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感想・レビュー・書評
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いやはや面白かった。
大学、大学院で基礎的な研究をしていたみとしてはとてもとても機になる話でした。
自分の研究の話をする時、どうしても「何の役に立つのか」について言及しなければいけない気がしていた。
言われてみれば、むしろ強迫観念に近いものがあった気がする。
もちろんその背景にあったのはお金(研究費)の問題。
まぁただの一介の学生だったので直接どうこうというのはなかったけれど、
それでも就活の時とか、説明する時には有用性を伝えなきゃいけない、と思い込んでいた。
でも多分企業側としても、そういう話の流れを期待してたと思う。
本当に伝えるべきだったことは、こんな思いで実験してるよってことなのかも。
科学と技術は別のものという話、私もうっかり基礎研究とは技術のためにあるという思い込みを持っていた。
読後、なんていうかもっと基礎研究って自由でいいんだよねって思えた。
純粋に面白いから、面白い。
「好奇心をくすぐる以外のなにものでもない」
誰も知らないことがわかるって、絶対的にすごいこと。
たとえ何の役にも立たないと言われてもさ。
無限の効用説で、いつか役に立つかもしれへんやんって嘯くかw
だって未来のことは誰にもわからへんやん。
これからはさまざまさステークホルダーが必要というところ、なるほどと思う。
国だけでなく企業を巻き込んで、財団と協働し、さらに個人のファンを取り込んで、基礎研究の費用を賄う必要がある。
そうなると余計に説明責任が課せられる。
身につまされる感じ。
でも確かに考え方次第なんだよな、と思う。
研究の魅力を伝えるのもそうだし、研究者という存在そのものをもっと身近に感じてもらうというのも説明責任と言えるのかもしれない。
みんなに面白いと思ってもらえないのは仕方がないかもしれない。
でもこんなに面白いんだよ‼︎とは声を大にして言いたい。
この本でも「菊と刀」が出てきた。
影響力のある書籍ってのは神出鬼没なものである。
備忘録
役に立つ、は極めて政治的な言葉。検証のための言葉ではない。
有用性とは、未来において、認めてほしい、みんなにとっていいことなんだと主張するための言葉、そういう側面を含んでいる。
選択と集中、によってすぐに芽の出ない研究にはお金が出ない、という構図が出来上がってしまった。
基礎研究には、絶対的に多様性が必要。
とは言え、何でもいい、でもないのだろう。
この辺りの匙加減が難しい、きっと。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「選択と集中」という発想自体が、基礎研究というものの本質と矛盾している―
「役に立つ研究だけを支援する」という方針により、国からの資金を大幅に削られて研究をまともに進められない研究者がいる。
「研究室の生活費」である運営費が大きく削られ、競争的資金の割合が大きくなり、しかもその競争的資金は「(短期的に)役に立つ」研究に優先的に配分される傾向にある昨今。
このままでは日本の基礎研究が危ない、そう考えた3人の研究者による、
「役に立つ」とはそもそもなんなのか、
「基礎研究」の本質と意義はなんなのか、
研究機関が生き残るためにどのような仕組みが必要であり、どのようなことが研究者に求められているのか、
といったことが、講演・対談録として記載されている。
研究者はもちろん、研究の世界に関心がある人、日本の未来を憂う人にぜひ読んでほしい一冊。