投資で一番大切な20の教え 賢い投資家になるための隠れた常識 (日本経済新聞出版) [Kindle]

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  • ☆基本情報
    読了期間︰2022年8月
    著者など︰ハワード・マークス
    ジャンル︰金融系
    ページ数、時間︰やや長めの文庫本
    目的:マクロ投資

    ☆感想
    著名バリュー投資家の相場観・投資哲学の一例の勉強として知っておきたく読んだ。
    投資哲学やリスク選考の仕方は人により様々だと思うが、株価や与信枠のサイクルの存在の意識や、強気相場では波に乗りすぎないことへの警鐘については、多くのベテラン(ダリオ氏やバフェット氏など)のビューとしては共通点を感じる。
    本著を読んだ印象としては、様々な日々の読み物やブログで論じられている考えが体系的にまとめられているという印象(故に真新しさが大きいわけではない)。
    主張を一文で要約すれば、「サイクルは必ず存在し、価格はいずれ平均に回帰してゆく。したがって適正なリスクで最大限アウトパフォームできる投資手法は、特定の資産の本質的価値を緻密な分析によって算定し、市場価格との乖離が生じている時にはその機会を決して逃さず投資実行し、時には市場の心理に抗いながら適正な水準に戻ることを待つ」ということかと思う。すなわち、個別分析と市場心理の把握なのである。
    もし何かに本格的に投資をするのであれば、まずは前者の下となる資産に対する知識を深め、予測できていないシナリオをなるべく網羅すべく、思慮深くシナリオを構築する必要があろう。
    情報収集と思考に時間を費やさずとも資産運用は可能だが、それはギャンブルの域を出ず、真剣に考えるならば知識と情報の収集に膨大な時間をかけるべきである。


    ☆引用・まとめ
    <二次的思考>
    ・一時的思考:ある特性(成長性がある)から買う/売る。二次的思考:特性を踏まえたうえで、現在の価格がどうあるのかを分析する。
    ⇒特性に正確な理解と、それを織り込んだうえでの今の価格の正当な評価を、心理状況に惑わされずにができるかどうか?
    ⇒今後どのようなことが起こり得て、その可能性はどうか(実際の結果と、それぞれの事象の可能性を正確に予想することは別)。
    ・一時的な思考とは、単純な因果を求めるが、実際の相場はそうではない。一時的思考は、自分が知らないことを無視している。

    <効率的な市場(シカゴ学派・ランダムウォーク)>
    ・市場はコンセンサスを織り込むというのが一般的な前提だが、恐怖と欲望がどちらかに傾きすぎていて、バリュエーションが正当化できないことはある。
    ⇒かといって、市場コンセンサスに浸されたある投資家が、コンセンサスや市場の心理に逆らって、正確な見方を持ち続けるのは難しい。
    ・市場が非効率になるのはそれほどど頻繁にあるわけでもなく、流動性の高い市場であればなおさらである、というのが筆者の考え。

    <バリュー投資>
    ・バリュー投資はアセットの良し悪しの絶対評価ではなく、今の価格の相対評価で投資をする。成長性はもちろん織り込んでフェアバリューを考える。
    ・「良い銘柄」に投資をフォーカスして価格が大きく下落した例はいくらでもある。60年代のNitfy Fiftyやドットコムバブルなど。
    ・多面的な情報からフェアバリューを算出し、その投資アイデアに自信を持ったなら、「次に重要なのはそこからぶれないことだ。投資の世界では、正しいアイデアがすぐに証明されるわけではない。」
    ⇒下げ局面でのバリュー投資の秘訣。①あるアセットのフェアバリューに対する見解を持っていること、➁その見解を強く持ち続けること、③そのフェアバリューの見解が正しいこと。
    ・「良い銘柄」への投資と上昇の3段階プロセス(あるいは強気相場のプロセス)。1.先見の明がある人が投資をはじめ、2.市場のフォロワーが同じように買って価格を吊り上げる、3.より多くの大衆が飛びついてさらに価格が上がる。

