絞め殺しの樹 [Kindle]

著者 :
  • 小学館
3.58
  • (3)
  • (2)
  • (6)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 49
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (473ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 貧すれば鈍する。この小説を読みながら思った。あまりにもの貧困は、差別やひがみを生む、そんな気がした。

  • 図書館で借りた一冊。
    主人公のミサエがただただ不憫でならなかった。
    タイトルにインパクトがあったので内容が気になったのだが、昭和で田舎の悪い所を詰め込んだ作品の様に感じた。祖母やその親戚関係の家を渡り歩き、挙句に虐げられ扱き使われ、最後まで救いようのない物語だった。ミサエの実の子である雄介が別の家に養子として引き取られ、そこで農家を継ぎ、小山田を見返すエンドで終わっているがここまで救いようのない小説を読んだのは初めてかもしれない。(救われたのは雄介を引き取った母ぐらい?)登場人物が基本的に嫌な奴か虐げられる人かその他に分類されており、感情移入しずらかった。

  • すごい苦しい物語だった。
    昭和の初めに生まれ、根室の畜産農家で使用人としてこき使われたミサエが、家父長制と古い因習、田舎のしがらみ等に囚われながら必死に生きる一部と、その息子雄介を主人公とする二部からなる話。
    ミサエは必死に勉強して保健士になるが、故郷に帰ると、また様々なしがらみと悪意に絡め取られ、その人生はままならない方向に進んでしまう。
    そして、雄介も養子に行った吉岡家で理不尽な扱いを受け家に縛り付けられているのだが、最後自分の人生を取り戻すために奮起する姿に強く胸を打たれる。
    今でも日本のどこかに同じように家の犠牲になり虐げられる人たちがいるんだろうなと思うが、どうかそこから抜け出て自分の人生を生きられますようにと祈るような気持ちになった。

  •  主人公ミサエの人生がこれでもかというほど辛くて、復讐劇に転じる話だろうかと想像したのだが、まったく違った・・・。
     作者のメッセージとして、住職の妻となったユリがミサエに伝える言葉。「気をつけて。あなた、自分で思っているほど、哀れでも可哀相でもないんですよ」「ミサエさんはちゃんと生きてらっしゃいましたよ。誰しもそうであるように、働いて、眠って、働いて、眠って。立派に生きてらっしゃいましたよ」人はみな、それ以上でもそれ以下でもないということだろうか。
     また救われるのは後半の主人公雄介が過去の憎しみに囚われずに生きていこうとする姿。「絡み合い、枯らしあい、それでも生きる人たちを、自分も含めて初めて哀れだと思った。我々は哀れで正しい。根を下ろした場所で、定められたような生き方をして、枯れていく。それでいい。産まれたからには仕方ない。死にゆくからには仕方ない」「新しい根を張らねばならない。屍を肥としてでも、何にも絡まれず、何にも絡まず、ただ淡々と。二人の母にも、何らの過去にも捉われることなく、生き続ける。そう決めた」
     人と交われば良いことばかりでなく、憎しみや悲しみも生まれる。それでも淡々と生きる。生きるところに希望が生まれる。まだ若い作者がこんなドラマを描くことができることに驚いた。

  • 物語は昭和10年、10歳の少女から始まる。最果ての地・根室を舞台とした女性ミサエの一代記、そしてその子・雄介の大学卒業までの半生。あまりにも過酷な人生で読むのが辛かったが、冒頭1ページから曳きこまれる圧倒的な筆の迫力!その中で出会った親切な人々が救いではあるが、この人たちとのその後の交流がないことが更に孤独感を強めているように感じた。ミサエの健気な若い日、そして子どもが生まれてからの強い逞しい姿が別人のようでありながら、不幸はどこまでも続く。この推理小説のような書名は、悲惨な人生を象徴する。ミサエだけではない、雄介の義母ハナもまた辛い人生。重要人物である住職の妻ユリが雄介に説明する言葉として解き明かされる。昭和48年に短い言葉を交わすだけに終わったミサエと雄介の邂逅も、またミサエの孤独の深さを感じさせられた。

  • つらい

  • 今回の直木賞候補作品

    タイトルから、ミステリー作品かと思っていたら、ものすごく濃厚な人間ドラマでした

    これでもかという位、畳み掛けられる苦労の連続。そんな中でミサエは、めげることなく保健婦として地元根室に尽くし続ける

    彼女に未来は来るのか、と思いながら、読み続けてしまいました

  • 人の一生を書いた小説が好きでこれは、好みの
    内容でした。
    人間の一生なんて一瞬で儚いものですね。
    結局なるようにしかならない。
    主人公は2人でてきます。
    強くて優しい。
    なかなか読み応えがあり、文章の書き方もすばらしい作家さんです。
    できればもっと頻繁に新作を書いてほしい。

全10件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1979年北海道別海町生まれ。2012年「東陬遺事」で第46回北海道新聞文学賞、14年『颶風の王』で三浦綾子文学賞、15年同作でJRA賞馬事文化賞、19年『肉弾』で第21回大藪春彦賞を受賞。『土に贖う』で新田次郎賞を受賞。

「2020年 『鳩護』 で使われていた紹介文から引用しています。」

河崎秋子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×