作者の佐藤雫さんへはインタビューで「実朝と信子の恋物語ですね」と言われて、「そんなつもりで書いてなかった」とお答えになったそうです。私は恋物語と言うよりも、歴史小説として読みました。しかし、頼朝の優しさと信子への一途な想いが全面に出た結果、恋物語でもありました(笑)
時代と立場を考えれば、子を成すことなく夫婦でいることはとても純粋で重いと感じました。それでも、夫婦であり続けたふたりの一途さ、清らかさと将軍という立場故に血生臭いことから逃れられない運命と。
本人は進むことを選びませんでしたが、水瀬の恋模様も気になりました。この人が、誰かに嫁げば、歴史はまた変わったのでしょうね。(重保ならば可能性はあった⁉)でも、信子の傍にいることが水瀬にとって1番の幸せなのだから、無粋な話というものなのでしょうね。
読了後、『ふたりは幸せだったのかなあ?』とふと思いました。一途に想い合える相手を見つけるのは現在以上に難しい時代に出会い、互いを慈しみ合えた反面、あっさりと死別。長いこと再会を待たなければ、なりませんでした。(現在は仲良く歌を詠んでいるとは思いますが)少し寂しい気がしました。