    <リスク>
    ・「リスクの算定とは、将来に実際に起こることの予測ではなく、起こりうるシナリオについての確立をなるべく合理的に予測すること」。
    ・高リスクアセットは、石油気がより不確かなアセットのことである。高いリターンと低いリターン(orマイナス)を生む可能性が高いということ。リターンの中央値を見れば、高リスクアセットのほうがリターンが高いかもしれないが。
    ・リスクとは、学術的定義やモデル上ではボラティリティと同一視されることが多い。しかし、ボラティリティの多寡を投資判断基準にすることは原則としてなく、「損をする可能性」を抑えることがリスクを抑える投資なのだと思う。
    ⇒上昇局面では「リスクをとらないリスク」という話もあるが、上記について規律のある投資家は、そのようなことを許容することもいとわない(バフェットなど)
    ・理論では、高リターンは高リスクに付随することになっている。しかし肝の据わったバリュー投資では、フェアバリューを大幅に下回る価格でアセットが買える特定の機会においては、高リターンと低リスクは両立しうると考える。
    ・現在価格とフェアバリューの乖離がリスクに対する大きな影響を与えるいう前提に基づき、フェアバリューの見方が画一的であり得ない以上、リスクというのものは客観的には測定不可能である。
    ・「ナジーム・タレブ著まぐれ:運がいいだけの愚か者」:未来については知ることできず、予測するだけ。先見の明があるとは、将来のシナリオの幅を列挙し、その中で起こりうる相対な確立分布を大まかに算出すること。
    ・釣鐘型の標準偏差分布を「正規分布」として、多くの金融機関がモデルに組み込んだことがおそらくGFCの主な原因だった。ファットテールの存在を過小評価していた。

    ・リスクがリスクとして認識されるプロセス:ある資産を高すぎる価格で買っていると気づくことから始まる。皆が気づけば皆が売り始める。
    ⇒強気相場で、リスクの定義をあやふやにしたまま「リスクがなくなった」という思い込みが、フェアバリューとの乖離を促進させてリスクを増大させる。
    ⇒上昇局面では、いろんなセオリーが展開され、上記が正当化される。しかし、「今回は違う」という強気理論が未来永劫正当化されることはない(調整が起こる)。
    ・「市場が適正なリスクプレミアムを提供するのは、投資家が十分にリスク回避的であると時に限られる。上昇局面では、十分なプレミアムがない」
    ・アセットクラスごとの想定リターンを縦軸、想定リターンを横軸に考えると、「現在(2004年)の相場では、無リスク資産の出発点が過去に類のないほど低く、またリスク上昇に伴う想定中央リターンの上昇幅(線の傾き)が低い」。
    ・「現在(2007年)、リスクプレミアムは最低水準である。マイナス材料が生じてもすぐに回復する、というのが最近の市場のコンセンサスだ。」
    ・「リスクのあまのじゃく現象」。市場のリスク回避姿勢が強まりすぎ、「(市場の言う意味の)リスクが高すぎて手を出せない」というアセットは、売られすぎていてフェアバリューを大きく下回るということが多々ある。
    ⇒こうしたパラドックスが生じるのは、多くの投資が価格ではなく資産の質を、リスクの大きさを判断の材料としているためである。

    ○リスク調整後のパフォーマンスと本当に有能なパフォーマンス
    ・リスクの測定と将来の事実と合致しないため、リスク調整後のパフォーマンスの測定は難しく、一般には軽んじられている。しかしそれでは下げ相場に耐えられない。
    ・リスクは陰に潜んでいるのだから、上記の能力は上げ相場には話題にならない。だが長年に優れた投資家は、上げ相場ではそこそこ、下げ相場で市場を大きく上回る、のである。
    ⇒上げ相場では低いリスクをとって市場と同程度のパフォーマンス、下げ相場では十分なミカエルが得られるときにリスク(=ポジション)をとって大きく儲ける。


