22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる (SB新書) [Kindle]
- SBクリエイティブ (2022年7月5日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (210ページ)
感想・レビュー・書評
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今、注目の論客。書籍を読むのは初めてだがビシバシと切りまくる。『革命か、ラテか』という、投げやりにも聞こえる一言も妙に説得力がある。民主主義を立て直す方法として、闘争・逃走・構想を挙げているが、構想に一番多くのページを割いているのがせめてもの救いか。
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これまた四半世紀以上先に進んでいる知識人だなぁと思った。東浩紀の「データベース社会」との関連で言えば、「データベース社会」全体の非可視の「データベース」から、AIを使ってまるまるすべての「データ」を取り出し全体最適化を図るという構想でもあるのではないかと思った。そう考えると、落合陽一のデジタルネイチャーの話とも少し交えてなにか話を作れそうな気もする。
ただやはり、感情を読み取るなどはプライバシーの権利への挑戦であるから、そういったものを今実装しようとすると、国際的に非難轟々になってしまうよなぁと言う感じである。
しかし、実際の社会の方向性としては、日本がIT技術を活用するのであれば、大量のデータ活用など、その方に動いていくだろうとは思う。その未来のために今のうちに倫理的な側面のために議論しておくのも悪くないかもしれない。
大学生の頃、ちょっとしたつながりで菅直人元首相と挨拶をしたという先輩と話したことがある。その人が「いい人だったよ」と言っていたから、汚職などは出てくるが、基本的には日本の政治家はいい人なのではないか、と思ってはいる。
日本は国の借金が多く、経済成長はイマイチパッとしないが、トランプのような人が出てくるわけでも議会で暴動があるわけでもなく、極右政党が幅を効かせているわけでもない。大前提として馬鹿馬鹿しくはあるものの、そういうものと比べるとN党などはかわいいもので、安定しているという点では捨てたものでもなくうまくやっているのかもしれない。
読んでいて、スマホやテレビのディスプレイがそこに映る「人間」の「人間性」を殺しているのではと思った。
また、AIの責任に関連して、例えば自動運転で発生する責任をどう取るのかという問題は保険のロジックが応用できるのではと思った。自動運転のAIを使用する人が事故の発生確率に応じて定期的に料金を払い、個別の事故の発生時に積み立てたお金から補償を行う。責任の所在は、AIのアルゴリズムとそれを選択し使用するすべての人間という組み合わせにあるという建付けになる。AIは保険料の価格によって優れたものが残っていく…。そんな議論はもうあるのだろうか。全く知らないけれど…。
これを国家に応用するなら、現在の選挙と同じく、統治AIの責任は、AIそれ自体とそれを生み出し選択した国民にあるということになる。やっぱり監視国家になってしまうのはどうなのだろうという感はあるが…。
なんとなくまた一人土下座しなければならない人が増えたのではないかとビクビクしながら読んでいたのであるが、どうなのであろうか。意味がわからない感想だなこれ……。 -
とても本質的な内容。期待したい。
ただ、我々は直近、この混沌とした腐敗自民党政治を放ってはおけない。22世紀まで待てない -
資本主義は強者が閉じていく仕組みで、民主主義は弱者に開かれていく仕組み。資本主義と民主主義はとても奇妙な連携をしている。民主主義は言わば選挙であることは間違いないが、その制度の限界や矛盾を鋭く、しゃべり言葉にも似た調子で突いている。無意識データ民主主義の提案は、なるほど!と思う面もあるが、まだまだ壮大な理想にも聞こえる。まずは小規模な単位で実験を繰り返しながらその意味を証明していくことが必要か。
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選挙制度そのものが古いという考えに目から鱗、新しい考え方がとってもいい刺激になる。
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精読の域ではないが、若干の感想を記す。
先づ初めに、注目した文言を記す。
一 「民主主義は最悪の政治形態である。
これまで試みられてきた、民主主義以外の全ての政治体制を除けばだが」 チャーチル p38
二 「20歳の時にリベラルでないのなら情熱が足りない。40歳のときに保守主義者でないのなら、思慮が足りない」 チャーチル p90
三 「数十年先の社会にこそ影響を与える政策に、80代の政治家は一体どんな責任をとれるのだろうか?・・・・言葉が通じず言葉も発さない死者は、一体どんな反省の弁を聞かせてくれるだろうか?・・・・」 p232
アルゴリズム或はコンピューターのロジックを駆使した輿論形成制度が開発されたとしても、その結果を受託、受諾して行使、執行する人物を必要とする。
その執行者を民主的な選挙で選出せざるを得ない。
その執行者は、民意を体して執行する。
民意とは何か? 今現在只今の生を得てゐる人々の意見だけではない。
その民の祖先、縁者、そして広くはその共同体に纏はる死者の声を聴かねばならない。
二のチャーチルの保守主義の本義はこの事を意味してゐる。
筆者は「保守」の真の意味を理解出来ず、唯「頑迷固陋」の意味としか、捉へてゐない。
三の「数十年先の社会にこそ影響を与える政策に、80代の政治家は一体どんな責任をとれるのだろうか?」 否、責任を取るのが真の政治家の使命である。
コンピューターロジックなりを使つてより詳細な民意を探る価値、仕組創設の意味は認める。
その民意及び過去から未来に渡る同胞の意を体して執行する為政者の資質は「ネコ」で済む訳は無い。
筆者はその仕分け、詰り「新規の民意創出の制度設計とその結果を体する執行者の役割、資質の仕分け」が出来てゐない。
為政者の資質の涵養は、正しくその同胞の「民度」「資質」に関つてゐる。
チャーチル曰く「決して屈するな。決して、決して、決して!」の如く、粘り辛抱強い国民教育が必須と感じた次第である。
本書は筆者の言及通り「黒船のトイレの部品」p242 でしかない。 -
民主主義は政治の劣化を進行させ経済を低迷させているとして、民主主義の調整や改良を行い立て直すあるいは既存の民主主義国家に見切りをつけて新国家を試行するなどの思考実験を行うも良い結果は得られないことがわかる。
そこで著者が提案するのが無意識データ民主主義、インターネットや監視カメラが捉える会議や街中・家の中での言葉、表情やリアクション、心拍数や安眠度合い…… 選挙に限らない無数のデータ源から人々の自然で本音な意見や価値観、民意を引き出しそれらを足し合わせることで歪みを打ち消す。そしてそこからアルゴリズムに意思決定を行わせる。そう、エビデンスにより目的を発見し政策を立案するのです。
選挙もなくなり特に意思表明を行うこともなく社会が良い方向に向かっていくとしたらこれほど素晴らしいことは無いかもしれません。ただし、既得権益者の政治家はそうは思わないでしょうが。
著者も自分でも政治や経済は門外漢と断りをいれているようにこのあたりの状況説明は少々荒っぽい感じになってますが、その分小気味よく展開するのでとても読みやすかった。また、2011年に出版された「一般意思2.0」東 浩紀著との類似性が認められますが、これよりもデータを集める範囲が広くなって更には為政者を完全に排除しているところにテクノロジーの進化も見て取れます。 -
正直難しくてよくわからなかった。ただ著者の言う通り世界が来るとしたらもうそれは人類と呼べるものじゃないんじゃないかな。もう違う種の誕生とも言えるんじゃないか。