プロフェッショナル経営参謀 (日本経済新聞出版) [Kindle]

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  • ボストンコンサルティンググループ日本支社代表を務めた杉田氏の本。
    経営参謀…というより経営について理解を深めることができるのはもちろん、「議論」を上手に行う方法について実践的に深堀している点も面白かった。参謀と思わず、自分が意思決定者であると考えつつ、トップの意思決定を最上にして言語化と行動まで持っていくのが理想である。

    〇経営参謀とは
    ・経営にとっていま最も重要な問いを設定し、解くべき課題を見極め、議論の材料を経営層に突き付けて意思決定を迫ること。
    ・参謀という立場でも、自らがトップであるかのように「正しい問いとは何か」を考える。バイアスに掛からず、解よりも問の正しさと共通認識を図る。
    ・何度も何度も、繰り返し正しい問いを考え、問いに対して正しい回答を迫る。
    与えられた問いに答えを出すのは仕事ではなく、「自ら正しい問いを立てること」「なぜ今それを解くべきか」を考える必要がある。

    〇ロジックや整合性だけは不十分
    ・論理的思考力やまとめる力だけでなく、イマジネーションやセンスが必要。
    ・ここでいうイマジネーションやセンスは先天的なものではなく、日々の経験から努力と工夫をもって養うものである。
    ▼訓練方法
    ・相手の意見や反論を想像して書き出す→ミクロマクロどちらの視点でも見て、ツリー上にすることで全体像をあぶりだし、論点をまとめる。
    ・他者の知見や視点を活用する。他人の頭を使う。
    ・ディスカッションパートナーをもち、何かあればすぐに議論できる態勢を持つ。
    ・常にメタ認識する。自分は土俵を間違えていないか、みんなが話す土俵は何か、客観的なもう一人の自分が最高のパートナーとなるように意識する。
    ・相手方の立場になって思考を切り替える努力をすることによって、バイアスを排除する努力をする。バイアスにかかっている自己を認識する。
    ・自分なりの仮説を提示して相手の反応をつかむ。自分が正しいと思うわけではなく、相手の反応を掴むことが重要。経営層の反応から気づきを得て、次はこうするべきなのかと先読み・方針転換できるようになるべき。それは直感にほかならないが、経営層相手にテストを繰り返せば直感力が育つ。感覚は生まれ持った能力ではなく、常に仕事のなかで磨かれていく。バイアスに縛られずに反応をみて素直に自分の負を感じ取る。
    ・「もう一度、同じ議論をするとしたら」「あの人の視点にたって振り返ってみると」を繰り返す。

    〇参謀に向かない人※治せる人もいる
    ・トップの言うことを鵜呑みにする。
    ・トップのいきなりの豹変についていけない。
    ・自分がもっていったシナリオや論点を正しいと思っている。
    ・自分の論点に固執し、本来の論点に戻れない、話すべき論点に軌道修正できない。
    ・自分が抱いた疑問を正しいと思っている。
    ・バカと思われたくない故に、バカと思われていると思ってしまう。そして、正当性を示したくなり、更に自身のシナリオや論点に固執する。
    →故に相手のシナリオや論点は頭にはいらない。相手の主張に対する正しい返事や聞き返しもできず、相手が自分の意見を聞いていないと認知してしまう。
    ・答えの出せない問いを議論したまま堂々巡りをする。
    ・自分が見えている世界でものごとを判断する。相手の見ている世界を先に理解しようとしない。
    ・できるやつだと思われたい、賢く見られたいというメンタリティがあり、自分を肯定する言葉しか聞きたくない。