    <サイクル・心理的影響>
    ・マーケットにはサイクルが必ず存在し、一つの方向に動き続けることはない。サイクルの存在を無視し、これまでの(中短期の)トレンドを未来にあてはめ続けることは、最も危険なことの一つである。
    ⇒多くの人が上記の原則を忘れたときに、相場の転換点が発生しうる。そこには、利益と損失発生の大きな機会がある(振り子が戻る)。
    ・「私は信用サイクルというものの影響力を強く感じている。景気がわずかに変動しただけで、利用可能な信用の規模は大きく変動し、資産価格や景気そのものに多大な影響を及ぼす。」

    ○恐怖と欲望の振り子の両端では、資産価格とリスクについてそれぞれ過大評価と過小評価される。
    ・欲望が優勢になると、投資家は利益のためにリスクをとることを心地よく感じ、リスクが過小評価される。サイクルの消滅という「今回は違う」理論が展開される。
    ・恐怖が優勢になると、極端なリスク回避姿勢が強まり、資産価格には悲観的な要素だけが織り込まれる。
    ・「強気相場の3段階プロセス」はもちろん弱気相場にも逆のことが言える。
    ・ファンダメンタルズだけではなく、感情が相場の短中期的なトレンドに大きな影響を与える。楽観主義や強欲は永久には続かず、いずれは逆の方向に揺り戻す(それも強気より速いペースで)。

    ○相場が感情に多分に影響される。投資家の過ちを引き起こす4つの要因。
    1.強欲と楽観主義。カネを設けるという機会を脱し続けることに人はなかなか耐えられれない。たとえ資産価格が既に高くても。
    2.恐怖と悲観主義。もっと下がってしまうのではないか、これ以上には損失に耐えれない、というパニックを耐え続けることは難しい。
    3.自己欺瞞。理論や過去事例などを無視して、こうなってほしいというストーリーを自分の中で信じ込んでしまう。
    ⇒金融に関する記憶はしばしば持続が短く、同じパターンを繰り返す。若い新たな投資家が、「今回は違う革新的発見」を行い、そのトレンドが続くと自己正当化する。
    4.多数派への同調。コンセンサスに反する自論を維持し、しかも市場がそれと反対に行くことに我慢し続けるのは難しい。
    5.嫉妬。強欲と同じケースに見られるか。
    6.うぬぼれ。「運の良い愚か者」は、自分のとった/とる投資のリスクを顧みず、たまたま結果としてうまくいったことを実力だと思い込む。
    ⇒長く結果を出す投資家は、上記を非常に恐れている。知らないことの多さや潜在的なリスクに留意し、過度なダウンサイドリスクをとらないように注視する。
    ・資産価格の算出や見通しについて筋の通った結論を導き出すことが出来ても、市場をアウトパフォームで切るかは別問題だ。
    ⇒相場には集団の心理影響が大きく作用するから、「たいていの場合、資産価格は割高でなおも上昇か、割安でなおも下落中である。」。こうした状況に対して、自論を持ち続けることが出来ず、屈服することが多い。

    <逆張り・掘り出し物・チャンスを待つ>
    ○リスクの本質や振り子理論を鑑みれば、逆張りにこそ大きな機会がある。
    ・相場のピークや大底などの一世一代の機会は10年に一回程度しか来ないかもしれない。
    ・相場が行き過ぎた状態でも「割高であることは、明日値段が下がることとはまったく別である」。トレンドに逆らうことは、時に大きな打撃を受ける。
    ・当然ながら、トレンドに逆らうだけでは無意味で、その投資仮説が正しい根拠と分析に基づくものである必要がある。
    ・「そんなうまい話があるわけない」、「そんなひどい話があるわけない」と疑問を持ち、その分析に自信を持てたなら、逆張りのポジションを持つことを検討する。

