世界最速ビジネスモデル 中国スタートアップ図鑑 [Kindle]

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  • 驚くべきスピードで成長する、中国のスタートアップ企業。何が彼らの躍進を可能にしているのか?急成長している中国企業のビジネスモデルに着目し、その秘密を解き明かす書籍。

    中国のスタートアップ企業の成長要因は、次の3点である。
    ①社会・経済・文化がデジタル技術とマッチして、企業の成長を促した。
    ②エコシステムの発達により、通信などのインフラが急速に整えられ、少ない投資で規模拡大のチャンスが得られた。
    ③秀逸なビジネスモデルを模倣し、独特のモデルを作った。

    フランスの研究者、バレリー・サバティエ准教授らは、企業が様々なビジネスモデルを組み合わせて成長することに注目し、「ビジネスモデルのポートフォリオ」という概念を提唱した。その研究によると、企業価値を高める組み合わせパターンは、
    ①同じターゲット市場で、異なるビジネスモデルを組み合わせる
    ②異なるターゲット市場に、同じビジネスモデルを複製して展開する
    の2つであった。

    上記の研究を発展させて、ビジネスモデルのポートフォリオを分類すると、次の4つのタイプに整理できる。これらのタイプのうち、企業価値をもたらすのはBとCである。
    A. 特化型(少市場/少モデル):特定の市場で、特定のビジネスモデルで勝負をかける。
    B. 融業型(少市場/多モデル):少数の市場に対して、多くのビジネスモデルを展開する。
    C. 横展開型(多市場/少モデル):多くの市場で事業活動をしているが、得意なビジネスモデルは確立済み。
    D. 多角化型(多市場/多モデル):多くの市場で、様々なビジネスモデルを展開する。

  • 世界最速ビジネスモデル 中国スタートアップ図鑑

    ・中国のスタートアップを理解するためには経済の自由化が始まってからのデジタルイノベーションについて知っておく必要がある。
    ・事態を区切って整理すると、第1世代=インターネット革命、第2世代=スマホ/クラウドサービス、第3世代=ビッグデータと決済インフラとなる。
    ・第3世代はピラミッドの基盤がしっかりしているため、情報通信のインフラが整い、スマホが普及して決済までできるという環境が整っているからこそ、そのインフラを前提に少ない資本でピンポイントで大ブレイクが可能。

    ・まず第1世代。インターネット革命が起こり、テンセントアリババが生まれた。創業から20年ほどしか経っておらず創業者も健在だが、スタートアップを超越した存在となっている。これらの企業抜きには有史以来の最速成長は語れない。自ら先頭に立って様々なイノベーションを引き起こすと同時に、後に続くスタートアップを支援する役割も果たしている。
    ・そして第2世代。スマホやクラウドサービスの登場でショートムービーアプリや IoT 家電、O2Oサービスなどか生まれた。テンセントやアリババが築き上げたインフラを補完する立場の企業である。第1世代の超巨大企業の提供するインフラやサービスのおかげで成長してきたが、自らもプラットホームの一翼を担い、アリババやテンセントに負けないような役割を果たそうと積極的である。
    ・最後に第3世代。ビッグデータと決済インフラが整備され、漫画アプリや共同購入サービスが生まれた。今まさに世界最速の急成長を遂げている企業たちである。規模の面では第1世代の超巨人や、第2世代の挑戦者たちには到底及ばないが、成長のスピードだけを見れば彼らを凌駕する存在となっている。これらの企業がのびのびと活躍できるのは、ピラミッドの基盤がしっかりしているから。情報通信のインフラが整い、スマホが普及して決済までできるという環境が整っているからこそ、そのインフラを前提に少ない資本でピンポイントに大ブレイクすることができる。

    ■快看漫画
    ●「一発必中」のスマホ漫画
    ・成長のポイントは、快看漫画が「好循環の仕組み」を築くことが出来たからと考えるべき。スマホに最適されたアプリをSNSで拡散させ、利用者を増やしてビッグデータを集める。そしてそれを作品づくりに活かし、閲覧履歴から最適なレコメンドを提供したからこそできた成長となっている。

    ■第1部の要点(快看漫画)
    ・スマホの漫画アプリの作品から、映画、アニメ、ドラマなどに展開し大ヒットを記録している中国スタートアップ企業がある。ライバルに比べて極めて少ない作品数で「一発必中」ともいえるヒットを飛ばし、ユーザー数を爆発的に増やしてきた。
    ・そのような成功の好循環をビジュアルに書き出すツールにシステムシンキングがある。システムシンキングとは、物事を要素に分解して理解するのではなく、全体の関係性として理解するための考え方。
    ・ 成長にしても衰退にしても、何か一つの要因によって引き起こされるとは限らない。むしろ複数の要因が組み合わさり、連鎖反応を起こしてもたらされることが多いものだ。それゆえ要素と要素の関係性を解き明かし、好循環を説明するためのツールとしてシステムシンキングが必要とされる。

