初読み作家さん。タイトルと表紙で買いました。
とても読みやすいし、絵が浮かぶ文章は、それでいて華があるな、とも思う。
母親に捨てられ、手首を切ってしまう父親を支えるせれなは、成長するにしたがって父親の勝手な自尊心を支える生贄にされてしまう。
逃げることのできない。恐怖が彼女を凍り付かせる。そんな中彼女の心を支えたのは偶然目にしたテレビ番組に特集されていた海外アーティストのリアンだった。
彼はもうすでに亡くなってしまっていたが、彼の姿が、歌声が、せれなの心を恋の形をした防御壁を作りあげていく。
やがて父親との関係を一変させる出来事が起こるのだが、その後も彼女は現実と地続きのリアンとの生活を続けていくのだけれど、、、
父親との関係は、最初からとても不穏。
見ていて(読んでいて)こんな父親はきっと自分よりも弱い生き物を作り出そうと躍起になるぞと思っていたら案の定、でした。
この本は、物語りに救われる、物語りなのだと思う。
それが外からやってきたものではなく、彼女自身が作り出した物語による救済だ。
彼女の心が、現実では誰の手も許さないのに対して、彼女の作り出した物語りだけが彼女を支え、助けることができる。
それが間違っているとは、誰にも言えないことだとおもう。
彼女はけして間違っていない。と言いたい。