    〇参謀に必要な素養
    ・まだ見ぬ世界に対して好奇心を持っている。
    ・多彩な視点を持つ人に自然に会いに行き、新たな発見ができる人材を常にストックしている。
    ・仮説をやめない。思考の創造性と「粘着性」を持つ。仮説は出せれば出せるほどすごい。
    →低レベル人材と高レベル人材は出せる仮説の数が圧倒的に違う。自身の最初に考えたシナリオに固執しないため、日ごろから仮説を繰り返して出していて数ヶ月でも大きく差が出る。年レベルになると更に差がつく。
    ・きれいな論点整理はもちろん、「ハッ!」としたまとめにできる。
    ・予定調和に陥らない。正しくなければ何度も壊せる。
    ・オーナーシップ(自分ごと)
    ・客観と主観を上手に切り替えれる。社長の頭の中から思考しなおすなど、他人の主観の世界へ侵入することができる。
    ・それは違うでしょ、なぜなら...をスパッと発言できる。

    〇議論が下手な人はここが弱い
    ・論点整理を先にできない。
    ・議論始めから、相手の考えている論点や見えている世界と相違があることを認識せず、論点展開してズレ続ける。
    ・複数の論点を整理できていない。
    ・自分が考えた論点に終始する。
    ・同じ論点や問いしか繰り返さない。
    ・相手が違う問いをしても同じ論点でリアクションしてしまう。
    ・意思決定を難しくしているポイントを理解していない。
    ・自分が認知していない領域に重要な論点があり、自分が認知している領域は周囲からすると重要な論点ではないことを理解できない。
    論点整理ができない、相手の見ている世界を考えずに論点展開する(ホスピタリティ不足)、自己判断した論点に誤りがあると自認していないのが議論下手。

    〇議論を活性化させるコツ
    ・意図がわからない質問には、真意を確認する。
    ・浅い理解に踏みとどまりそうなポイントには、勇気をもって切り込む。浅くさせない。
    ・違う論点に終始する議論ベタには、角度を変えた方法論や意思意図を提示する。
    ・論点がずれたら、そもそも論に引き戻す。
    ・目的がなにかを何度も問いただす。
    ・効果的な材料やフレームワークを持っている、持って行く。
    ・発言がぼんやりしていたり、よくわからない部分があっても「何か意味のあることを言っている気がする」と直感したら、臆せず相手の本音や意図、思考を引き出す
    ・潮目の変化を見定める。この議論は意味ないな、と感じたら今の議論に決着を付けて他論点に移行させる。

    ◯論点整理のやり方
    ・経営者も何を議論すべきかわかっていないことは多い。したがって求められるのは課題と論点を明らかにして、議論の順番と全体像を示すこと。
    ・まず何を明らかにしなければ意思決定にむけて前に進まないか、を考えて、最初の分かれ道になるものを探す。
    ・なんの論点で始める必要があり、それはなぜかを説明できるようにする。
    ・議論の流れ、あり得る意思決定のシナリオを全て想像する。※実際には1→2→3の論点順で進行する想定であっても、1の回答によって2より3を先に議論する順番変更は大いにあり。
    ・意思決定を難しくしているポイントを明らかにして、その論点をあぶり出し示す。
    ・そもそも課題設定(目的設定)があっているかを何度も見直す。
    ・想像する論点が適切か否かは誰にもわからない。しかし、思考の癖はあきらかに固有であるため、自分の癖やバイアスに対抗するためのチェックリストを作成して、洗練させる。
    ・アクションまで想像する。どんな内容であっても基本的には「誰に」「だれが」「いつ」「どのように」が発生するのでそこまで事前に描く。描くが柔軟に変更する。