    ○最良の投資機会は、投資先候補のリストと本質的価値と市場価格の乖離分析。・
    ・最良の投資は、アセットの質ではなく価格で判断すること、「いくらで買うかが問題」。
    ・多くの投資家は、過去のパフォーマンスや直近トレンドを未来にはめてしまう。しかし、トレンドの恒久的継続より「平均への回帰」が起こる可能性のほうが高いことを覚えておくほうがいい。
    ・割安な掘り出し物は、1.十分に理解されていない(そしてそれが価格にネガティブ)、2.一見してファンダメンタルズにネガティブ、などの特徴があることが多い。筆者の例で、70-80年代のCBやジャンク債。
    ⇒人々がよく注視しており、中立以上の評価をしているものについては、掘り出し物になりえない。

    ○積極に動くよりも、資産のほうがこちらに向かってくるのを待ったほうが、良いパフォーマンスをあげられる。
    ・自分がこれが欲しいと決めて買いの競争をするより、売り物がいっぱいある中から選ぶほうが、たいてい価格条件がいい(=リスクに対してリターン期待がいい)。
    ・相場のサイクルは必ず存在し、しかも抗うことが出来ない(抗えると思うのは驕りだ)。だから、今の相場の状況を把握し、それに応じて自分がどうリスクコントロールと機会追及するかを決める。
    ・「儲かる投資機会を脱することは、損する投資に手を出すほど重要な問題ではない」。ボールの見送りは存分に許されるべきだ。
    ・選球眼を身に着けるうえで重要な一つが、今いるのが低リターン環境なのか高リターン環境なのか理解すること(マクロ)。
    ⇒低リターンの環境(債券が高く利回りが低い)時に、そうでないときと同等の絶対リターンを求めると、とても高いリスクを受け入れていることになる(例えばレバレッジや低信用債)。
    ・低リターン環境でできるのは、現金を保有し続けるか、その環境で許容できる水準で投資し続けるか、リスクを高くとるか、が主流である。あるいは、隠れたニッチ市場で投資リターンを挙げるというのもある(難しいが)。
    ⇐低リターン環境と、好調なトレンド、をどのように分けて定義付けすればよいのか、考える必要あると思う。
    ・高リターンの環境、信用が縮小し投げ売りが発生している相場のほうが、無理せず設けることが出来るのは明白である。
    ⇒投げ売りが一人だけで、買いたい人が10人いれば、価格はやや下がる程度になる。このバランスが売りに傾けば、買い手にとってこれ以上ない機会である。

    <無知・現在を予測する・運の影響>
    ○無知
    ・マクロ経済全般などといった広範囲について、未来に関する優れた知見を提示できる者などほぼいない。
    ⇒より狭い範囲のことに特化するならば、他人より多くを知る余地はある。また、現在が振り子のどの位置にいるか見出す努力をすれば、精緻な未来予想が出来なくとも起こりそうな事態に備えることはできる。
    ・大抵の予想家や市場の予想は、過去の情報のあてはめによって形成され、多くの場合はその範囲に収まるが、それはコンセンサスに乗っているだけで他人より優れた未来観の提示ではない。
    ・大きく物事が動く時の予想は、一回限りなら他人より極めて優れたビューを提示する人もいるが、継続的に他人より優れた予想をできる人などまずいない。
    ・「知っている派」と「知らない派」。確信と用心深さ

    ○(この先のことがわからなくても)今どこにいるのか?
    ・私の経験上、サイクルについては避けられない問いこと以外に、その将来の動きを予測することはできない。
    ・今のトレンドが続くか逆転するか正確に予測することはできないが、長期のサイクルの中で今どこに入るのかを理解し、対策を講じることはできる。未来は予測できなくても、今を知ることはできる。
    ⇒相場がサイクルの一端に達した時に備えたポートフォリオを組む、サイクルの頂点と谷底では多くの投資家が間違った行動をするがそれに歩調を合わせない。
    ・2007年に入るまでの数年前がそうであったように、カネ余りは一番怖い。カネ余りとは、カネの価値を安くする、つまり融資条件や金利の低下や、バリュエーションの増大である。
    ・サイクルの上下を見るKPI: 融資の積極・消極、金利の高・低、投資家の楽観・悲観、ファンド資金調達の容易・困難、最近のパフォーマンスの堅調・軟調

