トナカイに生かされて シベリアの遊牧民ネネツ (月刊たくさんのふしぎ2020年11月号)

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  • 福音館書店
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  • Amazon.co.jp ・雑誌 (40ページ)
  • / ISBN・EAN: 4910159231100

感想・レビュー・書評

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  • トナカイに生かされて シベリアの遊牧民ネネツ ー 月刊たくさんのふしぎ
    2020年11月号。字の大きさは…大。

    今月号の特集は、ロシヤ連邦北西部の北極に近いシベリアのツンドラ地帯で、トナカイと暮らす遊牧民ネネツです。

    夏は、トナカイの餌となる草やベリーの実を求め、冬は雪の下にあるコケを求め、テントで寝泊まりしながらトナカイ橇で移動する。ツンドラ地帯では木も生えず、作物も収穫できない。遊牧民ネネツが暮らすのは、ネネツ自治管区です。人口は、4万1千~5千ほど。

    遊牧民ネネツは、全てがトナカイと一緒です。収入は、トナカイを売り。そのお金で、食料、塩、携帯電話、ノートパソコン、燃料などを買い。食事は、トナカイを食べ。全てがトナカイと一緒に暮らしています。

    【読後】
    モンゴルに遊牧民がいるのは知っていましたが、シベリアの北極に近い所にトナカイと生きる遊牧民がいるのは知りませんでした。取材した家族9人の食事は、幼子が殺したばかりのトナカイの赤い生肉を食べ、生の血を飲むのには、ビックリしました。血は、栄養価が高く、美味しいようです。

    家族全員が、トナカイを解体して大人も子供も、幼子も自分用のナイフ (私たちが自分用の箸を持つのと同じ)を持ち、肉をむさぼり、血を飲みます。皮は、自分たちで服や靴に縫い上げ残らず使います。肉や内臓は、保存食として肉団子を作ります。これが高級なハンバーグのように美味しいと。
    世界には、本当にいろんな人たちがいます。
    2021.04.10読了

    ※シリーズの感想と読了日
    うれし たのし 江戸文様 (月刊たくさんのふしぎ2021年1月号)  2021.02.18読了
    https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/B08NSB2DN9
    おんまつり (月刊たくさんのふしぎ2020年12月号)  2020.12.07読了
    https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/B08L1KF7GY
    ポリネシア大陸 (月刊たくさんのふしぎ2020年5月号)  2021.04.07読了
    https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/B085RTT76V

  • シベリアでトナカイと暮らす遊牧民ネネツ。過酷な地ツンドラを生き抜くには、トナカイは移動手段、衣食住、生活資金、全てにおいて欠かせない存在。人間にとって大切なものは何か考えさせられる。

  • すっかり現代文明に侵食された暮らししか知らない私には、ここに出てくる子どもたちの笑顔がとっても輝いて見える。もちろん不自由さもあると思うが、生きることへの満足度が高いように思える。厳しい自然の中で、家畜となったトナカイを飼育しながら、そこから全ての営みを紡いでいく姿に圧倒された。電気や水道などのインフラが整い、何もかもが与えられ過ぎた人間たちが失ったものは大きい。実はとてつもない損失なのかもしれない。

  • 『草原が大好きダリアちゃん』を読んで
    遊牧民ネネツ族に興味を持ち、
    こちらも読んでみました。

    写真が多く、
    より一層暮らしぶりを知ることができて良かったです。
    トナカイの解体や、
    生の血を飲む姿などのシーンまでもあり、
    あまりに詳細すぎて、個人的にはちょっと圧倒されてしまいましたが…
    そのくらいリアルな生活を垣間見ることができる写真絵本です。

    本当に、すべてがトナカイと共にあり、
    トナカイに支えられて生きているネネツの人々。
    心からトナカイを大切に想い、愛をかけているのを深く感じます。

    厳しい自然を相手に、
    生き抜く知恵を携えて暮らす姿は、
    あまりにも自分の暮らしとは違いすぎていて、
    大変すぎると思ってしまうのだけれど、
    「自分は世界で一番幸せ」と話すその言葉の深さ、
    生活への愛の深さに、しみじみと感動します。
    不自由なく便利な暮らしをしていながらも
    満たされないでいたり、不満に思う自らの暮らしを思いながら、
    のびやかに生き生きと暮らすネネツ族に
    ただただ感服するばかりです。
    本当にシンプルで大切なことが
    ここから見えるように感じる、そんな景色でした。

  • あまりにも価値観や文化が違う。彼らは不便で過酷な環境で娯楽に乏しく思い、正直初めはかわいそうと感じてしまった。ところが彼らは、ツンドラが最高で幸せと言い切っていて、私の狭い価値観では計り知れない世界に生きているのだと驚かされる。
    トナカイの皮で作る民族衣装の色鮮やかな柄はどうやっているのか、6歳になったら親元を離れて宿舎で暮らしながら子どもたちはネネツの暮らしをどう感じるのか、夏に帰省するとき遊牧民はどうやって親のいる場所へ辿り着くのか、まだまだ疑問がいっぱいです。
    小学校低学年の息子が理解するのはまだ難しいけど、興味を持って聞いていました。
    私たちは、便利で娯楽が多い社会に生きているゆえにストレスが多く、それとは真逆の彼らの暮らしは感慨深く衝撃的でした。

