MORE from LESS(モア・フロム・レス) 資本主義は脱物質化する (日本経済新聞出版) [Kindle]
- 日経BP (2020年9月24日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (422ページ)
感想・レビュー・書評
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「経済成長すればするほど資源も消費する」というこれまでの資本主義は終焉し、これからの資本主義は「経済成長が必ずしも資源消費に直結しない」という「第二の啓蒙主義」ともいうべき新しい時代になったと主張する著作。
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人類は大量の資源を消費して経済成長を遂げてきた。しかし今日、より少ない資源からより多くを得られるようになった。この「モア・フロム・レス」という新たな現実について解説する書籍。
アメリカなど先進国では、1970年頃まで、資源の消費量が経済成長を上回るペースで増加した。そのため、資源はいずれ枯渇すると懸念されていた。
しかしその後、経済成長が持続しているにもかかわらず、資源消費量は減少に転じた。すなわち「脱物質化」という現象が進行しているのである。
この脱物質化を引き起こす要素は、次の4つである。
①資本主義
資本主義下では、企業は利益を挙げるために、原料の使用量を減らしたり、資材を効率的に活用しようとしたりする。
②テクノロジーの進歩
既存のテクノロジーやイノベーションを組み合わせることで、脱物質化を促すような斬新かつ有益なものが生まれる。
・スリム化(農家の土地、水、肥料の使用量を減らして収穫量を増加)
・置換(石油→天然ガス)
・最適化(飛行機の座席の利用率の最大化)
・消滅(電話、ビデオカメラ、レコーダー→スマホ)
③市民の自覚
大気汚染などの公害が悪影響をもたらすことを市民が認識し、何らかの措置を求めて声を上げる。
④反応する政府
上記のような市民の声に、政府が素早く反応する。そして、公害を引き起こす企業にペナルティーを課すなど、適切な措置を講じる。
「資本主義」と「テクノロジーの進歩」は、脱物質化の好循環をつくりだす。また、「市民の自覚」と「反応する政府」は、経済活動によって生じる公害などの「負の外部性」に対処する。
つまり、これら4つの要素〈希望の四騎士〉が揃うことで、人間は地球に負担をかけずに繁栄できる。 -
平等か公平かのどちらかを選ぶとしたら、平等だが不公平な状態よりも、不平等だが公平である状態を選ぶ。これは臨床研究、異文化間研究、乳幼児の実験結果であきらか
たとえ不平等でも関係者の納得感が大事ということが、科学的に証明されているようで、今後の業務に活かせそうと思いました。過度に適用しようとすると不平等による不満が顕在化しそうですが。 -
人間が繁栄すればするほど、天然資源は枯渇し食糧生産は限界を迎えるという予想が、無批判に信じられてきたわけですが、予想と正反対のことが起きていること。
そして人類は経済成長と資源消費量を切り離すことに成功し、経済の脱物質化へと舵を切った。このすばらしい現象について、なぜそれが可能となったのかを解き明かし、どんな可能性を秘めているのかを記しています。
度々引用されているスティーブン・ピンカーの21世紀の啓蒙やファクトフルネスと同じ方向性の本だと思います。
分断にも言及していて、現在の世界的な問題とそれを克服できるというポジティブな論調も個人的によかったと思いますし、ファクトフルネスや21世紀の啓蒙を読んだ人はこの本を読んでおいて損はないと思います。