22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる (SB新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 今、注目の論客。書籍を読むのは初めてだがビシバシと切りまくる。『革命か、ラテか』という、投げやりにも聞こえる一言も妙に説得力がある。民主主義を立て直す方法として、闘争・逃走・構想を挙げているが、構想に一番多くのページを割いているのがせめてもの救いか。

  •  これまた四半世紀以上先に進んでいる知識人だなぁと思った。東浩紀の「データベース社会」との関連で言えば、「データベース社会」全体の非可視の「データベース」から、AIを使ってまるまるすべての「データ」を取り出し全体最適化を図るという構想でもあるのではないかと思った。そう考えると、落合陽一のデジタルネイチャーの話とも少し交えてなにか話を作れそうな気もする。

     ただやはり、感情を読み取るなどはプライバシーの権利への挑戦であるから、そういったものを今実装しようとすると、国際的に非難轟々になってしまうよなぁと言う感じである。

     しかし、実際の社会の方向性としては、日本がIT技術を活用するのであれば、大量のデータ活用など、その方に動いていくだろうとは思う。その未来のために今のうちに倫理的な側面のために議論しておくのも悪くないかもしれない。

     大学生の頃、ちょっとしたつながりで菅直人元首相と挨拶をしたという先輩と話したことがある。その人が「いい人だったよ」と言っていたから、汚職などは出てくるが、基本的には日本の政治家はいい人なのではないか、と思ってはいる。
     日本は国の借金が多く、経済成長はイマイチパッとしないが、トランプのような人が出てくるわけでも議会で暴動があるわけでもなく、極右政党が幅を効かせているわけでもない。大前提として馬鹿馬鹿しくはあるものの、そういうものと比べるとN党などはかわいいもので、安定しているという点では捨てたものでもなくうまくやっているのかもしれない。

     読んでいて、スマホやテレビのディスプレイがそこに映る「人間」の「人間性」を殺しているのではと思った。

     また、AIの責任に関連して、例えば自動運転で発生する責任をどう取るのかという問題は保険のロジックが応用できるのではと思った。自動運転のAIを使用する人が事故の発生確率に応じて定期的に料金を払い、個別の事故の発生時に積み立てたお金から補償を行う。責任の所在は、AIのアルゴリズムとそれを選択し使用するすべての人間という組み合わせにあるという建付けになる。AIは保険料の価格によって優れたものが残っていく…。そんな議論はもうあるのだろうか。全く知らないけれど…。

     これを国家に応用するなら、現在の選挙と同じく、統治AIの責任は、AIそれ自体とそれを生み出し選択した国民にあるということになる。やっぱり監視国家になってしまうのはどうなのだろうという感はあるが…。

     なんとなくまた一人土下座しなければならない人が増えたのではないかとビクビクしながら読んでいたのであるが、どうなのであろうか。意味がわからない感想だなこれ……。

  • とても本質的な内容。期待したい。
    ただ、我々は直近、この混沌とした腐敗自民党政治を放ってはおけない。22世紀まで待てない

  • 資本主義は強者が閉じていく仕組みで、民主主義は弱者に開かれていく仕組み。資本主義と民主主義はとても奇妙な連携をしている。民主主義は言わば選挙であることは間違いないが、その制度の限界や矛盾を鋭く、しゃべり言葉にも似た調子で突いている。無意識データ民主主義の提案は、なるほど!と思う面もあるが、まだまだ壮大な理想にも聞こえる。まずは小規模な単位で実験を繰り返しながらその意味を証明していくことが必要か。

  • 個人的に注目するサイエンティストの一人、成田悠輔氏の庶民向け本という感じ。
    息子がタイトルをみるなり、こういうことを書く人は薄っぺらい奴だと吐き捨てるように言ったが、いろいろとデータから考察しているので深い内容なのだよと説明したところでひろゆき氏並みの論破力でつっこまれるのでおとなしくしておくことにした。確かにばっさりとAbstractのポイントだけを残せば、政治と経済の結びつきを自動アルゴリズム化してしまおう、という感じになる。確かにばっさりと斜め読みしようと思えば読めてしまう。しかし、いろいろと経過をたどるとデータに基づく意思決定には変に人を関与させない方がいい点ではなるほど、と思える。これは安全性を高めるシステムの開発の議論でよく言われる手順書よりもシステムで強制的に危険な状況を回避する考え方と似た感じがする。うーん・・・。ただ政治家がネコになるくらいだったら、政治家なんて職種は淘汰されたらいいのにと思ってしまう。

