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感想・レビュー・書評
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最近ではオリックスを応援する大学教授としてSNSで有名になった木村幹神戸大学教授が、これまでの研究生活を振り返ったのが本作だ。刊行されたのが2022年1月ということで、現在の大統領である尹錫悦はカバーされていないが、これまでの研究内容と研究生活を振り返る一冊となっている。イメージに一番近いのは、日経新聞の”私の履歴書”だろうか。とは言っても、”私の履歴書”の対象となるのは少し若いのだが。
ご自身は本書の中で「こういった本にニーズがあるかわからない」と書かれているが、X(旧Twitter)のつぶやきを早くからフォローしている自分のような人間にとっては、著者の研究者としての歴史を知ることができるのは素直に嬉しい体験だった。木村先生といえばTwitter上では過去の政治学における人間関係についてボヤク(というよりも吐き出す)のが恒例となっているが、本書ではその辺りはさらりとしか触れられていない。おそらく相手もどこかの大学で教鞭をとられている教授だろうから、詳細が明らかにされるのは永遠にないのだろう。
構成としては生まれから大学への入学、韓国研究へと進んだきっかけ、そしてこれまでの研究者としての歩みを時系列で並べていくというオーソドックスなものとなっているため、韓国の近現代史についてほとんど知識がない人でもすらすらと読み進めることが出来るだろう。とは言っても、韓国に興味もなく、木村先生を知らない人が本書を手に取る可能性はほとんどないだろうから、そういった心配は無用なのかもしれない。
本書によれば、著者が韓国を研究対象として選んだのは研究者として勝負するための消去法であって、特段の思い入れはなかったらしい。 その良い意味での思い入れのなさは研究生活が終盤になった今でも続いているようで、それが逆に対象である韓国との良い距離感を維持できている秘訣なのではないだろうかと外から見た自分は感じた。
あとがきには「オリックスが日本一になりますように」と書いてあるが、その願いは刊行された年にめでたく達成されており、読んでいるこちらも微笑ましい気持ちになる。いつか本当に引退されたら「政治世界のオーラルヒストリー」ではなく「アカデミックな世界のオーラルヒストリー」をまとめた一冊をまた出版されることを期待している。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者の学者人生履歴と韓国現代史を織り交ぜて、韓国の発展、日本経済へのキャッチアップへの躍動の政治、経済、社会の変革を説く。一方で、著者の専門分野である韓国の現・近代史への踏み込みは敢て回避したか?
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【「それであなたは韓国が好きなんですか」。この質問にはこう答えることにしている。「それがわかったら苦労しないんですよ」】(文中より引用)
学術対象として韓国を選び、気づけば政治や世論に振り回されることになった一研究者による回顧録。韓国という感情を揺さぶりやすい国を相手に、第三者的な視点を日本人が持ちうるのかを考える上でとても勉強になりました。著者は、ハーヴァード大学でもアジア研究に勤しんだ木村幹。
読んだ後に何とも言えない気持ちにさせられました☆5つ -
韓国研究者の学生時代から現在にいたる研究生活を振り返った著書。ほぼ同年代のため、韓国と日本の関係史を振り返ることができてよい。