絶対悲観主義 (講談社+α新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 知性が溢れ出るのを感じる。
    最近では三宅香帆、落合陽一を読んだ時にも
    感じた。大学関係者はその辺すごい。
    いろんな気づきを持っている、そう思う。
    P29ハーズバーグ(心理学者)の二要因理論の話。
    「満足」の反対は「不満足」ではなく、
    「没満足」である。どんなに不満足を解消しても
    満足にはならない。
    P34なぜ「日本が悪い」「時代が悪い」になるのか。
    じゃあ、どの国家システムなら「良い」のか。
    いつの時代なら「良い」のか。
    「マクロ他責の鬱憤晴らしは悪循環の
    起点にして基点」(P37)は名言だろう。

  • 逆に楽観主義では?と思うぐらいあっけらかんとしていた。うまくいくはず!て力んでうまくいかなかったときの絶望感。落差がないてのが悲観主義らしいです。読みやすかったけど、著者の人生の振り返りて感じで、著者を知ってる人は楽しめるのかな。

  • 著者の文章がとても自然で、まるで対談時に話しているかのようなリズムに感じられてとても心地よい。

    内容も、ユーモアを交えつつ「ハッ」とさせられる気付きが多い。

    「悲観的」「ネガティブ思考」「ネクラ」などは否定されがちな現代。基本的にネガティブ思考で失敗を恐れがちな自分にとって、著者の「絶対」悲観主義のススメはとても刺激的だし、背中を教えてもらう気持ちになれた。




    ◯絶対悲観主義はリスク耐性が高い。リスクに対してオープンに構えることができる。

    ◯人は「幸福になる」ことと「不幸を解消すること」を混同しがち。

    ・なぜ「日本が悪い」と批判するかといえば、要するに鬱憤晴らし。

    ◯世の中、すべてにおいて上手くいっている人など存在しない。誰もが何らかの問題を抱えている。鬱屈の大部分は自分の責任であって、それを自分で何とかするのが大人というもの。でも、それを直視したくない。なので、責任を転嫁できる相手を探す。そこで一番都合が良いのが「日本」というマクロシステム。そもそも国家システムに「完全なもの」などあるはずがない。

    ◎微分的な幸せの追求には限界があり、積分した総量にこそ幸せがある。

    ◯他人との比較、嫉妬こそが幸福の的であり、人間にとって最大級の不幸のひとつ。

    ◯不幸になるもうひとつのパターンは「他律性」。つまり、「人から幸せだと思われていることが幸せ」だと思い込むこと。

    ◎世の中の最大公約数的な価値基準に乗っかってしまうと、いつまで経っても自分の価値基準がどこにあるか分からなくなる。これは根本的な幸福の破壊。

    ◎幸福は、外在的な環境や状況以上に、その人の頭と心が左右するもの。自らの頭と心で自分の価値基準を内省し、それを自分の言葉で獲得できたら、その時点で自動的に幸福。つまり、「これが幸福だ」と自分で言語化できている状態こそが幸福にほかならない。

    ◯70代、80代になると、人間のレベルに差が出てくる。その根幹にあるのは、知性と教養。自分を客観視する。世の中での自分を俯瞰して見る。具体的なことごとの背後にあるものを抽象化して本質をつかむ。何よりも、自分の経験と頭と言葉で獲得した価値基準を持ち、精神的な自立と自律を保てているか。

    ◯戦争の悲惨さを訴えるだけではなく、さらに強力で現実的な抑止が必要。それは、「戦争がいかに損か」という現実的な認識を持つこと。道徳以前に、損得で考えるべき。一人ひとりが自分にとっての実利を考えることが、戦争抑止のための思考と行動をもたらす。
    →☆戦争体験者の「戦争ほど愚かなことはない」という言葉が心に響くのは、それだけ「自分事として、実利を考えた上での発言」だからではないか。道徳的なメッセージでは、どうしても説教されているようで反発したくもなるし、現実感がない。

    ◎振り返ってみて「あの戦争はやっといてよかった」などという例はない。

    ◯独裁者が率いる強権国家の最大のリスクは、独裁者が自分の死もしくは引退を現実問題として意識したときに陥る錯乱にある。

    ◎戦争抑止法の思案:条文一つだけ。「第一条 戦争状態に入った時点で内閣を構成する大臣および副大臣の二親等以内かつ十八歳以上の健康な者は全員直ちに身体的危険を伴う最前線の戦闘業務に従事しなければならない」。

    ◯(自分の行動や選択に対して)どの声を聞いて、どの声は聞かないのか。取捨選択が必要になる。

    ◯フォーマルな組織構造上のリーダーができることは限られる。チームに権限が委譲され、チームが自律的に動いて成果を出す。現場で仕事を動かすチームの力、とりわけチームリーダーの力がパフォーマンスを大きく左右する。チーム力がものを言う時代になっている。

    ◯会社全体の組織を云々する前に、自分たちのチームを良くするのが先決。組織全体のあり方はすぐにはどうにもならない。それでも現場で動く自分のチームについては、今すぐ変えられることが多々あるはず。