    ○運の影響を認識する
    ・ロシアンルーレットで得た$10mは、歯医者が技術を駆使して得た$10mとは違う。同じものが買えるという結果が同じに過ぎず、前者は後者よりもランダム性に依存している。
    ・市場で短期的に最も高いパフォーマンスを上げるのは、偶々しかるべきタイミングで積極果敢であったものであり、歯医者のようなランダム性の低い職業とは違う。全米コイントス大会。
    ・タイミングと運良く結果を残したものがいても、起こらなかった歴史は評価にならない。最も思慮深く確率的に正しい判断をすることと、良い結果が生じることは、一致しない。スキルは前者のことである。
    ・優れた判断とは、より具体的には何か。⇐あることについて他者より情報を収集し、起こりうるしなりを緻密に列挙し、各シナリオが資産クラスに与える影響を理解し、それらを考慮してディフェンシブなポートフォリオを組むこと、か?
    ・投資を運ではなく技術によって行いたい、すなわち優れた判断をしたいなら、「あまりに幅広なことよりも、知りうることの中から割安な投資先を見つけることに時間を使うべきである。」

    <ディフェンシブに投資・落とし穴を避ける・付加価値とアルファ>
    ○ディフェンシブに投資
    ・大胆不敵で足元うまくいっている投資家はたくさんいる。経験豊富で大胆不敵な投資家はない。
    ・「勝者のゲーム」と「敗者のゲーム」。ウィナーを決めるのか、凡ミスを減らすことなのか、どちらが求められるのかはゲームやプレーヤーによって違う。相場は敗者のゲームだ。
    ⇒市場は、あまりに変数が多く予測困難で、しかも他のプレーヤーの思考や、コントロール不可な主体の行動が環境を左右する。自分がある動きをすれば、その通りにボールが飛んでいく(結果が出る)というものでは決してない。
    ・ディフェンシブな投資とは、間違った行動を避けることである。
    ⇒対象資産について綿密な調査を行うこと、厳格な投資基準を採用すること、低価格なエントリーと十分な「誤りの許容範囲」を設けること、バラ色の予測や不透明感のあるマクロの変動を投資判断基準にしないこと。
    ・「誤りの許容範囲(安全域)」:投資仮説の期待通りにならなかった場合でも、どの程度のリターンになるのか(損失が食い止められるのか)。低価格は誤りの許容範囲を拡大してくれる。
    ⇒熱狂市場では誤りの許容範囲は無視されがちであり、これを求める投資家は投資機会を失ってしまう。それでも良い、ボールを見送ることはリスクとしては容易いのである。
    ・恐怖心をもって投資せよ。自分には常に莫大な知らないことがあり、また質の高い判断を下せても、結果はその党利になるとは限らない。

    ○落とし穴を避ける
    ・たいていの過ちは、分析や知識の不足か、心理的感情的な問題から起こる。
    ⇒前者については個別の資産クラスの知識や分析手法の絶え間ない取得を行うしかない。後者についてはこれまで本書で述べてきたことである。
    ・前者についての典型的なものの一つが「想像の欠如」である。将来予測が、最近のトレンドの反映になってしまうことで、シナリオの範囲や確率が過小評価されている。
    ⇒リスクシナリオの列挙は大切。一方でテールリスクを含めてすべてのリスクに保険を掛けることはできず、必要なリスクでなるべく高いリターンを得るような投資をする。
    ⇒資産の連動性は非常に見落とされやすい。危機が起きて初めて、それについて知ることになる。
    ・後者については、恐怖と欲望の輪の中で、どれだけ自分を律することが出来るかということが大きい要因である
    ⇒強欲の相場の中で、本質価格を上回る価値で買うならば、利益を上げるためには割高資産がさらに過大評価される必要がある。
    ⇒強欲相場の中でインデックスに投資をするのも、割高に資産を買っていると点で、取っているリスクは個別株投資と何ら変わらない。
    ・「今回は違う」という熱狂には、一定の筋の通った理屈が用意されているかもしれないが、「その現象以外に起きうる現象がたくさんあることを見逃している」。
    ・「市場の投資資金の需給バランスや投資意欲がとうなっており、今どの位置にあるのか常に注意を向けよ」。サイクルの上下にそれぞれ動く過程では、信用の拡大と縮小がそれぞれ起こる。
    ・投資においては作為が過ちになることはもちろん、不作為が過ちになることもある。すなわち十分なポジションや必要なリスクをとらないことである。
    ⇒これについては、今の市場がどこにあるかを常に注視し、自分のリスクアペタイト(投資目的)も勘案し、積極か消極のどちらの行動をとるべきなのか熟考すべし。

