良い戦略、悪い戦略 (日本経済新聞出版) [Kindle]

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  • 戦略論と経営理論の世界的権威である、ルメルトの著書。
    戦略策定のマニュアルとよべる本であり、体系化されている。
    また、良い戦略だけではなく、悪い戦略も記載されている点が他多くの書との違い。

    ◯良い戦略とは
    良い戦略とは基本構造を外さないこと、実行可能であり、目標達成できるものが良い戦略である。
    1.診断(問題の特定)
    2.基本方針(価値観、大きな方向性を指し示す)
    3.行動(行動の選定→焦点を当て実行)
    「何をやるか」だけでなく「なぜやるか」「どうやるか」を示す具体性と実行力が重要。

    悪い戦略の特徴
    ・空疎。華美な言葉や不必要に何回な表現を使うことで高度な戦略思考の産物であるよう見せるが、実質的には何も語っていない状態
    ・テンプレートで戦略をつくること。テンプレートで作られる戦略は戦略ではなくて願望であることが多い。
    ・「願えば叶う」に似た極度なポジティブシンキング
    ・重要な課題に取り組まない。困難な選択を避けること
    ・目標を戦略と取り違える。道筋ではなく、願望を記載
    ・間違った戦略目標を掲げる。重大な問題とそもそも関係がなかったり、単純に実行不可能な場合が多い。特にアクションプランが50個以上など寄せ集めに注意
    悪い戦略がはびこるのは何故か。分析や論理的選択を一切行わずに戦略を立てようとするから。
    調査や分析という地味でありハードワークである作業を避けるから、悪い戦略ははびこる。面倒な作業はやらずに済ませたい、調査や分析などしなくても戦略は立てられるという安易な願望がある。

    ◯戦略の要諦
    ・変数を減らしシンプルにすること
    ・一貫性を持つこと
    ・張るべき領域にリソースを集中投下すること
    ・他者が真似ることができないような競争優位性のある強みを考えること

    ◯良い戦略の基本構造
    ①診断
    状況を診断し取り組むべき課題を見極める。死活的に重要な問題点を選分け複雑に絡み合った状況を明快に解きほぐす。
    多くの企業や経営者は、診断ができていない。できていても不十分なまま戦略を作り始める。

    ②基本方針
    診断で見つかった課題に対しどう取り組むかの大枠の方向性を示す。目標やvision、願望の表現ではなく、南極に向きあう方法を示し、他の選択肢を排除する。
    他の選択肢を排除するのも基本方針の役割

    ③行動
    基本方針を実行するために設計された一貫性のある一連の行動を実行。
    全ての行動をコーディネートすること、組織に強制力を持って貫徹することが肝。
    一貫した行動を組織すること。平時は現場に権限を委譲しつつ、戦略の実行の為には行動のベクトルを強制的に揃えることで実現する。

    ◯良い戦略の最大化
    ・最も効果があがりそうなところに、一番レバレッジが効くことに投資する
    ・テコ入れ効果(レバレッジ):適切な未来予測とリソース集中投下
    ・近い目標:実現可能な目標にすることで、実現ステップの『曖昧さを排除』←これが重要
    ・鎖構造を理解し弱点を補強する。最も弱い部分で全体の性能が決まる
     製品、営業力、コスト体質、いずれもが鎖の一部分を形成しているのでstep by stepで解消していく
     →これが競合への参入障壁になる。1つ真似したところで他の変数が”弱点”となり機能しないから。IKEAは店舗在庫、ロジスティクス、カタログ販売など独自システムを築いたが、競合はこれら全てを追随しない限り太刀打ちできない。   

    ◯参考になったセリフ
    ・良い戦略とは「一点豪華主義」なのだと私は思い出す。
    ・最初の思いつきで戦略を立てる悪癖を直す方法は、簡単だ。一つの戦略で満足せず、別の戦略を探すことだ。ところが私がそう言っても、たいていの人が最初のアイデアにこだわり、その派生バージョンしか考えようとしない。意識的にせよ無意識にせよ、こうした人たちは複数の案を考えるのが嫌なのだろう。
    ・本物の専門知識や知見は。複雑なことをわかりやすく説明する。悪い戦略は、わかりきったことを複雑に見せかける。
    ・「全社一丸となる」ような戦略は、得られるメリットが大きいときに限る。優れた組織は使い分けをわきまえていて、何をやるにしても全部門の行動を統率するといった愚は犯さない。
    ・人間は殆どの場合、最初に思いついたやり方やアイデアで問題を解決しようとする。そしてタチの悪いことに、最初に思いついたやり方が妥当だと考える。※保有効果
    ┗ だけど、第一感が大切というのも事実。大事なのは第一感が大切と知りながらも、他にぜんぜん違うアプローチがないかと考えることである。
    ・戦略を練り上げるときは他人の視点に立つことが重要だ。あなたより賢いだれかの視点にたったり、顧客の視点にたったり、こうすることで「保有効果」を少しでもさげて戦略思考に望むことができる。

    ◯戦略系で他に参考になる著書
    ・ストーリーとしての競争戦略
    ・イシューから始めよ
    ・競争優位性の終焉

  •  戦略についての良い悪いという肝は、内容ではなく姿勢とか組み立て方にあるような気がしたね。戦略なんていいつつ、実はたんなるスローガンになっている、なんていうのはよくわかる。自分でそういうつもりはなくとも、「あきらめないでやる」なんて(俺は言わないけど)、確かにスローガンであって、仕事を進める道筋ではない。読んでいて、けっこう読みやすく、考える刺激があった。読み返して、戦略についてもう少し勉強を深めたいね。

