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感想・レビュー・書評
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「小児性愛障害」の治療について書いた本。
小児性「愛」と言うが、それは愛などではないと筆者は繰り返し述べている。思うだけなら自由ではあるが、それが問題行動につながるのであれば、その「思い」を消す義務がある。小児性犯罪は、再犯率が非常に高く、依存症の一種と考えられるが、アルコール依存や薬物依存、ギャンブル依存などとは違い、被害者を生む。この病になったことには彼らに責任はないが、この病が原因で犯罪を犯したことについては責任を取る必要があるというのが筆者の立場だ。
性犯罪者は一生刑務所から出すなという意見も根強いが、現実的には不可能であるし、社会復帰した彼らが犯行をやめ続けるためには、社会と繋がりを持ち孤立させないことが不可欠だ。メーガン法などの法制定は逆に彼らを孤立させ犯罪率を上げるというデータもあるという。性犯罪者が再犯しないための社会のあり方について考えさせられた。
また、漫画やCGなどの「被害者がいない」児童ポルノや、小児の姿をしたセックスドールについての規制が必要か否かという問題で、表現の自由や犯行抑止になるという理由で規制に反発が起きるが、少なくとも後者の理由は全く逆であると筆者は述べている。なんと小児性犯罪に手を染める者は、ほぼ全員が児童ポルノを見ているという。児童ポルノを見た者がすべて小児性犯罪者になるわけではもちろんないが、小児性犯罪者がすべからく児童ポルノを見ているということは、両者の間になんらかの因果があることは明白で、実際にそれがトリガーになったと語る者も多いと言う。私はどちらかというと規制しなくても良いという立場だったが、考えを改めた。
巻末に「子ども性犯罪経験者」と筆者の対談が収録されているが、これはなかなか読むのがしんどい。もちろん元加害者たちが問題行動をやめ続けるために必要なプロセスであることは理解しているし、20年やめ続けることに「成功」している先達の語りが、彼らにとって重要なのもわかるのだが、かなりエグい性加害を繰り返し認知も歪みまくっていた過去を平然と(ではないのだろうけど)語る様はかなり抵抗があり、こうした人を孤立させてはいけないのは理解はできるつつも、心理的に受け入れがたいものがあった。
小児性愛者を生む社会のあり方として、筆者は日本がいまだに男尊女卑が根強い社会である点を指摘している。女性には男性の性欲を「受け入れる」ことが期待されており、受け入れられない男性は不全感を抱く。自分を拒絶する現実の成人女性に畏れを抱き、より弱い立場の子どもに受け入れられようとする。小児に性加害をする者の価値観は、こうした社会が生みだしている側面もあるのではないか、と。
多少の飛躍があるようにも思うが、言わんとしていることはわかる。そもそも相手に受け入れられることがデフォルトだと思っているから拒絶されたときに苦しいのだし、受け入れられることもあれば受け入れてもらえないこともあり、かつ後者だったとしてもさほど絶望的なことではない、よくあることなんだと思えると良いのだと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示