地球星人(新潮文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 作者の村田さんと一歳違いなのだが、この世界の理不尽を描き切ろうとしているような執念を感じる。尊敬する。
    村田さんの本では、彼岸を越えるのが正、となっている作品が多い中、彼岸に取り残された主人公が愛おしく感じた。彼岸、越えたいなぁ。

  •  村田沙耶香さんの小説は、実は結構読んでいたりします。本作は村田作品の中でも一番際立ってクレイジーなんじゃないでしょうか。読後感は正直あまり良くないです。とてもおぞましい気持ちになりました。

     一読して「クセつよ」でした。


     小学生の男女が魔法使いと宇宙人と思い込んでいて、しかも結婚するという、のっけからとんでもない設定です。


     そして、暗澹たる気持ちになる主人公の女子の小学生時代へと流れていくのですが、読んでいてツラくなる部分(家庭内暴力や性的虐待)もありました。
    ところがである。(さもありなんかもしれないけど、)主人公の女子はずーっと世の中を冷めた目で眺めています。


     人間は、社会の駒になるために勉強をしないといけないという視点と、社会の生殖器になって子どもを作らないといけないという視点が、エグく描かれていて刺さりました。
    そうしないと「人間工場」という世の中では爪弾きにされてしまう・・・。


     そういった価値観で少女は大人になります。大人になってからも偽装結婚で同じように社会を「工場」としてしか見られない夫を持ったりするのですが、二人と幼なじみのいとこ(宇宙人だと思い込んでいた少年)がしでかす事件は、心底不気味で恐ろしかったです。

     途中で登場する一般人の口ぶりに、私は心底安心しました。

     社会とはなんなのか?異常とはなんなのか?常識とはなんなのか?それらはいつだって反転してしまうようなことなんだなと本書を読んで感じると同時に、逸脱にも種類があって、倫理的な逸脱を見せられると、ヒトは嫌悪感を持たずにはいられないんだなとも思ったりもしました。

     ちょっと引いてしまうラストの展開でしたが、自己をロボットだと思っていた00年代の若者たち(綿矢りさ『インストール』のような)の世界観から、自己を宇宙人と思っている10年代の若者たちの世界観、と捉えるとすれば、この10年間であった社会に対する若者たちの意識の変化は、ある意味、心因的な社会に向かっている、ともいえそうな。そんな感想を持ったりする作品でした。

    ラストシーンは、ホントに怖いです。

  • 小学生の奈月は、ポハピピンポボピア星からやってきたぬいぐるみのピュート(地球の危機を救うために地球にやってきた)から魔法少女になるよう言われ、その任務にあたっている。この冒頭の設定からして頭がクラクラした。

    おまけに、メルヘンな話かと思いきやまったくそうではなく、あえて婉曲に書くと、人間性の限界に挑戦するような思考実験の物語だ。

    彼女には、かつての恋人でありいとこの由宇と、形だけ籍を入れて同居している夫・智臣という仲間がいる。彼らもまたポハピピンポボピア星人であり、共通の敵は、地球上で多数を占める「地球星人」だ。つまり私たちのことだ。

    忘れられない文はいくつもあるけれどひとつだけ。

    「男の入った味噌汁と、男と大根の葉の炒め物と、男を茹でて甘辛醤油で煮たものと、三種類の男料理ができあがった」

    ちょっと吐き気を催すと同時に笑ってしまった。まったく初めての体験だった。

  • そうか。村田沙耶香の著作は全て「ポハピピンポボピア星人」を伝染するための装置だったのだ。
    「地球星人」を恐ろしくグロテスクに感じてしまうのがその証拠。
    ポハピピンポボピア星人化計画完遂のその日まで、まだもう少し地球星人のフリを頑張ろうと思う。

  • 尖ってる!著者にその意識はあるのか?村田沙耶香さん初読。 性的虐待のシーンで胸糞悪くなった自分にはちゃんとモラルが備わっていると感じだが、魔法少女が魔女の蛹を滅多刺しにしている時、やってしまえと思った自分には狂気を感じた。『工場』とは的を得すぎているなぁと思う私はポハピピンポボビア星人よりかとおもった。ちゃんと3/4くらいは地球星人に洗脳されていて、ギリ社会生活を送っている。 しかし、身近な地球星人たちは酷すぎる。子どもの必死の訴えを粗末にする母含め家族に恵まれなさすぎ。「コンビニ人間」もいつか元気な時に

  • グロテスクな描写が多かったどす。現実で起こりうる話というよりsfかホラーに近い。主人公がかなり気持ち悪い人間でした。クレイジー。

    作者がどこかで『人間工場』等を軽蔑しているように感じる。かと言って、ボピア星人の暮らし方は優れているとでも言いたいのか?そうとは思えない。ボピア星人たちの暮らし方は野生動物とか獣の暮らし方とあまり変わらないように見える。人間が退化したような感じ。自由なのはいいけど、あまりいいとは思えない。

  • 「地球星人」(村田沙耶香)を読んだ。
    ああそうだ、村田沙耶香さんて「生命式」の人だった。(順番的には「地球星人」のが先だったのか)
    この人はこういう話を書く人だったな。
    もはやなんの禁忌も無いのであろう。
    今のところ「コンビニ人間」がいちばん好きかな。(まだ三冊しか読んでないのだが)

  • メモ
    午前2時、眠れなくて少し読もうと思って読み始めたら、気づいたら5時前になっていた。
    続きがどうなるのか?気になって、夢中になって頁をめくった。

    自分は気づけば普通・当たり前から逸脱しないように生きてきたけど、たまにひょっこり普通に当てはまらない自分が出てくる。自分にとっては普通で、誰かにとっては普通じゃないし、普通であることかもしれない。
    自分にとっての普通を、他人に強制する回数を減らしたいな、と読み進めながら思った。

    自分なりの「宇宙人の目」が開いた気がした。

  • 前知識なく読み始めたら、とんでもないホラーでした。

    主人公に多少共感しつつ、序盤はその独特の気味悪さを楽しみました。

    やがて明かされる登場人物たちの孕む狂気。
    その凄まじい狂気の行き着く先を知りたくて、最後まで読み切ってしまいました。

    読む人を選ぶ作品だけど、書かれているのは紛れもない「人間」。


    今夜は夢見が悪そう。

  • すぐ読み始められる小説が欲しくて書店に入り、『コンビニ人間』が面白かったのを思い出して、平積みの中から手に取った。
    子ども時代の描写が重たく、チョイスを間違えたかと感じたものの、物語が進み「三種類の男料理」あたりまで来る頃には、もうすっかり気分が良くなっていた。この作者の作品を多く読んでいる読者にとっては、これまでの世界観を網羅したような作品という位置づけらしい。なるほど。
    この本の一番の収穫はたぶんこれ。「家の中にゴミ箱があると便利だ。私はたぶん、この家のゴミ箱なのだと思う。」間違っても誰かにこういうことを思わせないように暮らさなければ。

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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた・さやか)
1979年千葉県生れ。玉川大学文学部卒業。2003年『授乳』で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)を受賞しデビュー。09年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島由紀夫賞、16年「コンビニ人間」で芥川賞を受賞。その他の作品に『殺人出産』、『消滅世界』、『地球星人』、『丸の内魔法少女ミラクリーナ』などがある。

「2021年 『変半身(かわりみ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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