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感想・レビュー・書評
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「自ら考え行動できる自律型の人間を育てること」が教育の目的だ、と称する工藤勇一に対して、鴻上氏が対談というよりもインタビュー形式っぽく、その教育の真髄を紹介する著作。
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教育をテーマに語っているが、社会をこれから作っていくためにどういうことが必要か考えさせられた。
以下印象に残った一節。
・違いを理解するための議論
・当事者意識をもって対話して、違いを受け入れる。そして他者と合意する -
学校の在り方を問う本。麹町中学校の改革者である工藤氏と演出家の鴻上の対談という形式。
多少(実情は知らなそうなのに)アメリカ賛美が入っているが、それは社会実験による政策評価という米国式の優れた制度につながる部分なので結果としてはよいのではと思える。
子供を自律させるという考え方は旧来よりあった西欧(特に英国かな?)の育成方法であり、まさに両氏の目指す民主主義を担える人物を育てることを目標としている。その意味でもしかして工藤氏の理想を突き詰めると英国式ボーディングスクールにたどり着くのかもしれない。
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麹町中学の教育改革で有名な工藤勇一氏は現在、横浜創英中学・高等学校の校長である。
教育の目的は「個人の幸福」と「社会の充実」の二つであろう。個人の幸福とは「考える力を養うこと」であり、その先に政治・経済・文化の充実がある。このとき大事なのは「当事者意識」だと工藤氏は言う。自分の人生を拓くのは自分であり、社会を変えるのも自分であるという当事者意識。この意識を持てる人は「自律」している。工藤教育のキーワードは「自律」である。
最も印象深かったのは、「スーパー教員がもたらした学級崩壊」の章。4クラスのうち3クラスが崩壊し、崩壊しなかったのはスーパー教員のクラス。しかし、3クラスが崩壊した原因はこのスーパー教員だと言う。崩壊したクラスの生徒は、担任教員をスーパー教員と比較する。そして、担任教員をバカにする。学級崩壊はそこから始まる。
昔は親が教員を信頼していた。しかし、いつしか親が教員を信頼しなくなった。その頃から学級崩壊が始まったように思う。
工藤氏は、エビデンスがなくても経験の上から改善点を割り出し、周りを説得し、改善策を実施する力が突出している。エビデンスを得るまで動かないなら改革などできないのだから。
日本の教育は「従順な生徒」=「考えない生徒」をつくってきたが、工藤氏は「考える生徒」をつくりたいと言う。しかしそれは、教師にも当てはまるのではないか。「考えない教師」から「考える教師」に変わる必要がある。もっと言えば、日本の大人全員が「考える人」に変わる必要がある。 -
元麹町中学校長工藤勇一氏と演出家鴻上尚史氏との対談本
工藤さんの生き方や性格などを鴻上さんが引き出して聞いている。 -
工藤勇一さんって、最近名前を聞いてはいた。学校の当たり前をやめたら・・・とかね。なんとなく企業から学校に移った人が、学校で常識とされることに疑問を呈したという流れかと思ったら、そういうわけじゃなく、バリバリの先生だったんだね。それだけに、発言に説得力がある気がした。金八先生が放送されるたびに、全国で学校が荒れる、なんて現場の人じゃないと言わないことだろうなぁ。鴻上氏の問題提起も面白いんだけど、ちがうことについては「いや、それはちがいます」と、はっきり言っていたし。学校でいじめがあったら、先生トバされるから正しく報告しないでしょ、に対して「そんなこと(トバされる)はありません」とかね。そういう議論があることが、考えを深めてくれると思う。面白かったし、刺激的だった。