裏道を行け ディストピア世界をHACKする (講談社現代新書) [Kindle]

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  • 講談社
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感想・レビュー・書評

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  • 講談社現代新書版にて読了。

    「無理ゲー社会」からのHACKせよ、です。
    もう普通に生きることは「無理ゲー」なので、常識やルールの裏をかいていかなければ、人生は攻略できない=幸せになれない、っていうディストピア。
    こんな世界に誰がしたって言いたいところですが、戦争も疫病もなく平和な時期が長く続くと、こうなることは必然なんですって。富が正規分布からベキ分布に移行していくから。持てる者と持たざる者とに分断されていくから。ザ・格差社会。
    漫然と常識に従い、ルールを守っているだけでは、ジリジリと下層に落ちていくだけだから、「ふつう」ではないことをして(=HACK)上層に抜け出そうという試み。
    恋愛、金融市場、脳、自分、世界、これらを次々とHACKせよ!

    特に脳をHACKする章は衝撃でした。システムをハックして自己を利するはずが、逆に個人がシステムからハックされることもあり。ギャンブルや買い物、SNSなどへの依存症というのは「脳の報酬系がHACK」された状態。脳の報酬系を刺激する行動依存は、究極のマーケティング=利益最大化装置なので、あらゆるビジネスが「誰かの脳をHACK」しようとしているそう。
    いや、ますますディストピアやんけ、って思ってしまう。


    ただ、富の偏在がいきついてしまって、もはや富よりも評判というパラダイム転換が、コロナ禍もあいまって加速しているそうで、この転換はどのように帰結していくのだろう、というところでこの本は終わっています。

    具体的なHACK方法など語られていませんが、漫然と生きていてはジリ貧なんだなぁ、ということは実感できます。とりあえずは、SNSとは距離を置いてみょうか、と。そもそもツィッターさえやってない、ニコには関係ないのかもしれないですが。
    オススメです。

  • audibleで聴く読書。
    あまり愉快な気持ちにはなれない内容。
    裏道行きたくはないなあ。

    誰もが持っている普遍的な欲望を、深く深く掘り下げた人々の実例がたくさん出ていて、それが不幸な結末になることが恐ろしくもあり、普通に生きるしかない自分にあきらめもあり。
    世の中の流れをおおきな視点で、一瞬垣間見れたような気もする。

  • 引用を交えて著者の考えをまとめられています。話の筋は一貫して同じなのですが、いろんな引用が淡々と続くので、話が飛んでいる様にも見えなくはないです。逆に言えば引用が多く説得力あるかもしれません。

    最初の入りがナンパの話です。割と際どく現実的な男性の思考が語られるので…著者のファンでない(特に)女性の人は読むのがしんどくなるかもしれません…。著者も本文中で「もう少しお付き合い願いたい」みたいな事をかかれてはいますが。それが肌にあえば最後まで読めると思います。人生甘く考えがちな時に読みたい本です。甘いだけじゃ生きては行けないですね。

  • 現代を生きる上での「世界のあるき方」。ハックという言葉で切り取って見せている。
    世の中の裏を見る。現代の私たちにとって必要になっている。そのことについていくつかの例に基づいて筆者なりの知見でかいたものである。
    恋愛、金融市場、脳、自分、世界。これらがハッキングの対象である。結局のこれらは独自に存在することはない。一方、この切り口で論じることはわかりやすい。
    本書の書名には「ディストピア」とある。であれば筆者にとっての「ユートピア」とはどういうものか。興味が湧くところである。

  • 正規分布ではなくロングテールの世の中をどう生きていくのか。いや,生き残るのか。現実がクリア不能の無理ゲーならプレイしないことが最適解だが,強制的にプレイしている状態と考えると,システムや他のプレイヤーの裏をかくことが求められる。格差が大きくなると,いつかカタストロフィが起きる。まるでトランプの「大富豪」のように。カタストロフィは革命かもしれないし戦争かもしれない。日本の場合は維新という形を取るかも。恋愛の,金融市場の,脳の,自分の,世界のHACKで語られる。誰もが置かれた環境で適応し,生き残る(勝者になる)ために工夫している。それが一時代前のライフスタイルと大きく異なるのだ。

