニティと都市型コミュニティの対比を行い、日本におけるコミュニティが前者に傾きがちであり、集団が内側に向かって閉じるという傾向が強くなりやすい"

  • 日本では2024年に3人に1人が65歳以上となり、65歳以上の1/6が認知症になることからこの先10年で日本の雇用は短期的に介護産業に多くを回さないと立ち行かなくなるんじゃないかな?他の産業は機能不全に陥らないかな?10年以上先も持続可能なVisionってあるの?まだその頃自分は現役じゃない!?という漠然とした不安から今更ながらに本書を手に取った。

    結果としては、読んで良かった!
    「ポスト資本主義」の青写真を眺めることができた。この不安のガス抜き効果の価値は大きい。悶々としたり絶望に打ちひしがれるなどの時間とエネルギーの浪費を避けて、Visionへの適合に向けた計画と行動を起こせるからだ。選挙ではテーマ毎に本書に近い公約掲げる候補者に入れようと思う。おそらく本書が広井さんの集大成的な位置づけなのだろうけど、これまでの本も読もうと思った。

    それでも気になるのは、これだけ明確なVisionを示す広井さんが政府や官庁、地方自治体、国際協力機構(JICA)などで活躍されているにもかかわらず、その成果が見える兆しもないということ。そして社会保障重視の北欧型国家も持続可能性重視のドイツなどの西欧都市も税収を基盤としているが、それらが環境保護や人権を軽視して経済的合理性に邁進する中国企業に勝てるのか?という問題だ。彼らは遅かれ早かれ欧州にも深く入り込む。そうなっても現在の持続可能な社会Visionは維持されるのかどうか。対抗できるのかどうか。

  • 少子化や高齢化の現状について、グローバルへの考察を含めてつらつらと書いてある教養本。
    幅広く、かつ各論での分析は示唆に富むものの、実際に手を付けられそうな提言ではなく感じた。具体的な実行性は乏しい。
    経済的に正しいとは思えない提示策や、反証がないまま説得にかかるような内容もあり、鵜呑みにはできない考察も多かった。

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著者プロフィール

広井 良典(ひろい・よしのり):1961年生まれ。京都大学人と社会の未来研究院教授。専攻は公共政策、科学哲学。環境・福祉・経済が調和した「定常型社会=持続可能な福祉社会」を一貫して提唱。社会保障、医療、環境、都市・地域等に関する政策研究から、ケア、死生観、時間、コミュニティ等の主題をめぐる哲学的考察まで、幅広い活動を行っている。著書『コミュニティを問いなおす』(ちくま新書、2009年)で大佛次郎論壇賞受賞。『日本の社会保障』(岩波新書、1999年)でエコノミスト賞、『人口減少社会のデザイン』(東洋経済新報社、2019年)で不動産協会賞受賞。他に『ケアを問いなおす』(ちくま新書)、『ポスト資本主義』(岩波新書)、『科学と資本主義の未来』(東洋経済新報社)など著書多数。


「2024年 『商店街の復権』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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