三頭の虎はひとつの山に棲めない 日中韓、英国人が旅して考えた (角川書店単行本) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 『英国一家、日本を食べる』など日本にまつわる著書を含め、各国を訪れた経験をもとに多数のエッセイを発表している英国人の著者が、本書では「東アジアの国々はなぜ良好な関係を築けないのだろうか?」をテーマに、日本→韓国→中国→台湾を旅しながら各国の様々な立場の人々との対話し、歴史と文化に触れることで、その回答を得ようと模索します。著者はプロローグにおいて、その原因をアメリカに求める仮説を立てますが、はたして。

    サブタイトルなどから、一見して旅行記としても楽しめるように見受けられる本書ですが、紀行的な要素は控えめで、その辺りを楽しみにされている方は注意です。本書の骨子は、文献と戦争に関わりの深い土地を訪ねることで東アジア近代の歴史を確認したうえで、現在各国に暮らしている歴史の専門家から通りがかりの無名の一般人まで多く含んだ人びとが、他国についてどのような想いをもっているかを探る要素にあります。

    通読しての印象は、紀行文としての要素、戦争を中心とした東アジア近代の歴史、著者が訪ね歩いた各国の人びとの見解、のいずれをとっても目新しさは多くありませんでした。その主な原因として考えられるのは、本書の出版も著者の母国語である英語版が先行しているように、そもそも日本人ではなく東アジア近代の歴史と現状に興味をもつ欧米人を主な対象読者として想定しているためではないかという点が挙げられます。東アジアの事情を知らない人びとでも基本的な情報を含めて理解できるように作られているがために、日本もしくは東アジアに暮らす人びとにとっては既知の情報をなぞる部分が多い内容で構成されているのでしょう。そのため、本書をもっとも有益に読めるのは東アジア事情には疎く、かつ興味のある他地域の読者ではないかと思えます。

    戦争を中心とした東アジアの歴史を扱うエッセイですので、著者の見解は気になるところです。詳細は申し上げませんが、一部を示すと、親日家でもある著者は基本的に日本に対して終始、同情的な立場でですが、同時に、例えば日本の政治家の靖国参拝には首を傾げている、といったところです。手っ取り早く総合的な見解と著者のスタンス、結論のみを知りたいのであれば、最終章の「第三十六章 東京」参照です。

  • 日本人からすると、別段そんなに新しい話題や見解があるわけでもないように思う。けど、この内容が英語をオリジナルに出版されているのは良い。原著を読みたい。

  • 「英国一家日本を食べる」の著者としてしられる著者の本は翻訳されているものは全て読んでいます。
    現在、朝日新聞でも主に食に関するエッセーを連載しています。最初の頃は異文化体験をした驚きを綴る文章がおおかったのですが、インドにヨガ修行にいったり、居住地をデンマークにうつしてからら何がよい人生かを探求するように変わって来たように思われます。
     そして最新刊は、日中韓が仲良くできないのはなぜかという疑問を携えて、この3カ国を旅しながら考えたエッセイとなっています。
    日本ではペリー来航の地、久里浜や極右ユーチューバーや嫌韓本の著者と会い、日本における嫌韓、嫌中国の芽を取材します。また韓国にいってはさまざまな人に取材し、韓国には嫌日本という同調圧力があることを明らかにしていきます。従軍慰安婦についても取材しており、積極的です。日本滞在が長いので日本人的なものの見方になっってしまうのは仕方ないでしょう。日本が韓国にしたことはイギリスがアイスランドや印度にしたことより少しましという意見もありますが、被害を受けた方からしたら程度の問題より、被害を受けたことを忘れられないということでしょう。実際何があったかより、忘れないようにすることが政治の道具となっていることが問題のような気がしました。
     一方、中國でも日本軍の悪行についての記録する博物館などがあり、中でも南京大虐殺についてはこれからも両国にとって大事な出来事でしょう。一部の人が南京大虐殺がなかったあるいは小規模であったというのは残念です。先日、原爆はなぜ悪ではないのかとく本をよみましたが、その中で人がものごとを理解するためには理解できるストーリー(語り)が重要との話がありました。
     例えば、韓国には日本人が近代化を進めたというストーリーを理解する素地がなく、中国には共産党のおかげて私たちがあるというストーリーしかないのです。
    そのなかで軍国主義の日本がそれぞれ悪者として役割りをになっているということでしょう。
     過去は変えられないのだから、対話が大事ということでしょう。

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著者プロフィール

英国サセックス生まれ。トラベルジャーナリスト、フードジャーナリスト。2010年「ギルド・オブ・フードライター賞」受賞。パリの有名料理学校ル・コルドン・ブルーで一年間修業し、ミシュラン三つ星レストラン、ジョエル・ロブションのラテリエでの経験を綴った"Sacre Cordon Bleu"はBBCとTime Outで週間ベストセラーになった。

「2020年 『三頭の虎はひとつの山に棲めない 日中韓、英国人が旅して考えた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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