2020年6月30日にまたここで会おう 瀧本哲史伝説の東大講義 (星海社 e-SHINSHO) [Kindle]

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  • audiobookのトライアル申し込みをして、「嫌われる勇気」に続いて、オススメ本の本書を選択した。本書も非常に興味深いと感じながら、着手していなかった本の一冊だった。

    「嫌われる勇気」が対話形式の本であることから、audiobookの利点が生かせるコンテンツの一つであったが、本書もまた講義であるということは、audiobookの利点が生かせる有力なコンテンツの一つである。すなわち、講義を生で聴いている感覚で読めるのであるから。

    そもそもこのaudiobookの開発元であるオトバンク社は、天才投資家であって、本講義の講演者である瀧本哲史氏が投資先として選択したベンチャーであった。現在コロナ禍の中で急激な成長を遂げる企業の一つだ。

    オトバンク社の創業者上田渉氏の起業の動機は、緑内障で視力を失いつつある祖父がいたことだったそうだが、天才投資家はその動機に着目したという。

    第一檄 人のふりした猿にはなるな
    第二檄 最重要の学問は「言葉」である
    第三檄 世界を変える「学派」をつくれ
    第四檄 交渉は「情報戦」
    第五檄 人生は「3勝97敗」のゲームだ
    第六檄 よき航海をゆけ

    本講義のターゲットは学生であり、若手社会人である。それは瀧本氏の選択である。彼は次世代に向かって語りかけるのである。その理由も本講義の中で語られている。

    「第一激」のタイトルはやや挑発的なタイトルだ。ここでいう「猿」とは、「自分の頭で考えない人間」の代名詞として用いた言葉のようだ。

    「自灯明」という言葉で、「自らが灯となれ」というメッセージを送る。結論は「自分の頭で考えよ、そして行動せよ」だ。

    共産主義による思想統制下において、コピー機をばら撒くことにより、自由思想の拡大環境を構築したジョージ・ソロスという人物の活動に、瀧本氏自ら感銘を受け、出版の世界に関心を持ったという。

    世の中を変えていくには、例えば出版のようなメディアも有効であるが、手段とともに、ターゲットの重要性を訴えている。彼は次代を変える可能性を持つ青年世代に語るという方法をとる。

    それは「第三激」で語られる「パラダイムシフト」という言葉の捉え方によるもの。この言葉を瀧本氏は、「世代交代」と捉える。思想の潮流が変わる最も大きな要因は、世代交代によるものだと。

    この考えに則って行われている瀧本氏の実践の一つが本講義であったとも言える。

    「第二激」では、「言葉」を重視していた。「右手にロジック、左手にレトリック」という言葉は印象的であった。特にレトリックの視点(いかに魅力的に伝えるか)の重要性を強く訴えている。

    マッキンゼーで培われた瀧本氏のコンサルティング能力は、対企業だけでなく、「若者よ強く成れ」という人間コンサル的な発想で、若者たちに武器を持たせ、交渉力を鍛えていく。そうした次世代層の人間教育がやがて世界を良い方向へ変えていくという、もっとスケールの大きなコンサルティングにもつながっていくようである。

    「第四激」では、その「交渉術」の極意を述べている。

    「第五激」では、多様性を認めることの重要性について述べている。バックグラウンドこそが武器であるという視点は面白い。オトバンクの創業者の起業の動機となったバックグラウンドは、他にはない独創性の強みを含んでいるということだ。

    「第六激」で、「盗めないもの」=「特殊なバックグラウンド」「自分しかしていない体験」と述べている。

    最近、老眼で活字が見えにくくなってきた自分にとって、audiobookは非常にありがたい読書ツールであると感じる。オトバンクの創業者の着眼点が生かされていると感じられる。

