- Amazon.co.jp ・電子書籍 (114ページ)
感想・レビュー・書評
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解説と訳者あとがきも特に素晴らしかった。そして翻訳者のご年齢を知って驚いた。凄いな。再読必要。
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他のフェミニズムの流派に隠れていた偽善や差別を告発しているところが小気味いいのだが、ふとこんな疑問が浮かんだ。本作に限らないのだが、「一貫した正義」というものはなぜこうも人に好かれるのだろう?なぜ「偽善」や「ダブルスタンダード」はこうも私たちの不快感を本能的に掻き立てるのだろう?
もしニーチェの考えたように、人類の道徳化自体が退廃であるのなら、論敵すら天晴と言わせてしまうような、高尚で首尾一貫とした、絶えず自己批判を試みるあの「美しい魂」とは、ある面から見れば「偽善」や「ダブルスタンダード」以上に、この地球にとって有害なのではないだろうか?
人は道徳や倫理を得得と語る青二才に苛立ち、つい「じゃあお前はどうなんだ?お前が自分の立場にも道徳的な批判を行うのならお前の言い分を認めてやってもいいし、こちらとしてはお前の振る舞いに感動する準備もあるのだぞ」と語ってしまうのだが、仮にその「青二才」が本当にその批判を聞き入れ、自己批判を始め、そして更なる洗練された道徳批判を行なってしまい、最初は苛立っていたその人も、この「青二才」の行動に感激して、よし、では俺も道徳的になるかなどと結論してしまったら、一体この地球にどれほどのより大きな腐敗が広がってしまうか、人は想像したことが一度でもあるのだろうか?
偽善は醜い。しかし真の善は美しく、またより有害である。そして人は偽善に留まれるほど強靭ではない。よって、人類は着実により道徳的となっていく。