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感想・レビュー・書評
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木村篤太郎「反共抜刀隊構想」が日本国粋会になる164
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面白い時代を切り取った白黒写真のような本。それ以上でないのが物足りない。関係者の証言の積み重ねで構成されているが、著者独自の見解があまり書かれておらず、白黒写真やアジビラの切り抜きをいい具合に貼り付けたコラージュを鑑賞しているような印象。
もちろん、「運動」が大衆の日常の中に成立した時代へのノスタルジーとか、活動家とヤクザそれぞれの熱情とか、団交の戦いの少年的なワクワクとか、そういうものを作品の中に見出す楽しみはある。現在の山谷が福祉の町になって落ち着いてしまったということとの落差に、時代の移り変わりを感じることもできる。
ただ、金町戦争とはなんだったのか、という問いの答えをインタビュイー個々人の総括に委ねてしまうのは、あまりに淡白すぎないか?読者に考えてもらうとしても、著者の見解くらいはある程度のボリュームで示すべきではないか?
自分は、山谷の闘争は労務者が独身男性であったことによって成立した、極めて「男社会」的なものだと感じた。多くの男性活動家が豪放磊落や破天荒を自認しつつ「銃後の守り」を奥さんに押し付けていたという点も、象徴的だと思う。
現代の視点から過去の闘争におけるホモソーシャルな風潮を断罪するようなことはしない。ただし、女性を軽視しないと成立しない形の運動は、現代以降は存在し得ないと思う。男たちだけで海賊団みたいにワイワイやっていていい時代はもう過ぎ去った。
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