  • 自分を変えたい。自分の人生は自分で決めたい。自分の頭で考えて、行動したい。会社の悪口を言うのではなく、悪いなら変えていきたい。
    学歴的にもスキル的にも劣る自分が部門にいる意味は、同じような種類の人間の中で異分子。このまま何もしなくても足切りの対象になるのは明白なので、属性の違いを武器に、失敗を恐れず使用自分の頭で考え挑戦しよう。設計部門で実施する管理の仕事はニーズを生み出すところから始まるので、まさに自分のやり方次第で仲間を巻き込み、革命を起こす。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    ・自分の人生は、自分で考えて、自分で決める。
    ・正解が書いてある本を探したり、政界を言ってくれる人を探したりするな。自分で決めろ。
    ・正しい選択をし続ければ、いつか世の中は変わる
    ・弱者こそ、交渉が武器になる
    ・仲間を探したり増やしたりする際に重要なのは自分とは違う属性の人間を集めること
    ・挑戦は打率をあげること
    ・見込みのある人を支援する。目的のためにつながれ。
    ・僕たちはお互いに自分の判断でリスクを取っている、ということに対する敬意

  • 言葉は武器。論理と修辞。ソロスは共産主義国にコピー機を配り、言論が広がることで体制が崩れた。武器となる言葉を鍛える。

    パラダイムシフトは世代交代。天動説が地動説に、学会の考え主流が変わったのは、世代が変わったとき。

    サイボウズのソフトは、他社製より遅いしださい。けど、購買担当者のSEは評価した。めちゃめちゃシンプルだけど、よくわからんおじさんから山程質問が来ることは避けられるくらいシンプルな構成だったから。本音はグーグル使えよだけど、めんどくさいからサイボウズを選んだ。”意思決定者”によって、選好は大きく変わる。

    アイデアを話したらパクられると思っているレベルなら、自分がその事業をやる理由がまだ薄い。似たようなアイデアを持っている人は山程いる。同じアイデアを持っている人に、「こいつの人生を考えたら、このアイデアではもう勝てない」と思われるように。

  • とあるWeb制作会社のブログでの「大学生が読むべき本ランキング10選」という記事を読み、その中で一番気になった本書を読んでみた。

    自身の学生時代にはいわゆる自己啓発系の本を読んだことは無く、あやうくゼミの単位を落としかけた運命の日の朝も、手に入れたばかりの森見登美彦の「四畳半神話大系」を至福の気分で読んでいたり、大学の図書館で見つけたマヌエル・プイグの「このページを読む者に永遠の呪いあれ」を皮切りに南米文学の醸す味わったことのない味に魅了されたり、サークルの先輩から教わったカポーティに激ハマりしたり(ここまで思い出語り)、と今とさほど変わりない読書嗜好と生活を送ってた20代なりたての自分には、このエンジェル投資家の熱意と厚意が伝わっただろうか?と思うと、

    たぶん理解できなかっただろうな、と想像できる。

    ここで書かれていることは今の自分が社会人/会社人になって十余年を経て「??」とか「・・・」と思っていたことを起点に考えて「!!」となることばかりだった。
    なので大学生の時にこういう本を読まなくても別に良かったとも言えるが、そもそもこの講義録の時点で出席している学生たちは、「??」や「・・・」の問題意識を持っている人たちなんだなあ、すごいなあ。。

    いつか来るその日のために参考までに10選のランキングを以下に記す。

    10位 人生は攻略できる
    9位 2020年6月30日にまたここで会おう 瀧本哲史伝説の東大講義
    8位 20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義
    7位 人は話し方が9割
    6位 残酷すぎる成功法則
    5位 苦しかった時の話をしようか
    4位 ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代
    3位 嫌われる勇気
    2位 FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
    1位 夢をかなえるゾウ

  • twitterか何かで話題になって出会ったのだが、最高の神講義だった。瀧本先生に出会って人生が変わったという人も多いのではないかと思うぐらいのエネルギーを感じた。

    まさか8年後に瀧本さんが亡くなっているというのも衝撃だったが、Bon voyageの精神は引き継いでいきたいと思う。

    自身はaudiobookで聞くことをオススメしたい。
    2020年6月30日にまたここで会おう 瀧本哲史伝説の東大講義
    https://audiobook.jp/product/258623

    (一部noteでも無料記事公開されてます。)
    https://note.com/doourhomework/n/nb4572987819b

    # 心に残ったポイント
    - ものいう道具になるな! => 自分で考えて行動せよ。
    - バイブル、答えなんてものはない => 自分で考えよ
    - カリスマモデルより、武器モデル。 (cf. ジョージソロスのコピー機の話)
    - 教養: 様々な考え方の軌跡と、表現を学ぶ
    - まず、学ぶべきは言語: ロジックとレトリック
    - ケースメソッドのpower
    - ピラミッド型より相互依存型への変換
    - 現代のルール: 資本主義、自由主義、民主主義


