僕の人生には事件が起きない [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • ハライチの "じゃない方" 芸人、人に語るほどの波乱万丈エピソードを持たず平々凡々な人生を過ごしている、岩井勇気の雑誌連載エッセー。前半は拙い感じもしたが、共感できるエッセーも結構あって、岩井ワールド、意外と良かった。

    「マニュアル至上主義の店」「食べログ信者の僕が3・04の店に行ってみた」の2編。融通の効かない店、サービスが悪い見せ場でムカついた経験、共感できた。

    「組み立て式の棚からの精神攻撃」、不親切な説明書へのイライラ感と完成させられるだろうかという心細さも、分かるなあ! 部品の欠落が家族のいさかいを生む「組み立て式の棚、ふたたび」もいい。

    「仕方なく会った昔の同級生にイラつかされる」、承認欲求がないらしい著者のスタンスが読んでいて心地良かった。

    「恐怖に怯えたタクシー運転手の怪談話」は、良くできたお笑いネタ。

    「空虚な誕生日パーティ会場に゛魚雷゛を落とす」で語られた「空白のプレゼント」、テレビ画面で見る著者のイメージにぴったしの異物感。

    「VIPも楽ではない」。自分の中で一瞬盛り上がった分不相応なVIP感、これも分かる気がする。

    「親戚の葬儀での面倒くささから救ってくれた父の一言」、親戚付き合いの面倒くささがリアルに描かれている。

    「澤部と僕と」で語るユニークなお笑い感(オリジナリティに拘り、「テレビのバラエティ番組やラジオ番組に対抗」する形のひねたお笑い感)で、著者のお笑いを少し理解できた。

    「テレビで見る芸能人の人生にもどうせ本当は事件など起きていないだろうと。それを皆、化学調味料で元の味などわからなくなるくらい噓のように濃い味付けにして提供してくるのだ」、これは名言だな。ちょうど「食品の裏側」を読んだ直後だったので、この文章、すっと腑に落ちた。

  • ただ日常を消費するという退屈な日々。

    いわゆる"僕の人生には事件は起きない"わけで、でも生きてく上では少しばかりの刺激は欲しいのよ。という厄介な人間の性または本能。
    そんな少しばかりの刺激を見つける為の指南書でもあり、ハライチ岩井のお笑いセンスがキレまくったエンタメ本でもあり大満足。なかでも、リアル脱出ゲームの話しと水筒の話しは最高。

  • ゴッドタンも面白いし…と思い、手に取った一冊。
    皆にもあり得る日常のはずなのになぜか面白い。特にタクシー怪談と誕生日に落とす魚雷、かなり好き。
    最後にはひねくれて〆るかと思いきや、幼なじみで括れないコンビバランスに思わず膝を打った。

  • 後半に行くにしたがって文章に慣れてきたのか、面白くなっていった。
    特に「麻雀の不吉な上がりのせいで・・・」はハライチの漫才を見るようだったし、
    ムンクの叫びの話も面白かった。

    趣味や専門に近い話の方が興味深い話になっているように思う。
    何かに対する不平不満の話よりも専門であるユーモアをもっと前面に出せばいいのに。

    リアル型脱出ゲームや怪談話バーの体験記は良かった。
    芸能人でないと体験できない体験ではないのもいいのかも。

  • 何か特別なことが起こるわけではないが日常の切り取り方や視点、広がる妄想が面白くて一気読みした。自分自身の日常もこんな風に視点を変えれば楽しく日々を過ごせそう、と思わせてくれる一冊。

  • 事件は何も起きない、平凡な一日なのだが、面白いことに着目する視点が鋭すぎる。
    椎名誠のような文体は好きです。

  • それほどピンとは来なかったが、相方の澤部にたいする評論はやはり秀逸。

    澤部は無。人がいいと言っているものをそのまま流しているだけ。

  • ・面白かった。リズムとか、展開とか、文章が凄く良くて、どんどん読める感じ。
    ・同窓会のエピソードが一番好き。あと組立式の棚はホントに同感だった。
    ・タイトル通り、確かに大きな事件は起きないんだけど、光の当て方で、まったく違って見えてくる。

  • ハライチの岩井さんの本。ハライチと言えば澤辺さんがとても有名ですが、岩井さんも才能あふれる方だというのは日々感じていました。その中で、岩井さんのエッセイがあると知って、早速読んでいました。

    最初の数編は「まぁ、こんなもんかな」くらいな印象でしたが、徐々に文章がこなれてくるにつれて、岩井さんの才能が爆発してくるのがよく分かります。日常の些細な出来事が、岩井さんの手にかかると、とても面白い内容に変わっていくのが素晴らしいです。

    内容としては友人・親族は元より、相方の澤辺さんに対する書き方も容赦なく、芸人って自分の人生を切り売りしているとは言いますが、私生活をここまで切り取れるのはすごいなぁ、と思いました。

  • 先日新聞に載った岩井元気の話が
    印象深くて読んでみることにした。
    ちなみに新聞にあった記事は
    「誰も気づいていない隙間に
    まだ新たな笑いの火種がある」
    「他の芸人が今までにない価値観の
    漫才やコントを披露すると
    『ああ、こいつが第一発見者になっちゃった』
    と悔しい。と同時にそれはたまらなく
    楽しい瞬間でもある」
    というもの。
    岩井勇気はBS番組「あの子は漫画を読まない」
    で知っていた。題名が秀逸だ。
    花江夏樹と宇垣美里との掛け合いも
    面白かった。「なんだこいつ」という
    発言もあって気にはなっていた

    「竹林の隠者」といわれた詩人の富士正晴
    の文にはさすがのセンスを感じる。
    「与えるために秘かに来て、
    風のように逃げ去りたい」
    の「秘かに」とか「逃げ去りたい」とか
    老荘とか禅の、または陽水の
    「チエちゃん」のような
    「水に映る月」のような潔さを感じる。
    また司馬遼太郎は彼を評して
    「なにも人は遠い世の一休・良寛を
    求める必要はなく、富士(正晴)を
    見ていればいい」
    と言った。この文を読んでさすが司馬も
    だたものじゃないなと思った。
    「求める」とか「見ていればいい」とか
    秀逸だ。

    岩井勇気にもこんな文章のセンスを感じた。
    まえがきで文章を書いた経験がないと
    言っているが端々に言葉の繊細さが出ている。
    「文章は待ってくれるし、
    すぐに結果を求められない。
    読み手に丸呑みされず、
    しっかり咀嚼してくれるので、
    繊細な味付けも楽しんでもらえる」
    あとがきのこの文章にそれが表れている。
    何気にphaが『持たない幸福論』の中で
    「本がもっともコスパがいい」と言った
    至言を思い出した。良書だ。

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著者プロフィール

岩井勇気(いわい ゆうき)
1986年、埼玉県生まれ。幼稚園からの幼馴染だった澤部佑と2005年に「ハライチ」結成。結成後すぐに注目を浴びる。ボケ担当でネタも作っている。アニメと猫が大好き(写真は飼い猫のモネ)。特技はピアノ。2019年9月26日、初の著作となる日常系エッセイ『僕の人生には事件が起きない』を刊行。

岩井勇気の作品

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