    本当に淘汰されるだけの存在に人間はなるのか、というとちょっと違うのかもしれない。人間であるが故の非合理性、アノマリー、情動が及ぼす「悪徳」な部分が荒廃と破壊が想像の第一歩として価値ある存在になるのかもしれない。新しいルールメイキングは、アルゴリズムによって生まれる、だから人間の力で考える価値あることは、どうやってかき乱す(擾乱を与える)かなのかな?と漠然と思った。うーん、合理的に楽な方向を目指した結果、より一層めんどくさそうな世界に突入している感じがする(笑)。

  • 選挙制度そのものが古いという考えに目から鱗、新しい考え方がとってもいい刺激になる。

  • 精読の域ではないが、若干の感想を記す。
    先づ初めに、注目した文言を記す。
    一 「民主主義は最悪の政治形態である。
    これまで試みられてきた、民主主義以外の全ての政治体制を除けばだが」  チャーチル       p38
    二 「20歳の時にリベラルでないのなら情熱が足りない。40歳のときに保守主義者でないのなら、思慮が足りない」        チャーチル  p90
    三 「数十年先の社会にこそ影響を与える政策に、80代の政治家は一体どんな責任をとれるのだろうか?・・・・言葉が通じず言葉も発さない死者は、一体どんな反省の弁を聞かせてくれるだろうか?・・・・」  p232
     アルゴリズム或はコンピューターのロジックを駆使した輿論形成制度が開発されたとしても、その結果を受託、受諾して行使、執行する人物を必要とする。
     その執行者を民主的な選挙で選出せざるを得ない。
     その執行者は、民意を体して執行する。
     民意とは何か? 今現在只今の生を得てゐる人々の意見だけではない。
     その民の祖先、縁者、そして広くはその共同体に纏はる死者の声を聴かねばならない。
    二のチャーチルの保守主義の本義はこの事を意味してゐる。
     筆者は「保守」の真の意味を理解出来ず、唯「頑迷固陋」の意味としか、捉へてゐない。
    三の「数十年先の社会にこそ影響を与える政策に、80代の政治家は一体どんな責任をとれるのだろうか?」 否、責任を取るのが真の政治家の使命である。
    コンピューターロジックなりを使つてより詳細な民意を探る価値、仕組創設の意味は認める。
    その民意及び過去から未来に渡る同胞の意を体して執行する為政者の資質は「ネコ」で済む訳は無い。
    筆者はその仕分け、詰り「新規の民意創出の制度設計とその結果を体する執行者の役割、資質の仕分け」が出来てゐない。
    為政者の資質の涵養は、正しくその同胞の「民度」「資質」に関つてゐる。
    チャーチル曰く「決して屈するな。決して、決して、決して!」の如く、粘り辛抱強い国民教育が必須と感じた次第である。
    本書は筆者の言及通り「黒船のトイレの部品」p242 でしかない。

  • 民主主義は政治の劣化を進行させ経済を低迷させているとして、民主主義の調整や改良を行い立て直すあるいは既存の民主主義国家に見切りをつけて新国家を試行するなどの思考実験を行うも良い結果は得られないことがわかる。
    そこで著者が提案するのが無意識データ民主主義、インターネットや監視カメラが捉える会議や街中・家の中での言葉、表情やリアクション、心拍数や安眠度合い…… 選挙に限らない無数のデータ源から人々の自然で本音な意見や価値観、民意を引き出しそれらを足し合わせることで歪みを打ち消す。そしてそこからアルゴリズムに意思決定を行わせる。そう、エビデンスにより目的を発見し政策を立案するのです。
    選挙もなくなり特に意思表明を行うこともなく社会が良い方向に向かっていくとしたらこれほど素晴らしいことは無いかもしれません。ただし、既得権益者の政治家はそうは思わないでしょうが。
    著者も自分でも政治や経済は門外漢と断りをいれているようにこのあたりの状況説明は少々荒っぽい感じになってますが、その分小気味よく展開するのでとても読みやすかった。また、2011年に出版された「一般意思2.0」東 浩紀著との類似性が認められますが、これよりもデータを集める範囲が広くなって更には為政者を完全に排除しているところにテクノロジーの進化も見て取れます。