  • 電子書籍で読んだが、ハイライトの量が過去一かもしれない。
    乗り越えなければならない問題があり、乗り越えるために戦略を立てる。スローガンとは違う。目標とも違う。良い戦略は問題を診断し、基本方針を立て、行動まで組み込む。
    過去の豊富な事例から、良い戦略と悪い戦略を解剖し、その考え方などを学べる一冊。
    「頑張れ」と言うだけでなく、効果的に頑張れる状況を作り出したり、努力する価値のある戦略を立てたり。
    そのためには徹底した情報収集と”考えること”が必要。とかく人は”考えること”から逃げがちなことをまずは自覚。

  • 以前読んだ何かの本で引用されており気になってた本。
    仕事に役立つかと思い読破。

    【内容】
    以下の3部構成
    Ⅰ:戦略とは
    Ⅱ:戦略の具体例
    Ⅲ:戦略を生み出す考え方

    Ⅰ:
    『戦略』という言葉について、
    巷でよく謳われる『戦略』の9割が戦略ではないと切り捨て、著者の考える本当の戦略を構造的に定義し説明。

    Ⅱ:
    具体的な戦略を実例を踏まえて解説。
    例えば、他社が模倣できないような鎖構造の仕組みを作れることで市場で優位性を持つなど。

    Ⅲ:
    戦略を生み出す考え方を紹介。
    認知バイアスの排除など。

    【良かったこと】
    ・戦略という言葉を定義してもらえたお陰で戦略を認識できるようになり、戦略について考えることができるようになった。

    【その他】
    ・Ⅱ部は長くて退屈なので、読むならⅠ部とⅢ部だけでいい。
    ・暇な人におすすめ。

  • 戦略に小手先は不可 「大勝負とタイミング」
    ネルソン提督 ステーブ・ジョブズ

    1.「戦略と科学」=仮説と検証 Data is King!
    ①2012年の本だが未読了 コロナ禍で再人気 読破
     戦略の巧拙の問題意識が高まった 日本の弱さ
    ②洋書のレベルの高さ 専門書並み 和書はダメ?
     本書も「科学哲学」の域(16章) 見識の深さ
     専門家の考えについて持論を主張 日本にはない
     これが専門理論への問題意識・定見を深める
    2.戦略は絞り=二兎を追わず ex コロナ禍
    ①まずはコロナ対策に集中
    ②感染を抑えて=医療体制の平時化、経済対策へ傾注
    ③オリンピックの強行は最悪 感染爆発・共感なし

  • 戦略の本としては孫子と並べて置いておきたいくらい良い本。実例も幅広くて多い。

    詳細は下記。
    https://note.com/t06901ky/n/nb0f59b027fdb

  • のべつまくなしに多くの企業が戦略を立てているが、ほんとうに良い戦略とはなにか。売上をいくらあげる、というのは戦略ではない。診断、基本方針、行動が定まってこその戦略である。読者を飽きさせない独特の皮肉が面白い。

  • 組織においては、方向性が分散しないようにする

    「何をするか」と同じくらい「何をしないか」が重要

    ウォルトンは常識を破ったのではなく、店舗の定義を覆した

    アメリカはソ連にただただ対抗するのをやめて、アメリカの「強みを最大限に活かして、相手の弱点をいかに付くか」に注力したこと

    良い戦略の基本構造『カーネル(核)』 108ページ
    ①診断②基本方針③行動
    三つの要素を私がカーネルと呼ぶのは、戦略の屋台骨であり、なくてはならない存在であることを 強調したいからである。カーネルは壮大なビジョンとは無縁で、目標や中間目標や年間目標といった ものとも関係がなく、期限すらない。こうしたものは、脇役に過ぎない。カーネルは戦略の考え方を 表し、戦略の策定を促し、戦略を表現し、行動へと駆り立てる。カーネルはまた、戦略を分析・評価 するときの手がかりにもなる。繰り返しになるが、戦略の核は状況の診断、診断で明らかになった課 題に取り組む基本方針、基本方針に基づく一貫した行動である

    ②基本方針
    唯一絶対かどうか確かめる方法はないが、基本方針がないと行動が定まらず、一貫性を欠く。
    重要なのは無数にあった手段の中から方針に従った行動を選び、一貫性を持って取り組めるようになること

  • 良い戦略と悪い戦略を対比して説明している本。

    良い戦略のカーネルとして以下の構造がある。
    1.診断・・・取り組むべき課題を見極め重要な問題点の選り分ける
    2.基本方針・・・見つかった課題を取り組むか大きな方向性と総合的な方針を示す
    3.行動・・・基本方針を実行するために設計された一貫性のある行動をコーディネート

    良い戦略はいかにシンプルに分かりやすく紡ぎあげられるかがポイント。

  • 軽々しく「戦略」と言ってはいけないことを学んだ。面白かったのは、彼が「戦略」をNASAで学んだ場面。システム屋として、彼がやったのは、まさに「すり合せ」。全体のゴールに向かい、全体を頭に入れながら、各コンポーネント・部門を調整すること。これって、俗に言う、日本流の「すり合せ」じゃないか!これが、「戦略」の「基本方針」から「行動」へとつながるところ。この「線(ロジック)」がないとダメなんだな、と。

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