    ◎現状に問題を感じ、変革を起こしたければ、問題を組織構造や制度にすり替えないことが大切。新しい制度設計を待たずに自ら動く。とりあえずは自分の影響が及ぶチームに新しい動きを起こし、明らかな成功例をつくる。組織の他の人々に成果が見えれば、賛同する人も出てくる。その他大勢もそのうちについてくる。制度化やシステム化を考えるのはその後で十分。構造改革を待たずに動き出すのが本当の構造変革者。


    ◯人間が不動産物件化してしまう、それが人を獣にしてしまうマッチングアプリ(システム)の問題点

    ◯品の良さの最上の定義:欲望に対する速度が遅い

    ◎プロセスを楽しんだうえで手に入れたほうが、喜びもまた大きくなる。

    ◯品格:なりふりを大切に、足るを知る。

    ◯これからの世の中で最も価値がありそうなのは、頭の認知能力よりも他者への共感や関係構築などの社会的能力。だとすれば、リアルなコミュニケーションが得意な人の価値は。これからどんどん上がっていくかもしれない。スキルのデフレとセンスのインフレは中長期的に続くメガトレンド

    ◯チャップリンの名言:「人生はクローズアップでは悲劇だが、ロングショットでは喜劇だ」

    ◎「本質的」で「実用的」で「短い」。このさん条件を満たす言葉が人々の記憶の中で生き続ける名言となる。

    ◯自分にとってぐっと来るWhatさえあれば、Howは自然についてくる。

  • 思ったよりエッセイ色が強かった。元々著者はそういうテイストなのは知っていたが、今回は特に気になってしまった。

  • 経済学者である著者が、本人が心掛けている「絶対悲観主義」について述べた本。絶対悲観主義とは、物事はうまくいかなくて当たり前と考えて行動することで、この考え方が、社会生活をうまく乗り切っていくコツだと言っている。「絶対悲観主義」自体には、さほど魅力を感じたわけではないが、この本は面白い。著者は、自身を凡人であるかの如く語っているが、物凄い人物なんだと思う。友人はほとんどいないと言いながら、その人脈は厚い。多くの刺激を受けた。勉強になる一冊。

