北条氏の時代 (文春新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 文藝春秋社の「本の話 メールマガジン」に応募したら、この本が当たりました。
    日本中世史(鎌倉時代)を専門とする本郷教授の執筆なので、応募したのですが、たまたま今年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」とぶつかりラッキーでした。NHKとしてこの時代をテーマにした大河ドラマは2012年の「平清盛」以来です。この時は低視聴率にNHKも悩まされたようですが、今回は汚名返上すべく豪華キャストで臨むようです。

    本書は、当時辺境であった伊豆の田方郡を拠点とする平氏の在地豪族であった北条氏が、如何にして鎌倉幕府の中心的な地位まで登り、その後百年以上に渡り日本を動かす政治集団のリーダーに成り得たのか、かつ滅亡する原因は何であったのか等をリーダーシップのあり方を通じて論じたものです。
    この本を読んで興味を引いたのは、以下の3点です。

    1.北条氏の幕府内での地位
    頼朝を支えた御家人を分類すると、
    ① もっとも重んじられたのが、頼朝の親族にあたる「下野の足利氏」「信濃の平賀氏」。 この一族は将軍になれる可能性があります。後の室町幕府を作った足利尊氏は、この一員です。
    ② 次に「家の子」と呼ばれる頼朝の親衛隊。北条義時や結城朝光等
    ③ 最後は「侍」。これは普通の御家人だが、この中でも大きな意味を持っていたのは、伊豆、駿河、相模、武蔵の南関東四か国の御家人で、ここの出身者であれば、幕府の中枢に入ることができた。北条氏、安達氏、三浦氏、和田氏、梶原氏、畠山氏、比企氏がこれに当たります。
    北条氏もこの有力メンバーの一員ではあるが、飛びぬけて大きな存在ではなく、むしろ頼朝の伊豆時代を経済的に支えた比企氏の方が優勢で、頼朝は二代将軍となる頼家の妻をこの一族から迎えています。
    そしてこの御家人の中から如何にして北条氏が抜けだしてくるか・・・は、省略します。

    2.元寇の時の北条時宗は「救国の英雄なのか」
    結論を言ってしまえば、著者の見解は、「外交能力の欠如した幕府崩壊の遠因となった無力なリーダー」というものです。詳細は本書に譲ります。

    3.幕府の変遷という視点
    ① 鎌倉幕府1.0:頼朝の開いた幕府
    ② 鎌倉幕府2.0:承久の乱で朝廷を打ち破り西国進出
    ③ 鎌倉幕府3.0:元寇以降・・・幕府は、元寇による外からの脅威に対応した挙国一致体制を目指す「(オールジャパン)統治派」と「御家人ファースト派」との争いが続く。この争いは「御家人ファースト派」が勝利するのですが、その後の変遷を経て、執権職を誰かに譲ったのちに、北条本家の当主が権力を掌握し続けるという「得宗家ファースト」というべき偏狭な幕府に変わってゆきます。
    しかも時代の流れでもある貨幣経済に上手く対応できないこともあり、御家人の離反を招き、その中から新しいリーダーとして足利尊氏が登場し、幕府の滅亡へと繋がってゆきます。

    著者は「北条家の成長と安定、それに衰退の歴史を知ることは実に興味深い。足利氏も徳川氏も、家の歴史として見たときに、ここまでのダイナミズムはありません・・(略)・・私たちの視点からすると、なんだか不思議な一族。北条氏の足跡を追いながら、日本という国がもつ特質に思いを馳せて下されれば、書き手としてはこれに過ぎる喜びはありません」と結んでいる。

  • 北条氏がなぜ政権を奪取し日本を動かし続け、最後は族滅したのか歴代の北条家当主のリーダーシップなどを見た本になります。
    素人にも分かりやすく書かれていると思います。

  •  鎌倉殿の13人を監修されている本郷教授の研究成果と意見をまとめたもの。ドラマの義時のキャラクターはどうやらこの方の解釈らしい。
     本書のがカバーしているのは義時を初代とする得宗家を中心として族滅した高時まで。吾妻鏡が編纂されなくなって以後も、日記等の同時代の一級資料から北条一族の栄華と滅亡までを語っている。
     日本史でさらっと触れる鎌倉時代を再度勉強する意味でも大変面白い本だった。時宗時代のつけがたまって発生した霜月騒動で安達氏が失脚した時点で北条政権が終わりに向かったという指摘は慧眼である。関東武士団の代表者として政権を築いた北条氏にとって、御家人以外にも市民権を与えて権力の拡大・バランスをはかるか、本土の東国武士の権益を守るかという選択はローマの拡大期のジレンマに比するものだった思われる。後者を選んだ結果、取り込まなかった御家人以外の勢力が、いつか革命勢力になびくことは必定であった。
     
     日本ならではの構造なのか、本書の北条氏がたどった道筋「合議制→独裁制→取り巻きによる本家の神輿化→政権内抗争→政権の弱体化→革命」はのうち武家政権ならず天皇家、摂関家さらには現代の企業においても観察されるのは興味深い。

  • 北条というと、考えてみると、それほど強いイメージはなかった。鎌倉幕府を開いたのは源頼朝だし、いつのまにやら入れ替わったと思ったら、足利尊氏に討たれる側になっているし。元寇の北条時宗がいるんだけど、あちらは大河のイメージもあって、あんまり存在感ないんだよね。実際、本書で本郷氏も時宗をリーダーとしてはあまり評価しないと言っているし。ただ、権謀術数と言うとイメージ悪いかもしれないけど、関東の田舎武士から家柄ではなく、実力で日本を統治する立場になったと考えると、その存在は日本史において際立っていると言えるのかもしれない。そういえば、日本で唯一革命を成功させたののは、北条義時だと、大澤真幸氏はゆってたっけ。公家とか天皇支配の世界から、武家支配への転換をおこなったのは、たしかに北条氏だったのだろう。そうして考えると、もっと知るべき歴史だったのだろうな。

     義時から時宗以前は、いずれも北条の中でも嫡流ではなく、実力で頭角を現したという流れも面白い。リーダーとしては評価されない時宗が、実は北条の主権が確立した最初のサラブレットだったというあたりとのコントラストもね。

     いろいろ刺激的な本だった。

  • 北条氏については高校の日本史程度の知識しかなかったのですが、簡単に覚えた事件などの背景がどのようになっていたのか、鎌倉後半のさらっとやる時期はこういう状態だったのか、などわかりやすく説明されており勉強になりました。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の内容もたぶんかなり触れてるので先取りにもなりました。

  • しっかり書いてあるのでそのぶん固有名詞の多さに圧倒されるが、とても面白く読めた。

  • 大河ドラマの副読本として。すごい面白かったしこのあとこの世界をドラマでどう描くのか気になりました。軍事力から徳政への転換点というのは私も知らずもう少しこの時代詳しく知りたいと思いました。

  •  
    ── 本郷 和人《北条氏の時代 20211118 文春新書》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/B09LTZQM53
     
     Hongou, Kazuto 日本中世史 19601012 東京 /
     
    (20211127)
     

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著者プロフィール

1960年、東京都生まれ。1983年、東京大学文学部卒業。1988年、同大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。同年、東京大学史料編纂所に入所、『大日本史料』第5編の編纂にあたる。東京大学大学院情報学環准教授を経て、東京大学史料編纂所教授。専門は中世政治史。著書に『東大教授がおしえる やばい日本史』『新・中世王権論』『壬申の乱と関ヶ原の戦い』『上皇の日本史』『承久の乱』『世襲の日本史』『権力の日本史』『空白の日本史』など。

「2020年 『日本史でたどるニッポン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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