19世紀末から始まったウイルス学では、生物に病気をもたらす「病原体」のひとつとしてウイルスが研究されたが、実はウイルスが宿主に病気を起こさずに逆に利益を与えるケースもあることが分かってきた。ネオウイルス学ではそういったことにも注目してウイルスと宿主の関係をより包括的に扱う。それぞれ細分化された領域の専門家がオムニバス形式で語るネオウイルス学の魅力。それぞれ興味深いが、個人的には一番最後の領域横断研究の古瀬佑気さんがぶっとんでいてイチオシ。以下、目次。
<はじめに---ネオウイルス学とは>
2016年にネオウイルス学を立ち上げた東大医科研の河岡義裕教授による序文。
<1 ウイルスと宿主の共存>
ヘルペスウイルス(東京大学・川口寧)、植物ウイルス(東北大学・高橋英樹)
<2 共に進化する宿主とウイルス>
人獣共通感染症とマダニウイルス(北海道大学・澤洋文)
ボルナ病ウイルス(京都大学・朝長啓造)
C型肝炎ウイルス(大阪大学・松浦善治)
ウイルスから遺伝子を獲得(京都大学・堀江真行)
ウイルスを俯瞰的に理解(東京大学・佐藤佳)
<3 さまざまなウイルスたち>
ヤドカリヤドヌシ、ハダカウイルス(岡山大学・鈴木信弘)
海のウイルス=水圏ウイルス(高知大学・長﨑慶三)
ウイルスは生命の一部であり移動する遺伝体(東海大学・中川草)
<4 ウイルスを視る!>
電子顕微鏡で視る(京都大学・野田岳志)
巨大ウイルスの構造解析(自然科学研究機構・村田和義)
夢のウイルス(京都大学・牧野晶子)
<5 ウイルスを探す>
フィールド調査(大阪大学・渡辺登喜子)
温泉の古細菌ウイルス(東京工業大学・望月智弘):生命の起源と壮大な夢
ウイルスハンティングと感染症対策(北海道大学・大場靖子)
<6 数理でウイルスを知る>
感染の仕組みと広がりを数式で解く(京都大学・西浦博):新型コロナですっかり有名になった先生。忖度なしの気骨を持った人。
実験では示せないことがらを数字で証明する(九州大学・岩見真吾)
領域横断的研究(京都大学・古瀬祐気)
<おわりに---新型コロナウイルス>