    ◯その他
    ・そもそも課題設定とはどうやるのか...に悩む人は多い。そこに悩む必要はない、なぜならマニュアルなど存在しないから。大切なのは自身が陥りやすい罠や引き起こす要因を深く理解し、自分なりのチェックリストを作成して実践で仕事を回し続けてセンスを磨くしかない。
    ・答えの出せない問を設定したまま堂々巡りするな。今の時点で答えを出せる問を再設定する。
    ・課題や論点を設定するなら、できるだけ早い段階で自分のスコープの外側にでて知の探索をすることが必須。そうしなければ今ある材料の中でしか設定ができず、適切に成り得ない。
    ・相手との課題や論点のズレを感じたら、どこから考えが違っているのかを細かい粒度で理解すること。
    ・2回以上にMTGが及ぶ場合、次のMTGで議論を前進させるためには何が必要なのかを考える。
    ・「もし、こうなったらどうする?」という二の矢三の矢を考える。
    ・トレードオフを跳躍できる切り口・アイデアを見出す発想を思考する。そのためには単純に圧倒的な多角的学習が必要であり、知識と知恵をつけるしかない。

  • タイトルから、大前研一氏の焼き直しかと思ったが、全く違った。プロフェッショナルとしての心得や、具体的な行動を、具体的に示してくれる良著。問いを突き付ける、細かい粒度まで理解する、違和感を封印しない、などは、常に意識していきたい

  • 経営参謀の仕事の巧拙が、企業の意思決定の質を左右する。経営層を刺激し、より良い意思決定へ導く“プロの経営参謀”に必要な能力を明らかにし、その鍛え方を説いた書籍。

    経営参謀の仕事は、次の3つの要素に集約できる。
    ①解くべき課題を設定し、論点を見極める
    ②意思決定のメカニズムとプロセスを組み立てる
    ③刺激する材料と考えさせる質問を突きつける

    経営参謀に必要な能力には、例えば次のようなものがある。
    ・「見えていない世界」があることを認識する
    自分の経験の中だけで、物事を理解した気にならない。自分が知らない世界があることを面白がる感性を持つ。
    ・マクロの視点からメタ認識ができる
    目の前の事象をマクロの視点から捉え、世の中の大きな流れをつかむ。
    ・両極の見立てができる
    未来のシナリオを描く際は、ダウンサイドとアップサイドの両極のシナリオを考える。
    ・アントレプレナーシップを持つ
    自分ごととして経営に関わる。そうすることで、経営層の悩みや葛藤を、深く理解しようとする視点が生まれる。

    参謀のセンスを高める方法として、次のようなものがある。
    ・仕事の切れ目で振り返る
    1つのプロジェクトが終わったタイミングなどで仕事を振り返り、その経験から学ぶ。
    ・間接学習でアナロジー(応用力)を鍛える
    世間の出来事を、自分の仕事や会社と関連付けて解釈し、示唆を見いだす。

  • 戦略コンサルタントが語るコンサルとしての仕事の進め方論である。論点を設定し、筋道を立てて考える、それもキチンとツリーを作って考え抜くことが重要であることが説かれているが、自分がこの取り組みができていない事に気がつく。しかしコンサルタントのロジカルシンキングの基本動作とも言えるこの作業だが、なかなか難しい。MECEかつ論理の飛躍がないようにこれを組み立てるのは、今後も研鑽が必要だと感じた。
    また印象的だったのが、顧客から反論が引き出せなければ、その会議は失敗だったという考え方。ある種考え抜いて隙のない答えを導くのがコンサルのバリューだと思っていたが、それは必要とはいえ全てではなく、それをクリアした上で議論を巻き起こせるかが重要だということか。

  • プロジェクト毎に必ず読み直す!