    ■快看漫画はどのようにして高循環を生み出したのか?
    その誕生から現在に至る事業展開のプロセスは大きく4つに分けて整理することができる
    1.スマホ最適化によって投資を受けるステージ
    ・快看漫画が始まった頃、一つの大きな変化として、漫画を閲覧する端末がパソコンからスマホになった。ユーザーの閲覧時間は短くなり、何かを見たり読んだりする時の集中力も細かく分断されてきた。 
    ・スマホ向けの工夫は縦スクロールとフルカラーだけにとどまらない。無駄な内容を省き、10分以内で読める長さとした。しかもユーザーの集中力を保つために2分刻みで起承転結の「転」と「結」を仕掛けた。
    ・さらに配信のタイミングにも工夫して、スマホ世代の若者が最も携帯を使っている夜9時を狙った。中国版ツイッターと呼ばれるウェイボーに投稿したところ、わずか三日間で快看漫画アプリは100万ダウンロードされた。
    2.ビッグデータを活用して利用者を拡大するステージ
    ・メインターゲットを女性に。
    ・ コンテンツを最適化して利用者が増えると、漫画の閲覧情報が集まる。誰が、いつ、どのように漫画を読むのか、詳細な情報がリアルタイムでわかる。
    ・この情報をもとに、利用者等が求める作品を作っていった。アメリカの動画配信サービスの Netflix を模倣して、リアルタイムに集まるビッグデータから、コンテンツを最適化できるようにした。
    ・快看漫画では、アプリ内でのユーザー行動データを全て蓄積し分析している。そのデータに基づき、ユーザーの好みに合わせて内容を作ったり、修正したりできる。ビッグデータによる裏付けがあるので、制作プロセスにおいて、シナリオ、キャラクターの設定、あらすじなどについて作者に専門的なアドバイスをする。
    3.漫画家を支援してエコシステムを創出するステージ
    ・漫画家自身が行うすべての業務(打合せ、資料集め、ネーム、下絵作成、原稿作成)を快看漫画が支援することにより、漫画家の負担が軽減されより良い作品が期待できるようになった。
    ・そしてもう一つの支援サービスが漫画家のタレント化だ。SNS を整備してイベントを組み、漫画家をアイドルのように育て上げる。漫画家としての社会的認知度が高まれば、作品の価値も高まる。
    ・漫画家の人気を維持するために、アプリの中でファンが漫画家と密に交流できるように工夫した。アプリに Twitter のような機能を備え、ファンが漫画家をフォローすることができるようにした。
    4.漫画コンテンツの2次利用を通じて将来を切り開くステージ
    ・将来、漫画は知財(IP)の源泉になると予想している。
    ・原作のファンが多ければ多いほど、SNS でも話題となる。そして話題を呼べば呼ぶほど映画やドラマが成功する確率は高まる。

    ■VIPKIDは3つのステップを経て急成長を遂げた
    1.小さく作って素早く検証
    2.口コミの拡散東京市コミュニティの活性化
    3.国際教育機関との連携とグローバル化の推進 

    ■ピンドゥオドゥオ:グルーポン式の共同購入との違い
    ・グルーポンの場合、ウェブサイト上で一般公募するので、縁もゆかりもない人たちが不特定多数集まっていた。一方ピンドゥオドゥオは、 SNS で声をかける仕組みとしてスタートしたので、当初は友人や親戚と共同購入することが多かったようだ。

    ■3世代を結びつける好循環
    1.起点となる第1世代
    ・まず第1世代のスタートアップ企業であるアリババやテンセントがインターネット時代のサービスを提供することで利用者を増やす。利用者が増えればサービス数も増えて、それが新たな利用者を呼び込むという循環が生まれる。同時に「より高性能なもの」「より安いもの」というように、あるニーズの充足が、より高次のニーズを刺激して、新たな需要を喚起する。これを満たすべくインフラのレベルは向上していく。
    2.第1世代から第2世代へ
    ・第1世代によって築かれたインフラは、次の第2世代の前提条件になる。具体的にはパソコン向けの SNS やメッセンジャー、インターネットの検索エンジン、 E コマースのための決済サービスなどがその典型だ。これらのインフラが整えば、少ない投資でビジネスができるので、第1世代のサービスはもちろん、第2世代のサービスも増える。
    ・また、第1世代のサービスは関連する市場や隙間の市場を生み出すのでビジネスチャンスが高まる。インフラが充実すると共に、新たな需要が創出されることによって、第2世代のスタートアップが増えていく。
    ・第2世代のスタートアップは、高品質・低価格のスマホを普及させ、ニュースアプリ、共同購入、O2Oサービス、配車、フードデリバリーなどのサービスを生み出した。
    ・この間、第1世代のスタートアップも、メッセンジャーや決済をスマホ向けに進化させ、金融や与信に関わるサービスを開発。ビジネスを支援するクラウドサービスも生まれて、次世代のスタートアップはサーバーなどに投資して自前で情報システムを構築する必要がなくなった。
    3.第2世代から第3世代へ
    ・新しいサービスやインフラが拡充されることによって、第3世代のスタートアップは活気づく。少ない投資で、関連市場や隙間の市場を掘り起こして成長することができるからだ。
    ・第1世代のアリババやテンセントは、自らはインフラを提供することに専念している。アリババは「あらゆるビジネスの可能性を広げる力となる」というミッションを掲げているし、テンセントも「健全で活発なインターネットのエコシステムを共同に創造し、すべてのものを結びつける」といってオープンエコシステムを築いている。つまり新たなビジネスチャンスが生まれてもそれを「我がもの」にするのではなく、外部の企業に委ねると明言している。実際彼らはパートナー企業やサードパーティーを自らのオープンなエコシステムに招き入れ、全体を活性化させるという戦略を貫いている。
    ・この戦略が成り立つのは、彼らがそれでも儲かるという構造を作っているから。第2世代や第3世代のサービスの利用者が増えれば、自らのインフラサービスの利用者も増え、最終的には自分たちの収益が上がるからだ。

  • ふむ

  • プラットフォーマーとしてのアリババとテンセントの違いは、投資ネットワークからも読み取ることができる

    最近ネットワーク図にハマっています。これといった具体的な目的はありませんが、見てて楽しいくらいの気持ちです。今使っているのはnetworkxとpyvisです。これが、1万ノードのレベルになると、描画にすごい時間がかかります。ノードが万単位になってもサクッと描画してくれるツールはないでしょうか。何に使うんだと言われると辛いですが。

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著者プロフィール

早稲田大学教授

「2022年 『キャリアで語る経営組織〔第2版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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