フェラーリと鉄瓶 一本の線から生まれる「価値あるものづくり」 (PHP文庫) [Kindle]
- PHP研究所 (2010年7月1日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (162ページ)
感想・レビュー・書評
-
イタリアのデザイン工房ピニンファリーナの創業者は車のデザインを「もっとシンプルにしろ」と言い続けた。「シンプルさを追求する姿勢」を徹底的に仕込まれた奥山清行。山形県出身である。GM、ポルシェなどを経て、ピニンファリーナのデザインディレクターとなる。
マセラティクアトロポルテ、エンツォフェラーリ、山形鉄器 繭などをデザインする。
「これまで常識とされてきたシステムからちょっと離れたところで、リスクを負いながら冒険する。それがクリエイティブであるための条件である。」と奥山清行はいう。
「デザインには主観的な部分と客観的な部分があり、機能性や用途に応じた適応性、価格、全体のイメージが客観的な部分で、最後に残った好き嫌いの部分が主観的な部分のセンスである。それがトータルな一つのデザインとなる。」
イタリアでは、集団ではなく、一人の個人が全てのデザインの責任をおう。そして、経営者は集団で競わせて、一人のデザイナーを選定して、任せる。作る人の顔が見えるようにする。あくまでもアイデアの権限を尊重する。そのことで、デザイナーが成長する。日本は、個人のカラーを会社で消してしまう。それが、日本とイタリアのセンスの差になっているという。
ピニンファリーナの会長は、どうして美しいものを追求するかという質問に、①美しいものは売れる。②人間は、本来美しいものが好きである。そして、美しいものは正しい。俺たちは正しいことをしているという。「アメリカ人には、このデザインがなぜ美しいかということから説明しなければ理解されないが、イタリア人は見ただけで美しいか汚いかがわかる。そして、日本人にもなぜ美しいかの説明はいらない。」芸術は、自分のためにものを作り、デザインはお客さんのために作る。
日本では、沈黙が金である。言わなくても通じているはずだというが、奥山清行は、デザインの作業のうち3分の2がコミュニケーションだと考えている。イタリアでは、会議に出て発言しなければ、次の会議には呼ばれない。デザインを説明する言葉をたくさん持っているものが勝ち残る。
フェラーリでは、お金を出して買えないものを売る。創業者の名前を冠たエンツォフェラーリは、2002年に売り出した。市販価格 約7500万円 市場調査をしたら、350台売れると判断して、349台作った。フェラーリの創業者は、「需要よりも1台少なく作れ」と言っていたから。発売を決めたら、10倍以上の人が押し寄せた。エンツォフェラーリにふさわしい人を選んで、349人を決め、当選したと連絡し、半額を持ってきてもらい、2年待ってもらった。中古車は、2倍の価格で売れた。
日本は、切り捨て文化ーギリギリまで削ぎ落とす文化があったが、足し算文化ー機能を付け加えすぎで、世界から取り残されるようになった。山形に戻って、山形工房で、薄肉鋳造技術を使って、「繭」という山形鉄器を作る。山形でしかできない技術とシンプルなデザイン。
奥山清行は、いい仕事をしている。そして、取り組む仕事に哲学がある。東北はクリエイティブで、おもしろい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
エスプレッソに砂糖をドカドカ入れる=男らしい、がイタリア人の「砂糖伝説」。絶対こういったオヤジは早死にするっ、という暴挙が伝説所以だったとは笑。
実は楽天家でなく諦念屋等々。後半のデザイナー論よりもイタリア人論が愉快で目から鱗。イタリア好き必読の書であった。
<その他の書籍紹介>
https://jtaniguchi.com/tag/%e6%9b%b8%e7%b1%8d%e7%b4%b9%e4%bb%8b/