「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考 [Kindle]
- ダイヤモンド社 (2020年2月19日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (339ページ)
感想・レビュー・書評
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『13歳からのアート思考』オーディオブック化記念 光浦靖子さんを迎え、「アート思考」が身につく体験型イベントを2月21日(日)オンライン開催!:時事ドットコム
https://www.jiji.com/sp/article?k=000000127.000034798&g=prt -
昨夏に新聞の著者インタビューを読んでリクエストした本が、ようやく図書館からやってきた。
読みながら、小学5年生の頃の美術の先生を思い出した。
文化祭で飾る木製のラケットに、好きなイラストを描く課題だった。
「それが君に描きたいことなのかな。本当に書きたいことを描いて良いんだよ」
考え直したアイディアは、「社長と社員のラケット」
ラケット部分は太った社長があぐらをかいてえばっている。軸の部分で社員が汗をかきながらそれを支えているのだ。
先生は大爆笑して大絶賛。
ほんの少しだけ手直しをしてくれた。
魔法にかかったように、作品に魂が入ったようになった。
大評判となり、校内放送で下級生の女の子が「一番印象に残った作品でした」とまで言ってくれた。
そのタッチは本書に登場する「緑のすじのあるマティス夫人の肖像」に似ていた。
マティスの絵と、著者の情熱的でありながらわかりやすい記述に、40年前のエピソードが鮮やかに蘇った。
本書では簡単なワークと、6つの大きなテーマで構成される。
私もレシートの裏紙などでやってみたが、本当に楽しかった。
インプットとアウトプットにより、6つのテーマがより親しみやすく感じられた。
カメラの開発により死にかけたはずのアート。そのアートにしかできないことの答えを探したアンリ・マティス。
「多視点でとらえたものを再構成する」という「自分なりの答え」にたどり着いたパブロ・ピカソ(アピニヨンの娘たち)。
「具象物を描かない絵」を生み出したことによって、美術の世界における「作品とのやりとり」への可能性を推し進めたワシリー・カンディンスキー(コンポジションVII)。
アートを「視覚」の領域から「思考」の領域へと、完全に移行させたマルセル・デュシャン(泉)。
アートを「なんらかのイメージを映し出すためのもの」という役割から解放したジャクソン・ボロック(ナンバー1A)。
「『これがアートだ』などといえる『確固たる枠組み』は、じつはどこにも存在しないのではないか?」という問いかけを投げかけたアンディー・ウォーホル(ブリロ・ボックス)。
「読者のみなさんになにを残したかったのかといえば、それはアート思考の『体験』です」
「振り返ってみると、これまでやってきたとこ、出会った人は、すべてつながっていることに気がつかされます」(「おわりに」より)
素晴らしい体験は、先行きの見えない未来を切り開く力になる。
人生100年の時代。
お楽しみは、これからだ。 -
時間がなくて飛ばし読み。
中高の美術って、並べられたり恥ずかしくて、あんまり良いイメージが無かったけど、このアート思考っていうのは、とても興味深い。
勿体無いので再読予定。2022.1.11 -
私は作品の筆跡を見るのが好きなので、それが肯定されて嬉しかった。
①そこからどう思う?どこからそう思う?
②主観的な解釈を作る
③物質・行動の軌跡として見る
④視覚以外でとらえる
この4つで、アートはもっと楽しめるという話。
アートを楽しむときはこの4つを思い出しながら自由に楽しみたいと思う。 -
美術教師である著者が、中高生向けに行った「アート思考」の6回分の講義を書籍にまとめたもの。流行りの「教養」としてアートの知識を講義するのではない。アートについて、もっと本質的な、それでいて目から鱗な感覚を味わうことが出来る。僕は「美術」の成績が悪く、大っ嫌いな人間だけど、これは美術とはかけ離れている。書籍はやや大人向けよりに編集されている感じがするけれど、同じく学校の「アート」には苦手意識のある息子に読ませてみようかな。
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■ひとことで言うと?
アート思考=独自視点で新たな問いを生み出す思考
■キーワード
- アート:表現(花)+興味(種)+探究(根)
- アート思考=自分なりのものの見方で興味(根)・探究(種)を育み、新たな「問い」を生み出す思考
- アート=新たな価値(問い)を生み出すもの
- アーティスト=価値(問い)を生み出す人
- アート思考を育む
- 自分の 興味=愛するもの を見つけ、探究し続ける
- アート作品の鑑賞は「自分なりのものの見方」を育むための手段 -
ものの見方を一変させる!
自分なりの答えを生み出すことが、できれば誰でもアーティストであるなんて -
この本はスゴイ!深い!
実は人は「見ているようで、観ていない」ということを思い知らされる。
答えを見つけようとして、解説を読んでしまう。
絵をパッと見て、感じるだけで終わってしまう。
それでは駄目なのだ。
まずはきちんと作品を観て、アウトプットしてみる。
その上で、本書でいうところの探求の根をどんどん深くまで複雑に生やしていく。
これには、とにかく「思考」だ。
当たり前であるが、深く深く考えることがものすごく重要なのだ。
自分のアウトプットを元にして、「なぜ」を繰り返すことで、自分なりの答えが見えてくる。
実は「作者がどう考えたのか」も時として見えてきたりする。
著者は必ずしもそこに行きつく必要はないと言っているのだが、作品の作者も探求の根を深く深く生やしたからこそ、その結果として創造の花を咲かせたのである。
確かに、作者の思考プロセスをたどる必要はない。
しかしながら、自分なりの思考でとにかく深く根を生やすのが大事なのだ。
これは、実はビジネスの世界でも非常に有用というのも納得できる。
なぜなら、美術芸術に正解はないからだ。
それでは、今の社会は正解があるのだろうか?
確かに一昔前にはあった。
勉強して、いい大学に入り、いい会社に就職する。
そしてその会社の中でレールに乗って進んで行けば、それなりの人生が歩めたのだ。
年功序列で終身雇用。
当時の社会の仕組みの中では、言われたことをロボットのような正確さで行うことが必要だったのだ。
だから大学の成績や能力は問われずに、企業に雇われる。
そこでメンバーの一員として、徹底的に同質化を求められたのだ。
これが、安価で高品質に大量生産を行うという、「モノ作りニッポン」の国策に最適化された生き方だったのだ。
当時はこの人生が紛れもない正解だった。
しかしそんな正解はとっくの昔に崩れたのだ。
VUCAと言われて久しいが、今でも日本は生き方を変えられない。
一方で、企業は体力を無くし、年功序列も終身雇用も維持できない。
さて、我々はどうするのか。
こんな社会でどう生きていくのか。
これは「自分で答えを見つける」しかないのである。
芸術の世界と同じように、深く探求し、花を咲かせるしかないのである。
自分の人生に勿論正解はない。
考えに考えて。今までの常識を疑い、物の見方の角度を変える。
ある瞬間に閃くかもしれない。
大きな花を咲かせるかもしれない。
しかしそれも、大きな根をはったからだ。
課題(イシュー)を見つけろ。
これも最近言われることであるが、この「イシュー」がものすごく大事なのだ。
考えろ考えろ。
生き抜いていきたければ考えろ。
人生を諦める訳にはいかない。
このスキルを何としても会得して、生き抜いていきたいのだ。
そんなことを考えてしまった。
(2021/4/8)