    (以下、毎日見直したい事)
    ・経営参謀の仕事は3つ
     – 議論すべき課題と論点の見立て
      – 適切な課題設定と論点の粒度を見極める
     – 意思決定プロセスのデザイン
      – 意思決定のメカニズムを読み、プロセスを組み立てる
     – 議論の誘発
      – 考えさせられる材料と質問の突き付けで刺激する
    ・自分なりの仮説を提示して相手の反応を掴む
     – 「この問いをクリアにするために必要な情報やアプローチはこれだろう」という仮説を持ち、提示する
    ・経営層から反発の言葉が返ってきたら材料として上出来
     – 本質的な議論
      – デジタル化するとしたら自社にとって何が大きなチャレンジになるのか
      – 紙からネットの世界へシフトすることは自分たちにどんな課題設定を迫ることを意味するのか
    ・相手が本当は何を聞きたかったのか、その裏にある真意は何かに目を向ける
    ・トップの思考が進化するスピードや広がりについていく
     –「経営とは、その時々で変化する動的なものである」と認識する
     – 経営トップはいきなり意見を変える、最初とは違うことを言い出す
    ・自分が認知していない領域にこそ重要な論点が潜んでいる
     – 課題や論点を設定するなら、できるだけ早い段階で自分のスコープの外側へ出て、知の探索をする
    ・課題や論点をクリアにする為には、自分と相手の考えがどう違うのかを細かい粒度で理解することが不可欠
     – 相手に聞き返す経験をたくさん積むからこそ、問いを発する能力は研ぎ澄まされる
     – 否定的な言葉を返されたとしても、相手の真意を引き出す
     – わからないことがあれば聞き返す
      – 「おっしゃっている意味が理解できません。もう一度どういう意味なのか教えていただけないでしょうか」
    ・経営にとっての論点は、意思決定する上で潰しておくべき重要な問い
     – 意思決定の為の論点と作業の為の論点はまったく違う
     – 意思決定の為の論点⇒シナリオ⇒作業の構造で考える
      – 何を意思決定するのか?
      – その為には何を明らかにしなければならないのか?
      – それに向けて作業すべきことは何か?
    ・最終的な意思決定に向けて、論点を進化させていく
    ・本当の論点は何かを考え抜く
     – 「意思決定を難しくしているポイントは何か」を考える
    ・論点設定が適切かどうかを見極めるチェックリストを用いる
    ・ シニアへの相談は先にスケジュールを押さえる
     – スケジュールを押さえてから相談する内容を決める
     – 人の時間を使うことへの意識を高める
    ・ミーティングの目的は明確に、コンテンツはシンプルに
     – ミーティングの目的をどこに設定するかを徹底して考える
     – ミーティングで何を勝ち取るのかのゴールを明らかにする
    ・議論の土俵を揃え、トレードオフを見極めておく
     – 何を前提条件にするのかを明確にし、ミーティングの最初に提示できるようにする
    ・意図がわからない質問には質問を返して真意を理解する
     – 本当に聞きたかったのはこういうことでしょうか?
     – 今の質問のポイントはこういうことと理解したら良いでしょうか?
     – すみません、質問の意味がよくわからないのですが、今の発現はこういうことをおっしゃっていますか?
      – 質問の技術以上にメンタルの強さが必要
    ・次のステップに向けての作業手順について合意形成する
     – 自分が今やっていることは、どんな論点に対して答えを出す為なのかを理解した上で作業をする
    ・仕事の切れ目で振り返ってリバースエンジニアリングする
     – もう一度同じプロジェクトをやるとしたらと考えてみる
     – まずは自分で考え抜く
     – 失敗からの学びを次に試してみる
    ・いいことを言うより、いい質問をする
     – 自分は何を知りたくて聞いているのかが伝わる質問をする
     – 質問への回答からどういう示唆を得たいと思っているのかの意図を伝える
     – 質問するときは、常に自分の意図が伝わる聞き方をしているかを意識する
    ・質問されたら一度飲み込んでから答える
     – 会話の中では常に、質問の真意や相手の意図を深くしることを最優先にする
    ・自身がついたときこそ定期診断する
     – 自惚れ、おごり、甘え、マンネリを確認する

  • 参謀とは意思決定者を正しく動かす役割を負い、それを実現するために最適な仕事をデザインする人物
    (引用)プロフェッショナル経営参謀、著者:杉田浩章、発売:日経BPマーケティング、2020年、25-26