    ○付加価値を生み出す
    ・多くの投資家はアルファを持っておらず、単にベータが高いので上げ相場で多く儲かったという例は多い。しかし、投資スキルは存在し、故にアルファも存在すると筆者は考える。
    ⇒筆者のアプローチや投資哲学上目座いているものでは、上げ相場ではベータはなるべく1程度、下げ相場では市場パフォーマンスに引っ張られない(ベータは0に近いかマイナス)。

    <まとめ>
    ・本質的価値:バランスシート上の適正な時価資産価格 + その資産(企業)が現金を生み出す能力及びその増大余地。
    ・質が優れた資産を見つけることが投資の目的ではなく、割安な資産を見つけることがアルファの創出になる。
    ・分析が確固たる土台の上になければ、心理的影響に抗ったポジションを持ち続けることは難しい。
    ・「賢明な人が最初にやることは、愚か者が最後にやることである」。とはいえ、サイクルの転換の時期を正確に予測することは難しい。「割高であることは、すぐ売られることを意味しない」
    ⇒だからこそ、今いる場所が相対的にサイクルのどこに位置しており、平均回帰する可能性がどれほど高い・インパクトが大きいのか、知ろうとすることから始めるべし。
    ・優れた洞察力を持つ投資家だけが、未来の出来事の確立の分布図を書くことができ、リスクに見合うリターンを正確に認識することが出来る(市場に乖離があればその機会をつかむ)。

  • 副題は賢い投資家になるための隠れた常識である。その常識を再確認する意味でも良かった。
    この本における投資とはバリュー投資が本筋である。私はどちらかと云えばグロース投資を主流としているので、その点は異なるが、常識は不変だ。以下いくつか自身でフラグが立ったものを記載しておく。
    ・強気相場には三段階のプロセスがある。
    1.まず先見の明がある一握りの人達が、状況が良くなると考え始める。
    2.次に、多くの投資家が実際に状況が良くなっていることに気付く。
    3.最後に、全ての人が情況が永遠に良くなり続けると思い込む。→終焉
    ・賢明な人が最初にやること、それは愚か者が最後にやることだ。
    ・強欲と楽観主義が組み合わさるたびに、人は高いリスクを取らずに高リターンを狙う戦略を採用する。
    ・たいていの場合、資産価格は割高でなおも上昇中、あるいは割安でなおも下落中、のどちらかの状態にある。
    ・逆張りはどんな時でも利益を上げられるアプローチではない。大抵の場合、逆張りするのにふさわしいほど行き過ぎた状態は市場に存在しない。行き過ぎた状態が発生していたとしても、「割高である」ことは「明日、値が下がる」こととは全く別である。割高あるいは割安でも、数年に渡ってその状態を維持したり、更にその度合いを強めたりする可能性が有る。トレンドに逆らうと、手痛い打撃を受ける可能性が有る。
    まぁ目次を見れば著者の言わんとする大まかな事は判る。

  • 前提として、市場平均以上のリターンを目指す人向けの本。

    リスクを過小評価してはいけない。
    大きなリターンを得たということと、リスクがなかったということは全く別問題。大きなリターンを得るために、どれだけのリスクがあったのかを評価する必要がある。