  • ハックする方法が指南されているわけではない。

    …いや、ハックする方法がさまざまにめっちゃやたらに実際の人の記録が書かれてはいるんだけども。
    お手軽に人生変わるよねと言うyoutube的なネタ的なものが書いてあるわけではなく、これでもかな人たちのオムニバスを読んでいって…あー。人間てキリがないんだなぁ、てことと、あなたが好きだと思うことはどの中毒か?的な示唆にぶち当たる
    (気がする)

    迷おうが悩もうが、そんなこと、当たり前だしにんげんだもの、脳がこうなんですわ、て言う、たんとんと悟りが開く本。

    一行ずつサラッと書いてあるけど、「お、おう…」てなるほど地の文にパンチがあるので個人的にやっぱこの作者好きだわ〜ってなって終わりました。

    途中、このスタイルで最後まで行くのか…って一章目で戸惑ったので星三つで!

    よく聞く単語とか、めっちゃサラッと一言で説明書いててくれて、ああ助かる…とも思いました。

  • 裏道を行け 2022
    ディストピア世界をHACKする

    2022年1月1日発行
    著者:橘玲

    本作品は、2021年12月、小社より講談社現代新書として刊行されたものを電子書籍化したものです。

    橘玲らしい身も蓋もない事を書いている。
    ただ実際には具体的なハック術が書かれているわけではない。
    ちょっと題名に釣られた読者が多かった印象のある作品。
    海外の事例や書籍の内容をわかりやすくまとめている感あり。
    もう少し具体的に自分たちに出来ることは何なのかははっきりしない。
    しないが故に物足りないと思う人もきっといるだろう。

    印象に残った点

    本書を読んで頂ければわかるように、ハッキングには一定の(あるいはとてつもない)効果があるものの、全ての人にその利益が公平に分配されるわけではない。というよりも、そこは一部の者が成功し、大多数は失敗するロングテールの世界だ。身も蓋もない言い方をするなら、大半の果実は「とてつもなく賢い者」が独占していく。
    わざわざ断る必要もないと思うが、本書はハックを勧めているわけではない。もちろん、自信があるのなら挑戦するのは自由だが。

    「進化論的制約」から、人間はしばしば不合理な選択や行動をし、社会・制度のバグは簡単にはなくならない。それを考えれば、むやみに大きなリスクを取ることなく、経済合理的に考え行動することで「人生を攻略する(ハックする)」ことは(一部の人にとっては)まだ十分に可能だろうと思っている。

    コロナ禍にも関わらずGAFAなどIT企業を中心に株価が上昇し、富裕層の富は更に増大した。需要と供給の法則によって、たくさんあるものは価値がなくなっていく。豪邸に住んだり、プライベートジェットやクルーザーを持っていたりしても、尊敬されるどころか、トランプのような「成金根性」としてバカにされてしまうかもしれない。
    お金があふれた世界では、お金による差別化はますます困難になっていく。ブランドによる「顕示的消費」もかつてのような効果はなくなった。若者のファッションがどんどん地味になっているのは日本だけの減少ではない。

    突き詰めていうなら、慈善とは「限られた資源をどのように最適配分すべきか」という経済学的な問題だ。だとすれば、先進国に暮らす者にとっての「倫理的な生き方」とは、質素な暮らしをしながら懸命に働き、収入のうちできるだけ多くの割合(10%かそれ以上)を、その効果が「エビデンス」によって証明された事業(を行う援助団体)に寄付することになるはずだと〈効果的な利他主義〉者はいう。

    BOBOSは「成功したミニマリスト」のことだ。

    FIREはプアホワイトのような「貧困」ではないが、必死に倹約して経済的独立=自由を手に入れたのに、なぜ「失業者」にならなければならないのか。現代社会では、職業的な成功こそがもっとも確実な自己実現への道だというのに。

    早期退職(失業)はもはや、魅力的な人生の目標ではなくなっている。こうしてFIREは「経済的に独立して、好きな仕事(社会活動)を通じて大きな評判を手に入れる」という運動に変わっていくだろう。実際、FIREを達成した者たちは、自らがインフルエンサーとなってこの理念の普及を精力的に行っている。

    近代というのは、わたしたちが息苦しい共同体(コミュニティ)を捨てて、モノやサービスを貨幣と交換するドライな関係(市場経済と資本主義)を望んだからこそ生まれたのだ。

    愛する人とのセックスが無上の喜びなのは、そこに金銭が関わらないからだ。それに対して、セックスのあとに1万円の現金を渡すと、愛はあとかたもなく消えて売春というビジネスになってしまう。