    「こと仕事に関していえば、そもそも自分の思い通りになることなんてほとんどありません。この身も蓋もない真実を直視さえしておけば、戦争や病気のような余程のことがない限り、困難も逆境もありません。逆境がなければ挫折もない。成功の呪縛から自由になれば、目の前の仕事に気楽に取り組み、淡々とやり続けることができます。これが絶対悲観主義です」p4
    「国家システムに「完全なもの」などあろうはずはありません。「日本が悪い」という人に聞きたい。じゃあ、どの国家システムなら「良い」のか。日本の裁判所や検察にも問題があろうし、中にはワルもいるでしょうが、アメリカやヨーロッパの司法制度にもわりとエグイところがある。当然ですけれど、中国の刑事司法に比べれば、相当マシな気がします。当たり前ですけど」p35
    「(よく生きている人とそうでない人)長い人生の中で、一方は好循環を、他方は悪循環を起こすので、どんどん差が開いていく。この差の根幹にあるのは何か。僕は知性と教養だと考えています。自分を客観視する。世の中で自分を俯瞰して見る。具体的なことごとの背後にあるものを抽象化して本質をつかむ。要するに知性です。何よりも自分の経験と頭と言葉で獲得した価値基準を持ち、精神的な自立と自律を保てているか。つまりは教養です」p52
    「(老化)ハードが劣化していくからこそ、ソフトの力がものを言う。ソフトまで劣化すると、人生100年時代が幼児退行の時代になってしまいます。健康問題は教養問題というのが僕の考えです」p55
    「近現代の主だった戦争の歴史を振り返ると、国や地域、戦争の原因と結果はさまざまですが、ひとつだけ共通点があります。それは「戦争反対」という大合唱の中で戦争になるということです」p59
    「(プーチンの考え)自分の後のロシアが心配で仕方がないのだと推測します。自分が指導者として現役の間に何とか後世まで続く道をつけておかなければならないという「責任感」がある。それが国益になると信じている。客観的に見れば狂気と錯乱でしかないのですが、本人は「今しかない」と判断したのではないでしょうか」p63
    「家に戻ってご飯を食べて、9時半にはベッドに入る。ほとんど小学生のような生活です。ベッドでしばらく本を読んだりしますが、遅くとも11時前には眠ります。この歳になると5時には起きてしまいます。そこからもうひと踏ん張りして6時まで寝る。これをひたすら繰り返す。このリズムをきちんとキープしていかないと、仕事のパフォーマンスがあからさまに低下します」p82
    「誰にとっても1日は24時間しかありません。論理的な帰結として、時間ほどはっきりとトレードオフを迫るものはありません。何をするかよりも「何をしないか」を決めておくことが時間管理の要諦です」p85
    「柳井正さんを例にとると、柳井さんは原則的に仕事絡みの会食はしないと決めているそうです。4時に仕事が終わった後は予定を入れずお家できっちり休息する。何をしないかをはっきりと決めているからこそ、ストイックでアスリート的な生活ができるのだと思います」p86
    「ビジネススクールで教えるようになって20年以上が過ぎました。講義というのは芸事に似た面があります。経験を重ねていかないとうまくなりません」p93
    「(マーケットインとプロダクトアウト)マーケットインは、世の中のマーケットがどうなっているかを見て、それに対応しようという考え方です。プロダクトアウトは、これがいいんじゃないのってものをまず出してみて、マーケットの反応を見る」p95
    「今の世の中は繋がり過剰のように思います。SNSでは「友達申請」というのがありますが、友達は「申請」してなるものではありません。しょせん体はひとつ、時間は1日24時間しかありません。繋がっている人の数が広がった分、一人一人との関係が希薄になるのは論理的必然です。昨今の「デジタル友達」というのはしょせんその程度の繋がりで、僕の友達の定義には当てはまりません」p114
    「民主主義が機能しすぎるとポピュリズムになる」p144
    「(立って話すオンライン講義)やっていて面白いことに気づきました。スタジオで座って目の前のカメラに向かって話すよりもずっと調子が上がるということです。リアルなセミナーではないので聴衆はいないのですが、ステージに立って話すと言葉の出方が違うと実感しました」p162
    「インターネット以前のアナログ時代と比べて、現在ではけた違いに多くのオンラインメディアが情報を発信しています。その結果、何が起きたか。人々の文章を書く能力が著しく劣化しました。僕自身がその業界にいるからよくわかるのですが、この傾向は間違いありません。PCとネットが誰にでも使え、コピー&ペーストし放題ということになると、人間の本性からして文章を「サクッと」書くようになります。すぐにクリックして別のページに行けるので、読者にしてもじっくり文章を読む機会は減る一方です」p165
    「リモートワークが進んでいくほど、生身の人間を相手にしたコミュニケーション能力は劣化していくのではないか。だとすれば、リアルなコミュニケーションが得意な人の価値は、これからどんどん上がっていくかもしれません」p166
    「僕のケースでもそうだったのですが、失敗した本人はできるだけ早く汚名を返上したいと思う。何とかして、一部でもいいから損失を取り返せないか考える。だから、中途半端な状態で動き出して、さらに悪い状態に陥ってしまう。ここに問題があります。立ち向かうエネルギーがないときに頑張るのは自滅行き特急列車に乗っているようなものです。頼りになるのは「待つ力」です」p176
    「高峰秀子さんの名言に「言ってわかる人には言わないでもわかる。言わなきゃわからない人には言ってもわからない」があります」p186
    「作詞家の秋元康さんの名言「記憶に残る幕の内弁当はない」があります」p188
    「藤沢武夫(本田宗一郎の元で経営を担当(副社長))「経営はアートであり、演出の基本は意外性にある」」p192
    「ウォーレン・バフェット「われわれが歴史から学ぶべきことは、いかに人々が歴史から学ばないかということだ」」p194
    「(老後の考え方)若いころは「迷ったらやる」というのがイイと思っていました。実際にそうしてきたつもりです。しかし今はもう「迷ったらやらない」ことにしています。自分の強みも弱みも、好き嫌いも、得手不得手もイヤというほどわかるようになりました。迷う時点で、自分の土俵から外れています」p228

  • 共感するところが多い作品。この本を読むことにより、新しい言葉を覚えることができた。GRITである。Guts(根性、やる気)、Resilience(復元力、やり返す力)、Initiative(牽引力、自発性)、Tenacity(執念、諦めないこと)。
    このGRITは様々な本等で良く人生を成功させるための必須の要素として語られている。しかし、著者はそのような要素、人生における努力は不要であると説いている。
    GRITで構えていても物事はうまくいかないことが経験則上わかりきっているからである。
    周りを気にせず、上手くいかないことを前提にして、一歩踏み出すこと。結果を気にせずに、期待せずに一歩踏み出すことが大事なのだ。成功は初めから期待せずに、まず始めること。そして上手くいかなくて、当然のことと考えておくことが、人生を生き抜いて行く上では必要だと説く。この考え方には激しく同意する。
    最後の章の歴史的な名言が、それまで展開してきた著者の考え方・文章内容を総括するようになっており、スッと腑に落ちるようになっている。

  • 満足の反対は不満足ではなく、没満足
    給料を上げても満足じゃない

    みんな幸せになりたいが、幸せの形はみんな違う
    白い巨塔が幸せな人も黒い巨塔が幸せな人もいる

    自己評価は意味がない
    自己認識は他者認識とのギャップを知るために必要である

    欲望の速度

    美しい風景を探さず、風景の中に美しさを見出す

  • 私は悲観主義だった、と、思い出せました。人生の終焉に向かって、潔く品よく、幸せに生きられるような一つの指南書でした。人生折り返してその次を考えてしまう方に良いかもです。

  • 楠木建の人生観にまつわるエッセイ
    彼の本が好きなら良し

  • 少々期待外れ。「なるほど」と共感するものもあった。

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著者プロフィール

経営学者。一橋ビジネススクール特任教授。専攻は競争戦略。主な著書に『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(東洋経済新報社)、『絶対悲観主義』(講談社)などがある。

「2023年 『すらすら読める新訳 フランクリン自伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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