    投資家の心理は振り子のようなもので、市場が好調な時はリスクを極端に軽んじ、暴落時にはちょっとしたリスクへも敏感になり身動きが取れなくなってしまう。その両極端を振り子のように揺れ動いている。

    そういった投資家の真理を十分に理解した上で、過小評価されて割安になっている銘柄を見つけて、お得に買うことが大事。将来有望な良質な企業の株を買うことが必ずしも良い投資になるわけでなく、逆に悪い企業であっても、過小評価されすぎていれば、それはリスクの少ない優れた投資になる。

    優れた投資は理屈ではなかなか説明できない。深い洞察力を磨いていくしかない。

    この本は、10年ほどまえに書かれた本にもかかわらず、投資の本質をついていて、今でも勉強になる内容が書かれている。

    リスクの分散、ディフェンシブな投資についての学びになる。
    ディフェンシブな投資は、攻めの投資と比べて、市場が好調なときにはリターンが少ないかもしれないが、不調なときにこそ堅実な結果をあげることができる。

    ただ結局のところ、一握りの本物の投資家を目指す人以外は、この本に書かれているような高みを目指すのではなく、SP500のインデックス投資を購入して、市場平均をコツコツの積み重ねていくのが最強なのだと思った。
    それが一番のリスクヘッジになる。

  • バフェットが大絶賛した本
    1.二次的思考をめぐらす
    2.市場の効率性を理解する
    3.バリュー投資を行う
    4.価格と価値の関係性に目を向ける
    5.リスクを理解する
    6.リスクを認識する
    7.リスクをコントロールする
    8.サイクルに注意を向ける
    9.振り子を意識する
    10.心理的要因の悪影響をかわす
    11.逆張りをする
    12.掘り出し物を見つける
    13.我慢強くチャンスを待つ
    14.無知を知る
    15.今どこにいるのかを感じとる
    16.運の影響力を認識する
    17.ディフェンシブに投資する
    18.落とし穴を避ける
    19.付加価値を生み出す
    20.すべての極意をまとめて実践する

  • 個人個人で投資スタイルや投資哲学があると思うが、この本はバリュー投資家のディフェンシブに投資する、安全域を持つなどといった思想や哲学を、簡潔で論理的にまとめていると思える良書。

    その一方で、投資における不確実性、サイクル理論、心理的逆張り、リスクに対する理解、忍耐の必要性、心理的悪影響、ランダム性への関わり方など、どの投資スタイルにも通ずる本質的な課題についても書かれているため、主題としている投資に対する姿勢や思想が良くつかめると思う。

  • ウォーレンバフェットがパークシャーハサウェイの社員に配ったとされる名著。
    作者自身もディフェンシブな投資をすることを方針としており、常に本質的価値が相場より低いものを購入し、高い時に売るというシンプルだが強欲と混沌に満ちた市場では非常に大事な指針に対して論じている。
    永遠に上がり続けるということはないので、常に自分がどこにいるのか。サイクルの中、振り子であればどこにあるのかを意識するべきだというのは日常生活にも当てはまる。
    特質すべきことは、許容可能なリスクを特定し、常にリスクを管理することだ。

  • あまり参考にならず

  • これは投資のバイブルになりそう

  • 購入本
    何とバフェットが、絶賛しバークシャーの株主総会で配ったといういわくつきの本
    他の本の内容の裏付けが出来たという感想だとこの本の価値が無いとうたっている。
    詳細、株知識に入力

  • 著名な投資家はメモを残すことがあります。ハワード・マークス自体も貫き続ける投資哲学が存在し、投資とはかくあるべきという部分に関するエッセンスがちりばめられています。

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著者プロフィール

オークツリー・キャピタル・マネジメント共同会長兼共同創業者。
オークツリー・キャピタル・マネジメントの共同会長兼共同創業者。オークツリー・キャピタル・マネジメントの運用資産は1200億ドル以上。ウォートン・スクールにて金融を学び、シカゴ大学にてMBAを取得。ニューヨーク市在住。

「2018年 『市場サイクルを極める』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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