  • ●富める者をさらに勝たせることが得意な「暴れ馬・資本主義」に「民主主義という手綱」をかけることで拮抗を保ってきたのが、ここ数十年の民主社会の構図であった。しかし、21世紀を迎えた現代においてはそのバランスが崩れかけている。資本主義の加速と民主主義の重症化。21世紀に入り、政治や政策が閉鎖的で近視眼的になる「民主主義の劣化」が起きている。

    --->Internet/SNSの出現により、扇動・憎悪・分断・閉鎖が台東した事が一因。
    凋落の20年と巨大IT企業の出現時期は一致。

    ●「若者が選挙に行って『政治参加』したくらいでは何も変わらない」と断言する。全有権者に占める 30歳未満の有権者の割合は 13.1%に過ぎず、投票率が上がっても超マイノリティのままだから。
    -->既存の枠組みの中で動いていても、ガス抜き以上の効果はなく、選挙や政治、民主主義というゲームのルール自体を作り変える必要がある。

    ●民主主義への典型的脅威とは、①政党や政治家によるポピュリスト的言動、②政党や政治家によるヘイトスピーチ、③政治的思想・イデオロギーの分断、④保護主義的政策による貿易の自由の制限、の4つだ。横軸に各国の民主主義度合い、縦軸に各4指標の過去20年間での増加分をとったグラフを作成すると、見事にどの指標も正の相関関係が見られた。
    トランプ元大統領のような政治家が増え、政治的な分断の高まりに乗じて極端な政策を掲げる。将来の税制や貿易に不透明感が増し、事業活動と経済政策を鈍らせる。

    ●民主主義と闘争する方法はいくつか考えられるが、既得権益者らが自らの地位を脅かすことはしないため、始めから詰んでいる。
    ●政治的に逃走をする「デモクラシー・ヘイブン」という考え方もある。だが、それは成金的発想であり、問題を根治することはできない。
    ●民主主義的意思決定における入力と出力の質・量を拡げる「無意識データ民主主義」は、無数の政策や論点に同時並行して対処できるため、かつてない拡張可能性と自由度を獲得できる。
    --->行き着く先は政治家不要論。人々の日々のデータ(感情、所得、判断など)を 
      吸い上げ自動で適切な政策を定義、賛否を自動で判断すれば良い。apple watch
      がエスカレータではなく階段を登らせるかのごとく。
    --->不完全で短期的視野に陥りやすい人間に判断させるよりもDAOなりで自動決裁
    される社会のほうが実は健全な運営ができるのでは?(感想)

    ●液体民主主義:政党、政治家ではなく自分にとって重要な政策論点ごとに投票を実施、持ち点(e.g.100票)を自由に按分できる。

    ●国会議員に長期インセンティブを持たせる(e.g.シンガポール)
     政府の大臣の給与は30-40%がGDPなどの指標の達成度に応じたボーナス、
     基本給は国の高所得者トップ1000名の中央値×0.6,ボーナスは所得中央値の成長率
     所得下位20%の成長率、失業率、GDP成長率など。
     --->固定給の日本よりはマシだがこれでも近視眼的にはなる。長期年金的が理想。

  • 正直難しくてよくわからなかった。ただ著者の言う通り世界が来るとしたらもうそれは人類と呼べるものじゃないんじゃないかな。もう違う種の誕生とも言えるんじゃないか。

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著者プロフィール

夜はアメリカでイェール大学助教授、昼は日本で半熟仮想株式会社代表。
専門は、データ・アルゴリズム・ポエムを使ったビジネスと公共政策の想像とデザイン。
ウェブビジネスから教育・医療政策まで幅広い社会課題解決に取り組み、企業や自治体と
共同研究・事業を行う。混沌とした表現スタイルを求めて、報道・討論・バラエティ・お
笑いなど多様なテレビ・YouTube番組の企画や出演にも関わる。東京大学卒業(最優等卒業
論文に与えられる大内兵衛賞受賞)、マサチューセッツ工科大学(MIT)にてPh.D.取得。
一橋大学客員准教授、スタンフォード大学客員助教授、東京大学招聘研究員、独立行政法
人経済産業研究所客員研究員 などを兼歴任。内閣総理大臣賞・オープンイノベーション
大賞・MITテクノロジーレビューInnovators under 35 Japan・KDDI Foundation Award貢献
賞など受賞。近著に『22世紀の民主主義:選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』
(SBクリエイティブ)。

「2023年 『ゴースト・ワーク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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