三頭の虎はひとつの山に棲めない 日中韓、英国人が旅して考えた (角川書店単行本) [Kindle]
- KADOKAWA (2020年9月25日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (436ページ)
感想・レビュー・書評
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『英国一家、日本を食べる』など日本にまつわる著書を含め、各国を訪れた経験をもとに多数のエッセイを発表している英国人の著者が、本書では「東アジアの国々はなぜ良好な関係を築けないのだろうか?」をテーマに、日本→韓国→中国→台湾を旅しながら各国の様々な立場の人々との対話し、歴史と文化に触れることで、その回答を得ようと模索します。著者はプロローグにおいて、その原因をアメリカに求める仮説を立てますが、はたして。
サブタイトルなどから、一見して旅行記としても楽しめるように見受けられる本書ですが、紀行的な要素は控えめで、その辺りを楽しみにされている方は注意です。本書の骨子は、文献と戦争に関わりの深い土地を訪ねることで東アジア近代の歴史を確認したうえで、現在各国に暮らしている歴史の専門家から通りがかりの無名の一般人まで多く含んだ人びとが、他国についてどのような想いをもっているかを探る要素にあります。
通読しての印象は、紀行文としての要素、戦争を中心とした東アジア近代の歴史、著者が訪ね歩いた各国の人びとの見解、のいずれをとっても目新しさは多くありませんでした。その主な原因として考えられるのは、本書の出版も著者の母国語である英語版が先行しているように、そもそも日本人ではなく東アジア近代の歴史と現状に興味をもつ欧米人を主な対象読者として想定しているためではないかという点が挙げられます。東アジアの事情を知らない人びとでも基本的な情報を含めて理解できるように作られているがために、日本もしくは東アジアに暮らす人びとにとっては既知の情報をなぞる部分が多い内容で構成されているのでしょう。そのため、本書をもっとも有益に読めるのは東アジア事情には疎く、かつ興味のある他地域の読者ではないかと思えます。
戦争を中心とした東アジアの歴史を扱うエッセイですので、著者の見解は気になるところです。詳細は申し上げませんが、一部を示すと、親日家でもある著者は基本的に日本に対して終始、同情的な立場でですが、同時に、例えば日本の政治家の靖国参拝には首を傾げている、といったところです。手っ取り早く総合的な見解と著者のスタンス、結論のみを知りたいのであれば、最終章の「第三十六章 東京」参照です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本人からすると、別段そんなに新しい話題や見解があるわけでもないように思う。けど、この内容が英語をオリジナルに出版されているのは良い。原著を読みたい。