  • 放牧民の日々の生活が見えてくる。長倉さんの眼差しが素敵なのです。

  • ツンドラ地帯にトナカイと暮らす遊牧民ネネツ。
    ローバー一家はほかの2家族と協力し、4000頭のトナカイと共に移動しながら暮らしている。
    その日々の生活の自由さとたくましさ!
    衣食住全てを自分たちの手で生み出していることに感心しながら読んだ。
    トナカイを家族のように可愛がり、それを大事に食して、その皮でテントを作ったり、民族衣装やブーツを作る。トナカイを売ってお金にして、ノートパソコンも!持っている。
    パソコンから街の暮らし世界の流れを知るのであろうか。それでも、このツンドラの暮らしが1番好きで“幸せ“だと語るローバー家のお母さん。それは心底そうなんだろうと、広大な自然の中での家族の暮らしを見て思った。
    長倉さんもおっしゃっていたようにカッコいい!

    6歳以上の子どもたちは親元を離れて、町の学校で寄宿舎生活を送るとのこと。ロシア式の教育が必要なのだそうだが、その子たちが大きくなってどのような生活を選択するようになるのか、それもとても興味深い。

  • シベリアの遊牧民族の暮らしに密着取材した写真絵本。写真がうつくしい。
    まずは極地の過酷な気候の中、衣食住すべてにわたってトナカイが活用される伝統的な暮らしぶりにおどろかされる(トナカイの売買を通じて市場に流通している商品や文明の利器も使ってはいるが)。トナカイとともにある自分たちの暮らし方に満足している様子がうらやましいような、しかし都市生活のぬるま湯に慣れきった身でいまさらまねたりそこにとびこんだりするには勇気がいるような…いきものを屠ってそのすべてを自分が生きる助けにするという根本的な行為を生まれたときから目の当たりにし見様見真似で身につけながら育った人びとから見ると、わたしたちの当たり前の暮らしはどうみえるのだろう? 学齢期の子どもは親元を離れて学校生活を送る中でいろいろ思うことがあるのだろうと想像した。
    国籍としてはロシア人ということになるのだろうけれど、いざとなったら、はっきりいって国や世界で何がおころうと生活にほとんど影響を被ることなく淡々と生き続けていけそうで(もちろん、旧ソ連やロシアの市民としての苦労もないわけじゃないのだろうけれど)、その自立した強さがうらやましい気もする。

  • シベリアのツンドラ地帯に住む遊牧民ネネツ。
    ホストファミリーと暮らした数カ月を写真と文で紹介する。

    愛情深いトナカイと暮らすのは、やはり愛情深い人たちだ。
    トナカイは家畜として飼育しているものと、ペットとして可愛がっているものがある。
    動物たちにも厳しい寒さの中で、トナカイは貴重な食料・移動手段・生活を支えるものだ。

    潰したトナカイは、チモール肉も皮も健も、あまさずに利用される。
    町にいけば、売ったお金で、パンやお茶や生活必需品を揃える。

    あっという間にたてたり解体できるテントはトナカイの皮を張ったものだ。
    美しい民族衣装は暖かく色鮮やかで、これもトナカイの毛皮で出来ていて、今も好んで着られている。

    子どもたちは大切にされ、夏の草原でサッカーをしたりベリーを摘んだり。

    「自分は世界で一番幸せ。ツンドラで暮らし、トナカイを飼って、家族がいて、孫がいるのだから。」

    表紙の写真の女の子はダリアちゃん。
    裏表紙では、草原に機嫌良くにっこりと空を見あげて寝ころんでいます。
    なんだか、こちらも幸せのおすそ分けを、もらいました。

    トナカイの角、まだ皮をかぶっているものと、角のみに、なっているものがある。
    Ⅰ年ごとに生えかわるとのこと。日本の鹿の角と同じ伸び方なのかも。

  • 「自分は世界で一番幸せ」……シベリアにトナカイと移動しながら生活をする遊牧民「ネネツ」の人たちがくらしています。ひとつの家族で飼うトナカイは1200頭にもなります。トナカイの肉を食べ、トナカイの皮で着るものやテントを作り、トナカイを売ってお金も稼ぐ、ネネツの家族をおいかけた写真絵本です。

    読んであげるなら ―
    自分で読むなら 小学中学年から
    (福音館HP)

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著者プロフィール

1952年北海道釧路生まれ。写真家。同志社大学法学部卒、通信社勤務を経て1980年以降、フリーランス・フォトジャーナリストとして世界の紛争地を精力的に取材した。今日まで南洋から東南アジア、中東、シルクロードを踏破し、直近ではシベリアの少数民族ネネツなど極寒地の人々と暮らしを撮った。代表作にアフガニスタン抵抗運動の指導者マスードに密着取材した「マスード 愛しの大地アフガン」により国際的に高い評価を受け国内では第12回土門拳賞を受賞した。他に「エルサルバドル 救世主の国」(講談社出版文化賞)など著書、写真集多数。

「2020年 『女、美しく わが旅の途上で』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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