    脳のエンハンスメント(増強)が夢物語だった時代は終わり、いまや現実のものになりつつある。最初は発達障害の子供が対象だろうが、そうなると一般の(裕福な)親も、同じテクノロジーを自分の子供に使いたいと思わないだろうか。

    美容整形手術がもともと、戦場などで顔に外傷を負った兵士の治療法として始まったように、脳のエンハンスメントも早晩、より一般向けに商品化されることになるだろう。

    近年の脳科学では、複雑な道路や一方通行などの規則を記憶するロンドンのタクシー運転手の海馬(記憶にかかわる脳の部位)が発達していることがわかって、「一定の年齢になったら脳の成長は終わる」という常識が書き換えられた。この「脳の可塑性」は「いくつになっても学び続けられる」というポジティブなニュースとして歓迎されたが、ウィルソンはこの可塑性がネガティブな方向にも作用すると指摘する。ポルノばかり見ていると、脳の部位に生理的・機能的な変化が起こる可能性がある。なぜならセックスは、とりわけ男にとって、もっとも強い刺激を与える根源的な欲望だから。

    こうした事情はアメリカやイギリスでも同じで、「スタンフォード監獄実験」で知られる社会心理学者のフィリップ・ジンバルドーは、中高時代を男子ばかりの寄宿舎で仲間たちと大量のポルノを見ながら過ごした男性が、愛情があるにもかかわらず恋人と性交渉ができない事例などを報告している。少年期から膨大なポルノにさらされ続けたことで「セックス拒食症」とでも呼ぶべき状態になり、本物のセックスとポルノの菜園の違いがわからなくなってしまったというのだ。

    徹底的に社会的な動物として進化してきたヒトには、食べることとセックスする(愛される)ことと並んで、もうひとつ決定的に重要な欲望の対象がある。それが「評判」だ。
    よい評判は仲間内での地位を高め、安全の確保や性愛のパートナーの獲得につながる。逆に悪い評判がたつと共同体から排斥され、旧石器時代にはこれは即座に死を意味しただろう。このようにしてヒトは、よい評判を得ると幸福感が増し、悪い評判によって傷つく(殴られたり蹴られたりしたときと同じ脳の部位が活性化する)ようになった。

    マシン(ギャンブル)にはまる背景は、母子家庭や貧困のような人生の困難、ドメスティック・バイオレンスや過去の性暴力のトラウマ、子育てが終わって人生に満たされないものを感じているなどさまざまだろうが、共通するのは「自分の人生をコントロールできていない
    」という感覚だ。だからこそ、よりシンプルでコントロール可能なゲームに惹きつけられていく。

    チクセントミハイは、フローすなわち〈ゾーン〉に入る条件として次の4つを挙げている。
    1短期の小さな目標
    2明確なルール
    3即座のフィードバック
    4制御(自己コントロール感〉と挑戦が同時に起こっているという感覚

    ひとたび依存症が始まると快感は抑えられ、不足感が表面化してくるが、これは薬による快感だけでなく、セックス、食事、運動などから得られる日常的な快感も低下させるらしい。依存症の恐ろしさは、あらゆる幸福感を得られなくしてしまうことにある。

    (日本ならNISAやiDeCoのような)非課税口座で投資している人や財団などは、株式に投資するならアクティブ運用からノーロード(販売手数料なし〉で幅広く投資を行うインデックスファンドに乗り換えたほうがいいかもしれない。アクティブ運用で行くなら、それで大きなエッジが得られると考えていい強力な根拠が必要だ。私の経験では、優れた銘柄選択能力なんてそうそうあるものではない。ということは、だいたいみんな、インデックスファンドにしといたほうがいいということだ。
    「ラスベガスとウォール街を制した男」ソープ

    できるだけ賢い人、できれば自分よりも賢い人と仕事をせよ。
    簡単にあきらめずにやり通せ。
    ジェームズ・サイモンズ

    大学生のパートナー選びを調べると、国を問わず、男女ともに「外見」が圧倒的に重要で「性格」や「学業成績」などそれ以外の要素はほとんど影響がない。だが社会人になったあと、モテる要素が何かはデータがはっきりと示している。それを一言でいうなら「男はカネ」「女は若さ」だ。
    長期的なパートナー候補として選ばれるのは、ユーモアがあって楽しい男ではなく、社会的・経済的に成功した男だ。「最高のPUA」であるミステリーが、ストリッパーやパーティガールしかナンパできないのはこれが理由だ。
    理想の性愛を実現するには、富を手にしなければならない。こうしてハックの標的は「女の脳」から「金融市場」へと変わっていった。

