ネオウイルス学 (集英社新書) [Kindle]

  • 集英社
4.00
  • (1)
  • (1)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 8
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (293ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 19世紀末から始まったウイルス学では、生物に病気をもたらす「病原体」のひとつとしてウイルスが研究されたが、実はウイルスが宿主に病気を起こさずに逆に利益を与えるケースもあることが分かってきた。ネオウイルス学ではそういったことにも注目してウイルスと宿主の関係をより包括的に扱う。それぞれ細分化された領域の専門家がオムニバス形式で語るネオウイルス学の魅力。それぞれ興味深いが、個人的には一番最後の領域横断研究の古瀬佑気さんがぶっとんでいてイチオシ。以下、目次。
    <はじめに---ネオウイルス学とは>
     2016年にネオウイルス学を立ち上げた東大医科研の河岡義裕教授による序文。
    <1 ウイルスと宿主の共存>
     ヘルペスウイルス(東京大学・川口寧)、植物ウイルス(東北大学・高橋英樹)
    <2 共に進化する宿主とウイルス>
     人獣共通感染症とマダニウイルス(北海道大学・澤洋文)
     ボルナ病ウイルス(京都大学・朝長啓造)
     C型肝炎ウイルス(大阪大学・松浦善治)
     ウイルスから遺伝子を獲得(京都大学・堀江真行)
     ウイルスを俯瞰的に理解(東京大学・佐藤佳)
    <3 さまざまなウイルスたち>
     ヤドカリヤドヌシ、ハダカウイルス(岡山大学・鈴木信弘)
     海のウイルス=水圏ウイルス(高知大学・長﨑慶三)
     ウイルスは生命の一部であり移動する遺伝体(東海大学・中川草)
    <4 ウイルスを視る!>
     電子顕微鏡で視る(京都大学・野田岳志)
     巨大ウイルスの構造解析(自然科学研究機構・村田和義)
     夢のウイルス(京都大学・牧野晶子)
    <5 ウイルスを探す>
     フィールド調査(大阪大学・渡辺登喜子)
     温泉の古細菌ウイルス(東京工業大学・望月智弘):生命の起源と壮大な夢
     ウイルスハンティングと感染症対策(北海道大学・大場靖子)
    <6 数理でウイルスを知る>
     感染の仕組みと広がりを数式で解く(京都大学・西浦博):新型コロナですっかり有名になった先生。忖度なしの気骨を持った人。
     実験では示せないことがらを数字で証明する(九州大学・岩見真吾)
     領域横断的研究(京都大学・古瀬祐気)
    <おわりに---新型コロナウイルス>

  • 執筆陣の輝いた表情が目に浮かぶ素晴らしい一冊でした。中学生でも無理なく読めるほどに内容はかなり手加減されていますが、ウイルスの魅力は全力で推してきます。「何かに半端なく夢中になっている人」を見慣れない人には、異質に感じてしまうかもしれませんが。
    できることなら中学三年の夏の自分にこの本を手渡して「その夢を諦めるな」と言ってやりたいです。
    素晴らしい一冊をありがとうございました。広めたい、この一冊。

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

■川口 寧(カワグチ ヤスシ)
1967年、東京生まれ。東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 ウイルス病態制御分野教授。同研究所 感染症国際研究センター教授、同研究所 アジア感染症研究拠点 拠点長。
東京大学大学院博士課程修了、博士(獣医学)取得。専門分野はウイルス学。
ウイルスがどのように増殖し、病気を引き起こすか? といったウイルス学の根幹をなす命題に迫る戦略的基礎研究を推進する。
また、ウイルスの制圧に直結する新しいワクチンや抗ウイルス剤の開発に繋げる橋渡し研究も行う。

「2020年 『ひと目でわかる! ウイルス大解剖』 で使われていた紹介文から引用しています。」

川口寧の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×