    この本は、BCG(ボストン コンサルティング グループ)日本代表の杉田氏によって書かれた。本を読み進めていくうちに、私は、杉田氏による「経営参謀」をテーマにしたセミナーを受講しているような錯覚を覚えた。それは、杉田氏による参謀力のノウハウが、私自身の仕事を振り返る機会にもなったからだ。杉田氏と私の仕事の分野は全く異なるが、杉田氏による経営参謀力のベースは、どの分野の仕事でも通ずるものがある。

    これから私は、「仕事の面白みは?」と誰かから聞かれたとき、「経営参謀力」と答えようと思う。
    参謀とは、何も管理職に限ったものでもない。意思決定者である上司に対して、いかに伝え、いかに上司を正しく動かし、最適な仕事をデザインしていくか。杉田氏も巻末で書かれているとおり、「経営参謀とは、未来のトップリーダーの予備軍である(同書、308)」ことから、全てのワーカーにとって、経営参謀力は、これからのキャリアアップに欠かせない武器となる。上司の与えられた問いに答えを出すのではなく、上司に正しい問いを突きつけ、経営層に意思決定を迫る。組織全体の方向性を決定づける力こそが、参謀力の醍醐味であると感じた。

    本を読み進めていくと、経営参謀の「典型的なコケる10のパターンからの学び」がある。このコケるパターンは、たとえば「トップの指示を鵜呑みにしてそのまま受け入れる(同書、77)」など、日々の仕事で、誰もが経験しているであろう事例に遭遇する。

    また、本書の後半に纏められている経営参謀としての「32の能力」にも学びがあり、日々の仕事に意識して取り組んでいきたいと思う事項ばかりが羅列されている。その中で、特に共感できたのが、その道の専門家や有識者と対面し、会話することによって生きた知識を得ることである。私も、職場を異動するたびに、その道の専門家をさがし、対話を重ね、そこから知識を得て、仕事に生かしてきた。その副産物として、それぞれの道の一線で活躍しているかたたちと懇意にさせていただき、自分の人脈にも幅を広げることができたと思う。

    さらに、参謀としての能力の一つに「変化を面白いと捉える感受性を持つ(同書、248)」というものがある。新型コロナウイルスの感染による新たな生活様式が求められる現在、私達の暮らしも大きな変化が求められる。その変化をチャンスと捉えるか否か。これは、まさに私たちの参謀力にかかっていることだろう。

    惜しみなく経営参謀力のノウハウを教えてくれた杉田氏の本を、多くの人におすすめしたい。

  • ■感想
    当方は一度役員室で仕事をし、あまりパフォームしなかった経験があり、タイトルに惹かれて購入しました。
    本書は、一度大企業の役員と一定期間仕事をしたことがある方であれば感じる悩みを手にとるように言語化して、優先度の高いものから網羅的にまとめられています。
    あの時の、失敗は、「そういうことだったのか!」と改めて復習することができました。
    参謀の仕事をする上でのアプローチを示してくれていますが、当方は、これから経営に携わる仕事をする上で、マインドセットに大いに役立ちました。

    ■要諦
    第1章 経営参謀の仕事とは?
     議論すべき課題と論点の見立て
     実は経営層も何を議論すべきかわかっていない
     もはや経営層だけでは答えを出せない時代
     経営層の答えを想定し、構造化する
     自分なりの仮説を提示して相手の反応をつかむ
     意思決定のプロセスデザイン
     経営層の反応から気づきを得る「直感力」
     先を読んでワークに落とし込む「段取り力」
     議論の誘発
     経営層から反発の言葉が返ってきたら材料として上出来
     経営参謀にはあらゆる局面でセンスが必要

    第2章 センスのない参謀のケース
     トップの指示を鵜呑みにしてそのまま受け入れる
     トップのいきなりの豹変についていけず混乱する
     トップのいうことだけに乗っかり、立場の弱い少数意見を無視
     「いいね、その方向で進めてくれ」を真に受ける
     最初に立てた予定調和のシナリオで押し切ろうとする
     答えの出せない問いをせってしたまま堂々巡りをする
     自分が見えている世界だけで物事を判断する
     馬鹿と思われたくないので、相手に聞き返さない
     自分が抱いた違和感を封印してしまう
     自分のチームメンバーに精鋭ばかりを集めたつもりだったが

