- Amazon.co.jp ・電子書籍 (319ページ)
感想・レビュー・書評
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数学者・森毅と統計学者・竹内啓の対談。
読書猿さんが解説でも書いているが、この2人噛み合わない。馴れ合いみたいな対談がめっきり多くなった今、こういう"逆接対談"は貴重。
特に第1部「数学の世界を獲得する」が濃くて面白かった。1ページに少なくとも1箇所は赤線引いた。
見出しだけあげておくと、
「数学と論理」
「基数・序数・自然数」
「たす・ひく・かける・わる」
「連続量と実数」
「関数」
「代数系」
冒頭から集合論における「外延」と「内包」の議論(またそれと絡んで「双対性」についても)にも興奮したが、四則演算に関してなんとなくもやっと認識していた部分をものすごく鮮明に解説してくれていて目からウロコが落ちまくり。例えば「寄せ算」と「足し算」は本質的に異なるという話とか。「うわ、ほんとだ!」と何度か独り言をいった。
(ちなみに本書では数学教育についても話題にあがっている。かつて、小学校で集合論を教え、中学では統計学を、高校でブール代数まで教えていた時代があったと知ってびっくり。でも、広告などのインチキ統計がはびこる今なら、中学くらいで統計学を教えるのはありかも。)
第2部(数学の世界をふりかえる)で面白かったのは、19世紀数学の「厳密性」についての話。また構造主義的モデルとして先鋭化していった数学の「了解可能性」についての議論。
森「つまり、科学的真理というと、検証可能性ということをすぐに問題にするけれど、数学のいまのような構造的モデルというのは了解可能性であり、むしろ、そのモデルを作った主体にかかわるほうが強いんじゃないか、ということですね」
哲学者で数学者のA.N.ホワイトヘッドが「厳密さはフェイクである」と言った意味がようやく本書で理解できた気がする。人間の認識や経験にそうかぎりは、もう少しやわらかな数学が必要とされるのだな。
本書のキーワードのひとつは、「近似」ということかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示