嘘の木 (創元推理文庫) [Kindle]

  • 東京創元社
4.07
  • (4)
  • (9)
  • (1)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 85
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (460ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 前から気になってた本なのだが、読んでみようと調べてみて児童文学作品であり、様々な賞を受賞していることを初めて知って驚いた。
    「ヴィクトリア朝の英国の島を舞台にしたゴシックロマン風ミステリー」だという。 そもそも「ゴシックロマン風ミステリー」ってなに?表題の「嘘の木」とは?捏造だとされる「翼のある人類の化石」とは?興味津々で読み始めた。
    14才の少女フェイスが父親の死の真相を知ろうと、謎解きに挑む怪奇ミステリー的な部分もあるが、孤立無援の状態にもかかわらず主人公が大活躍する冒険活劇という側面も強い。
    犬猿の仲だと思い込んでいた母親や周りの人々と徐々に心が通うようになっていき、ハッピーエンドをむかえるにつれて、作品自体に温かさが満たされてゆき、読み手側もホッコリとしてしまった。

  • ファンタジーとミステリーが融合した、なかなかボリューミーな一冊。
    嘘を養分に成長する木を使って、殺された父の事件の真相を暴く少女。
    嘘のつき方が賢くて、でも無謀でもあり勇敢でもある主人公がなんかかっこよかった。

  • 19世紀のイギリスを舞台にしたファンタジー児童文学。でもミステリー色がかなり濃いめ。父親が不自然な死をとげ、「嘘の木」の存在を利用して真相に辿りつこうとする主人公。この「嘘の木」の部分だけがファンタジー要素で、男性優位の窮屈な時代設定や、ダーウィンの進化論による協会や信仰の混乱ぶりが詳細に描かれる。少女フェイスは父親のスキャンダル以降、周囲の冷たい仕打ちに屈辱を覚え、怒りを胸に真相解明と復讐を果たしていく。そもそも翼の痕跡がある人骨(化石)なんて、父親は冤罪ではなく有罪だと、序盤から読者には分かってしまうが、父親を敬愛するフェイスは真の理解者は自分だけだと、そんな事お構いなしに一直線に行動する。勇敢なところもあれば、意外とずる賢く立ちまわる様は清々しさえ感じた。良い子じゃないけど、正義感を振り回さないところに好感が持てた。最後は自分と正反対の母親と少しだけわかり合って、お互いに未来を見ることが出来て良かった。

  • 児童文学という位置付けではあるが、大人から子どもまで楽しめる作品。
    読んでいて海外ドラマ「アンという名の少女」を思い起こさせるような、女性の置かれる社会的立場について考えさせる。
    主人公のフェイスをはじめ、登場する女性たちがみんな逞しい。

    尊敬する父に認めてもらおうと頑張るフェイスがとても健気で思わず応援したくなる。
    夢をかなえて立派な博物学者になってほしいな。

  • 面白かった。
    ダーウィンの進化論に揺れる19世紀イギリスが舞台のファンタジー小説。ファンタジーとはいえ、魔法や魔物が登場する訳ではなく、嘘を養分にして真実を教えてくれる不思議な木の存在以外はその当時のイギリス社会の現実が描かれる。主人公のフェイスは、大人と子どもの狭間にいる存在として描かれ、博物学者として有名な父親に憧れ父に愛してもらいたいと願っている。突然の父の死に際し、その死の真相を突き止めるために奔走し成長していく。
    あからさまな女性差別社会の中、フェミニズムとシスターフッドも描かれる。フェイスが最後の方で、自分は他の女性とは違うと思っていたけれど、そもそも女性はそれぞれ皆違うのだと気づく所が良い。

  • 女性が生きづらいヴィクトリア朝時代、14才の少女が幾多の裏切りに会いながらも、思いを遂げようと勇敢に行動します。
    謎解き要素たっぷり。悪夢に満ちた嘘の木の正体は何なのでしょう。
    当時の宗教観、生活規範も伺えておもしろいです。

  • ヴィクトリア朝時代、中流階級の様々な女性たちが描かれてるのが面白い
    牧師の娘フェイス(14才)は父を異常なまでに尊敬し愛し認められたいと熱望している博物学に興味のある子だ
    が、父親には重い過去の秘密があった

    全編に強いキリスト教の信仰があり息苦しい
    謎そのものはそれほど興味深いものではないが
    この時代に生きる女性それぞれの抵抗と考えに共感できた
    紳士たちに丁重に扱われながらもしょせん女だと圧迫される彼女たち
    彼女たちも身分の低いものには同じような言動をとっているのが哀れだ

    女と女の愛情(真に頼りになる人たち)もほのめかされていて結末はわずかな光りが見られて良かったと思う

  • ファンタジー&ミステリーだけじゃない、「この時代に女性が働くこと」の大変さを伝えてくれる本。最後にお母さんの理解が深まってよかった。

全10件中 1 - 10件を表示

フランシス・ハーディングの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×