手づくりのアジール [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 予想通り楽しく読み終えました。
    Facebookでふと見かけた私設図書館ルチャ・リブロ。
    私設図書館?何それ?え東吉野の古民家?うそ〜憧れる!どうやって生計立ててるの?どんな人がやってるの?
    ともかくどえらい田舎の古民家に本がたくさんあって猫ちゃんがいてたいそう居心地よさそうな感じ。なんなん なんなん なんなん!?!?!
    と思っていたら本が出てた。

    収入は就労支援で得ている。
    内田先生のなかま。都会で病んでた。
    逃げ延びた先が東吉野。
    おおぉ〜ぉ。ほおぉ〜ぉ。

    以下は読書メモ。

    食うために働く「労働」と
    長く使うモノをつくる「仕事」と
    主に言葉で他者とコミュニケーションを行う「活動」と、生VitaActivaを三つに分けたアレント。p.75

    中心不在の組織。p.132

    「軸を持つ」ことによって「力を抜く」ことができる合気道による学びで得た「軸はあるけど自信はない」というあり方。p.141

    何かを考えるときに「できない100の理由」を探す人と、「できる一つの方法」を模索する人がいる(あ、これ、ロケット飛ばしてる植松社長と同じだね)という、グラムシの「知性の悲観主義」と「意思の楽観主義」という対比。p.150

    前例を組み替えていくのは周縁に生きる人。p.151

    見えないモノを見えないと言わない、わからないことをわからないと言わない、知らないことを知らないと言わないことが、揉め事を起こさず、事を荒立てないポイントで、これを「コミュニケーション力」と称してそればかりが現代では重視されているが、それでは不健全。p.162

    ニーズに応えるためには常に「他者」からの視点を意識し続けるしかない。このことによって「自分」を確固たるものにしてきた人は、本当の自信を持つことができるのだろうか。p.163
    手づくり的人間とは「自分のために」生きる。「自分らしく」生きるのはすでに他者の眼差しを内面化した商品的人間の特徴。p.165

    磯野真穂という人の目指す「街のおいしい洋食屋さん」的学びの場。一流の場で発表し、有名な学会誌に本文の掲載される「三つ星レストラン」的な学者のあり方。三つ星レストランは大事だけど、みんなが三つ星レストランにならなくてもいいし、三つ星以外をバカにする必要もない。街の洋食屋さんは制約の多い中で手頃な値段でお客さんがうれしくなるような料理を提供している。そういう学びの場を作りたい、とオンライン講座でそれを模索している。p.200

    ふんわりわかった気でいる言葉の問い直し。それを仲間と話し合う、そういう「研究」の場を設定し、すり合わせ、共有するのも人文知の役目では? p.203

    無限の可能性をうたう資本主義的(消費的)自由は、拡張していくことで得られる。
    有限性に根ざし限度内で暮らす土着的(手づくり的)自由に基づく山村デモクラシーを考えるべきときなのではないか。p.246

    ともかく都市部で生まれ育った人は、土着のよさをうまく掬い取って言語化してくれる。

    絶大なる影響を受けた網野善彦さんの本から、この人も影響を受けたらしい。よきかな。

    都市部で生まれ育った若い人たちの新しい生き方、新しい考え方から目が離せない。

    そして、寅さんとアレント、そしてイリイチ。わたしがよく知らないこの人たちから、わたしはどうやら逃れられないらしい笑。いつか手に取ってみよう。

    あ〜、愉しかった

  • 内田樹先生が東吉野に移住して図書館を始めた若者がいる…と何かに書いてたと思うのだが、それがこの人たちのことだったようだ。

    すごい深く考えて「逃れて」来たのだなあと感心してしまう。
    網野善彦、柳田國男、寅さん、イリイチ、ハンナ・アーレント、マルクス、レイ・ブラッドベリ…たくさんのことを消化して言葉にして暮らしている様子が眩しい。

    いろいろな人との対談も、どこから読んでも刺激のある本。

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著者プロフィール

青木真兵
1983年生まれ、埼玉県浦和市に育つ。「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」キュレーター。古代地中海史(フェニキア・カルタゴ)研究者。博士(文学)。社会福祉士。2014年より実験的ネットラジオ「オムライスラヂオ」の配信をライフワークにしている。2016年より奈良県東吉野村在住。著書に『手づくりのアジール』(晶文社)、妻・青木海青子との共著『彼岸の図書館 ぼくたちの「移住」のかたち』(夕書房)、『山學ノオト』シリーズ(H.A.B)、光嶋裕介との共著『つくる人になるために 若き建築家と思想家の往復書簡』(灯光舎)などがある。

「2023年 『山學ノオト4(二〇二二)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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