    ## 交渉術は大事
    - アンカリングに気を付けろ
    - 交渉は情報戦。相手のニーズのヒアリングを一番に
    - 論理的じゃない相手は猿だと考えよ


    ## 政治の話
    - 地動説になったのは、天動説信者が死んだから

    ## ビジネスの話
    - 仲間を見つけろ
    - 必要なのは自分とことなる他者 (弱い力、多様なコミュニティ)
    - 盗まれないのは人生。アイディアに価値はない。
    - チームならより真似されにくい


    「Bon Voyage」= 良き航海を
    独立した個を信頼しつつ、それぞれの航海の無事を祈る船長同士の挨拶

    Bon Voyage!!!

  • 学生向けのお話ですが、いろいろな人生の可能性について大きな力をもらいました。迷える大学生だった頃の自分に、このような「檄」を飛ばしてもらえる機会があったら何かが変わっていたでしょうか。
    2020年6月30日には彼はこの世にいないという衝撃。この熱量は、「時」に限りがあることをしっていたからなのでしようか。
    若いからどうの、老人だからどうのというより、今急いてやるべきことを真剣に考えなければいけないと強く思ったのでした。

  • 学生のときにぜひ受けたかったと思える講義。
    激しく納得するポイントは、

    ●国家の本来の姿は「皆が自分で考え自分で決めていく世界」をつくるということ。それが資本主義、自由主義、民主主義の前提。
    →有名なケネディ大統領の演説に「Ask not what your country can do for you; ask what you can do for your country.」というもにがあるが、そう思う国民がいればいるほど、その国に明るい未来があるとおもう。

    ●学びとは答えを知ることでなく、「新たな視点」を手に入れること
    →だからAIがどんなに発達しても、人の価値は残るし、学ぶことはますます重要

    ●下の世代が正しい選択をしていけばいつか必ず世の中は変わる

    ●多様性を認め、自分と違う価値観に寛容な社会の方がイノベーションが起きやすい
    →だからもっと日本を多様性に寛容な場所にしたい。

  • 今年、惜しくも47歳という若さで他界した瀧本さんが2012年に東大で行った講義を単行本化したもの。2020年6月に再開を誓っていたのに、その直前に亡くなってしまうなんて、なんだか運命的なことを悟っていたのかもしれないと勘繰ってしまう。。


    パラダイムシフトは世代交代。
    経験は誰からも取られない。経験から得られた思いが行動への熱量につながる。アイデアは誰でも考え付く、結局はその実行力で差が付く。

  • とにかく行動と、それを一緒にする仲間が大事。行動をベンチマークにしていきたい
    交渉術はあまり参考にならなかった。行動経済学などを勉強した方が納得感がありそう

  • 星3.5 講義の内容がそのまま語られてる感じでとても読みやすい。2時間くらいで読める。do your homework 、自分で世界を変えよ、自分で考えよという本。 やる気、モチベーションが上がる自己啓発本。絶対読んだ方がいいバイブルとかもない、それぞれ違う。理想の自分と世の中に価値を発揮できる自分どっち取るかだと、価値を発揮できる自分、自分の人生は自分で考えて自分で決める、などが個人的に記憶にあるメッセージな気がする。

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著者プロフィール

京都大学客員准教授、エンジェル投資家、教育者。1972年生まれ。麻布高等学校、東京大学法学部を卒業後、大学院をスキップして直ちに助手に採用。専攻は民法。任期終了後は学界に残らず、マッキンゼーへ入社。3年で独立し、多額の債務を抱えていた日本交通の経営再建などを手がけながら、エンジェル投資家として極めて初期段階の企業を15年以上にわたって支援し続ける。京都大学では教育、研究、産官学連携活動に従事。「意思決定論」「起業論」「交渉論」の授業を担当し、人気NO.1若手教官として「4共30」講義室を立ち見に。各界において意思決定を先導するリーダーを育てることを目標に、選抜制の「瀧本ゼミ」を主宰。著作物やディベートの普及活動を通して、次世代への教育に力を入れていた。2019年8月10日永眠。

「2022年 『瀧本哲史クーリエ・ジャポン連載集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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