    第3章 課題と論点の見立て
     「良い課題設定や論点」を理解するためのポイント
     意思決定のための論点と作業のための論点
     「意思決定のための論点→シナリオ→作業」の構造で考える
     論点の設定は「経営層への質問」とセットで考える
     最初の意思決定を経て、次の論点へと進化させる
     次の論点は、当初の想定から変わっても良い
     意思決定を難しくしているポイントをクリアにする
     これが明らかにならなければ前に進まない。
     同じ論点や問いかけしか繰り返せないときは、全く進化していないと理解する
     ディシジョンツリーの作り方
     ステージ0 スタート地点の設定
     なぜ、これを議論すべきなのかの意思統一が必要。そもそもXXは自社にとって重要だろうか、について。
     次に、議論を進めるにあたって何が一番引っかかるのか。何が論点となるのか、個別のインタビューやブレストで解消しておく。
     このステージ0は正しい論点をセットするための前準備。
     ステージ1 論点の幅出し・視点を広げる
     経営層が議論したいと考えていそうな論点を仮説立てて、可能性のある筋は全てぶつける。
     これにより、何から議論したいか明らかにし、論点やスコープが明らかになる。
     ステージ2 論点の潰し込み・優先順づけ・上位下位の見極め
     質疑を重ねながら、優先順位が低い論点は、時間の無駄として見切りをつける。
     ステージ3 論点の掘り下げ
     それを行う目的、インパクト、方法論など、他社の事例を参考にして、論点を掘り下げる。
     ステージ4 論点の再設定・意思決定に向けた組み直し
     「論点設定が適切かどうか」を見極めるためのチェックリスト
     ①解くべき課題は固有のものか?
     ②それが解けたら次に進むのか?次のアクションにつながるか?
     ③自社にとって意味のある大きな環境変化を意識できているか?
     ④何か社内的あるいは競争上の観点でトレードオフ、または制約のある点をついているか?
     ⑤AかBの究極の選択を迫るものか?
     ⑥「例えばこういうこと」と自分の言葉で言える具体性を持っているか?あるいは間違ってもいいので、「例えば」の仮説を提示できるか?
     ⑦「俯瞰的であってピンポイント」であり、「広く見ているがシャープ」であり、「複雑な事象だがシンプル」であるか?
     ⑧今解くべき課題か?今解ける、答えを出せる課題か?
     ⑨初期に立てる論点そのものも仮説であると理解しているか?
     ⑩そのプロセスを経て解くべき本質的な論点は、ジェネラルなものからより固有なものに深まっていくものか?

    第4章 意思決定シナリオのデザイン
     意思決定のマイルストーンとアプローチの設計
     タイミングマネジメント
     スケジュルは、コンテンツドリブンではなく、タイミングドリブン。全体の時間管理ができなければ、人の力を最大化できない。誰にどのタイミングで何をしてもらえれば自分にはない知恵を引き出して、一人ではできないことをやり遂げられるか。この発想が持てないリーダーに、チームの力をレバレッジできるはずがない。
     チームマネジメント
     本質的な論点はどこにあるか、を見つけるための模索の段階から、論点の仮説ではなく答えの仮説を考え、検証する作業に陥ると、意思決定が遠のいてしまう危険性がある。

    第5章 議論の誘発
     ミーティングの付加価値を高める事前準備
     デルタの大きさ=変化の大きさをミーティングの評価基準に。
     質の高い意思決定を促すファシリテーション
     議論を広げる、と、切るのバランスをとる
     ネクストステップの質を高める「ラップアップミーティング」