    婚活サイトのビックデータの分析では、魅力度が下位80%の男は下位22%の女を奪い合い、上位78%の女は上位20%の男に集まっていた。その結果、30歳以下のアメリカの男性がセックスレスを報告する割合は、2008年の8%から2018年の28%へと3.5倍になったという。
    徹底的に自由化された現代の恋愛市場では、少数の成功した男が多くの女に望まれる一方で、多くの男が性愛から排除されてしまうのだ。

    だが女が中期的・長期的な関係を望んでいるにもかかわらず、「やり捨てる」ことを前提にピックアップしてはならない。仮に性的関係に持ち込んだとしても、その行為自体が倫理的に許されないし、大きな代償を払うことにもなりかねない。合意によるセックスが当然とされる現代社会では、「道徳的なモテ戦略」が必要になるのだ。

    進化論的にいうならば、メイティングにおいて、男はまず競争し、次いで選択する。女はまず選択し、次いで長期的な関係を勝ち取らなければならないのだ。

    世界はいま、知識社会化、グローバル化、リベラル化という三位一体の巨大な潮流の中にある。この人類史的な出来事によって社会はとてつもなく複雑になり、ひとびとは急激な変化に翻弄され、人生の「攻略」が難しくなっている。これを私は「無理ゲー社会」と呼んでいる。

    社会のリベラル化が進み、誰もが「自分らしく」生きるようになれば、教会や町内会のような中間共同体は解体し、1人ひとりがばらばらになっていく。これによってわたしたちは法外な自由を手にしたが、それは同時に、自分の人生の全てに責任を負うことでもある。リベラルな社会では、人種や身分、性別や性的指向などにともなう差別はなくなるはずだから、最終的には、あらゆることが「わたしの選択」の結果、すなわち自己責任になるだろう。

    第二次世界大戦後の日本が1億総中流社会になったのは、広島・長崎に原爆を落とされ、国土が焼け野原になり、兵士・民間人含め300万人が生命を落とした敗戦と、アメリカ軍(GHQ)による占領=民主改革によって、戦前の身分制的な社会制度が破壊された「恩恵」だった。これは日本だけでなく、歴史上、社会が平等になるのは戦争、革命、(統治の)崩壊、疫病によってそれまでの社会構造が解体され、権力者や富裕層が富を失ったときだけだ。
    ところが平和な時代が続くと、その日暮らしの者と、わずかずつでも富を蓄積・運用する者とのあいだに差が生じ、それが積み重なることで経済格差が大きくなっていく。このようにしてなんら不正がなくても、ベルカーブは自然に壊れてロングテールになっていく。

    2023/02/26(日)記述

  • 格差を乗り越える(ハックする)方法を説いた本で、ハックとは「革新的でカッコよく、高度なテクニックを駆使した妙技」のこと。

    恋愛や金融の事例や最新の脳科学を事例を紹介していて興味深いものでしたが、個人的にハックするというよりは歪みをついたり、既存の制度を最大限活用するのが重要なのではと感じました。

  • 橘玲(独自)の視点からの、人生いかに生きるべきか、であります。キーワードは、HACK、判り易く言えば、裏道を行け。具体的には、常識やルールの裏をかく(合法的に)という事でしょうか。その対象は、恋愛、お金(市場の歪みを狙う等)、自分(脳の癖を活用、更にはAIも)、そして、世界(富から評判へという時代における生き方等)であります。本の中で引用されている、できるだけ自分よりも賢い人と仕事をせよ、というのは、究極の金言かも知れません。

  • 橘玲節が定期的に読みたくなる人向けのもの。
    悪くはないが、無理ゲー社会と、近著のモテるための云々のごった煮感あり。

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著者プロフィール

2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)、『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』『橘玲の中国私論』(以上ダイヤモンド社)『「言ってはいけない? --残酷すぎる真実』(新潮新書)などがある。メルマガ『世の中の仕組みと人生のデザイン』配信など精力的に活動の場を広げている。

「2023年 『シンプルで合理的な人生設計』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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