- Amazon.co.jp ・電子書籍 (265ページ)
感想・レビュー・書評
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「私」が失われていく病気、認知症。家族からは「母」や「妻」を奪っていく。最後に残る「私らしさ」とは、なにか。そして、その人の中に最後まで残る「あなた」はなにか。病棟にも認知症の患者さんがいて。夫の名前は一度も呼んだことがない。いつも、「お母さんは?」と母親を探している。その人のいう「お母さん」が、実際の母親なのか、なにか「お母さん」に代表される温かい感情なのかはわからない。私が認知症になった時、最後まで覚えているのはなんだろう。私の母のなかに最後まで残る私は何だろう、と思った。
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今回初めて、アルツハイマーになる家族が話の本を読みました
自分とイズミの境遇は違えど、今はしっかりしている母がアルツハイマーになったら、母といつかこういう会話して、同じ様なことで母に苛立ちを覚え、同じことで最後後悔し、泣いてしまう気がした
母の愛情は本当に尊いと思った -
映画の公開のCMを観て気になったので手に取りました。
川村さんの作品は「世界から猫が消えたなら」を読んでからの2冊目です。
母子家庭で育った泉。もう少しで子供が生まれて父親となるという時に母親の記憶が徐々に失われていく。
そんな二人には忘れることのできない事件があった。
現代に新たな光を投げかける愛と記憶の物語。
認知症がテーマとなっている映画や本の作品をいくつか観たり、
読んだりしたことがありますが、重いテーマなので暗い
イメージが第一印象になりますが、この作品の場合は花が出てきたり、
花火が頻繁に出てくるので美しい映像がぱっと目の前で浮かびながら
読んでいたのであまり重苦しさが全面に出るという印象はありませんでした。
むしろ泉が思っている母親像とは違った一面が
引き立つかのように女性であったという部分が見えた感じがしました。
この二人の親子は母子家庭ということもありますが、
どこか特別な絆のようなもので結ばれているというのが
端々に垣間見れました。
泉が婚約出来たことを知らせたら、
「ふたりで生きていくのに精一杯だったじゃない。旅行したり、
おいしいものを食べに行ったり、これからやっと、
親子らしいことができると思っていたのに」
と言っていたのでこれは珍しい事だなと思いました。
普通の親子だったから素直に祝福の言葉ではないのかなと思ってしまいました。
母親が時々発していた言葉の
「わたしの誕生日は誰も忘れないけれど、いつも忘れられる。
だから、たまにはこうゆう誕生日があってもいいのだと思う。」
も印象的です。
そして泉の父親とも思われる人の言葉も印象的で
「これからは自分のために生きてみたらどうでしょうか。
せめて僕と一緒にいる時間だけでも」
ということからこんな言葉が言える人だから
もしかしたら母親も心が揺らいでしまったのかなとも
想像してしまいました。
今まで息子のために女手一人で頑張ってきた母親が
ある時期だけそれを辞めてしまった時の日記を読んだ
時の泉の心境を考えると複雑ですが、
阪神大震災をきっかけにまた息子のために元に
戻って人生を捧げたという気持ちが徐々に分かってくると現実の母親が弱っていく様子をみることはとても辛く
読んでいても切なくなりました。
この作品では認知症がテーマということもあって
記憶に関しての事柄が沢山出てきます。
「人間は体じゃなくて記憶でできているということ。」
ということを更に実感することとなり、
母親の記憶はどんどんと薄れていくけれど、
反対に息子の思い出がどんどんと思い返すこととなり、
それが二人の危うい心のバランスを保っているかと思うと胸が詰まる思いがしました。
歳を重ねると多くの人達が身体の老い、
介護の現実などに直面することが多いので、
そんな年齢に差し掛かっている自分も他人事とは思えずに読んでいました。
自分の場合は若い頃に両親が他界してしまったので
介護に関しては義母だけの心配がありますが、
それよりも自分が認知症とは言わずとも介護される身に
なったことを考えると色々と考えてしまいました。
それよりも特別な大きな思い出を作るということではなく、
日常のたわいのない生活の一部が積み重なって
素敵な思い出になっていくというのがこの作品では
印象的に残ったので、小さな思い出を紡げるように
日々の生活を大切に生きていきたいなと思いました。
様々な思いが交錯してこれから誰しも対面するかもしれないことが登場するので考えさせられる作品でしたが、
決してマイナスイメージではなく心穏やかな温かさが伝わる作品でした。 -
徐々に記憶を失ってゆく母
思い出をよみがえらせてゆく息子
母であること
無償の愛
失われた1年
年齢を重ねることの哀しさ
「半分の花火」の意味を知った時、息子は母親の深い後悔と愛を知ったのだろう -
親と子のお話。
認知症、苦しいと思うところがいくつかあった。
でも認知症って人間らしい病。その通りだと思った。 -
母子家庭で育った息子と、アルツハイマーを発症した母の物語。
徐々に失われていく母の記憶、記憶をよみがえらせていく息子。
なんとも胸が苦しくなりつつ、温かいものが奥底に灯るような。でもやっぱり切ないです。泣きたくなるような思いが度々。母の混乱する思いの描写がリアルで、こんな風にわからなくなっていくのは怖い。必死で抗って、メモを残してなんとか記憶を留めようとするお母さんの気持ちを思うと苦しくなりました。それを目の当たりにする息子の気持ちも。
老いていくとはどういう事かをリアルに感じ、考えさせられました。自分が子の立場で直面する日、自分自身が自分事として直面する日がくるのかもしれない。その時、私は何を思うのかな。私にとって最後まで忘れたくない、最後に残る記憶は何なんだろう… -
香織に脱帽★★★★★