    第6章 参謀としてのセンスに必要な能力
     「まだ見えていないものを見たい」という目
    1 「見えていない世界」があることを認識する
    2 多彩な視点を持つ人に直接会い、見えていないものを探索する
    3 新たな発見を「身内化」し、ストックする
    4マクロの視点からメタ認識ができる
     仮説を出し続ける力
    5「思考の創造性と粘着性」で仮説検証のサイクルを回す
     どんな材料を出せば、議論が白熱するか、トライし続ける。
    6ミーティングの終わりまでに次の仮説を作り上げる
     シナリオプランニング的発想
    7 分析に頼りすぎない、過去の分析から未来は見えない
    8 究極のダウンサイドとアップサイドの両極の見立てができる
    9 トレードオフを跳躍できる or→and
    10 二の矢、三の矢を考えられる
     平均的なシナリオを一本線で描く人が多い。アップサイド、ダウンサイドを描く。
     夢のあるシナリオとは、クリエイティブである。ダウンサイドでも、さらに深掘りする。
    11 可能性の筋としての仮説を誰よりもたくさん作れる「想像力」と「創造力」
    12 他人の頭を使うことがうまい。マイノリティ視点に敏感。
     はっとさせることへの意欲
    13 「きれいな整理にとどまっていないか?」を意識する
    14 説明資料は「何を勝ち取りかいか」の目的によって変える
    15 平均点より一点豪華主義を目指す
    16 予定調和に陥らない。何度でも壊して、作り直す
    17 土俵を合わせて、流れを読む
     オーナーシップ
    18 自分ごと化する
    19 客観より主観。「自分が社長だったら」と憑依できる
    20 自分自身の動機付けがうまい
     自分自身を動機付けするとは、ワクワクする、痺れるといった感情が湧き上がること。
    21 「前例踏襲では気持ち悪い」という感覚を持つ
     人の心の動きを読む
    22 相手の特性に合わせて人を動機付けするのがうまい
    23 「I care you」を伝えて、同じ船に乗っている感覚を共感する
    24 傾聴力が高い
    25 相手を怒らせることを恐れない
    26 自分中心の押し付けがましさを戒める
    27 まるっと飲み込める
     変化を恐れない。宙ぶらりんな状態に耐えられる
    28 思い切って見切りや損切りげで切る
    29 先入観や思い込みを捨てられる
    30 uncomfortableな状況を受け止められる
    31 変化を面白いと捉える感受性を持つ
    32 アントレプレナーシップを持つ

    第7章 明日からでもできるトレーニング
     まずは自分なりの学び方パターンを習得する
     振り返った結果、同じパスしか描けないなら、「成長できていない」と自己評価する。
     自分は何を知りたくて聞いているのか、が伝わる質問をする

     人から学ぶ機会を増やす
     質問していい相手をたくさん作る。そのためには自分も付加価値をあげなければならない。
     決めごとを定めて必ずやり続ける
     メンタルな耐性がつく機会から逃げない
     そして、最後は「定期診断」

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著者プロフィール

早稲田大学ビジネススクール教授。東京工業大学工学部卒。慶應義塾大学経営学修士(MBA)。株式会社日本交通公社(JTB)を経て1994年ボストン コンサルティング グループ(BCG)入社。2006~2013年BCG日本オフィス責任者、2016年~2020年同日本代表、2023年より同シニアアドバイザー。2020年より早稲田大学ビジネススクール教授。コンシューマー系ビジネス、消費財・流通、メディア・通信、産業財等の業界を中心に、企業変革、デジタルトランスフォーメーション、グローバリゼーション、新規事業開発、組織・ガバナンス改革、マーケティング・営業戦略等のコンサルティングを数多く手掛けた。主な著書に『リクルートのすごい構"創"力』『プロフェッショナル経営参謀』『BCG流戦略営業』(いずれも日本経済新聞出版)など。

「2023年 『10年変革シナリオ 時間軸のトランスフォーメーション戦略』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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