あなたのための短歌集 [Kindle]

著者 :
  • ナナロク社
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感想・レビュー・書評

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  • 気になった歌が2首あった。


    絶対的な愛を短歌にしてくださいというお題に対して提示された一首

    服を脱ぐたびにあなたは神様を辞めてわたしの獣になった

    わたしの前ではあなたは、他の人には目もくれない獣になる。万人を愛する神様が、そのベールを脱いで私だけに絶対的な愛を注ぐ獣に戻る。みたいな

    「愛の絶対性」を汚いイメージの「獣」にあてるのはよくある手法?なのかはよく分からないが、スピッツ なんかを思い出した。


    ここにいるのは優しいだけじゃなく 偉大な獣/スピッツ 『運命の人』


    ここで気になったのは、絶対的な愛に対する「相対的な愛」の象徴として、「神様」を引き合いに出しているところだ。

    神様は、万人を、隣人を、同じように愛せよ、と言うのでは?そこにあるのは限りない平等性、絶対的な愛なのでは、、?



    違う歌集から一首

    神様は君を選んで殺さない君を選んで生かしもしない/『つむじ風、ここにあります』


    そこには、無限に続くような平等性がある。ますます分からない、、



    2首目は、宇宙をテーマにしたもの

    宇宙とは膨張のみをプログラムされ置き去りにされたみなしご


    ここでの「みなしご」から読み取れるアクチュアルな、手触りのある、「孤児」のイメージは単なる表象で、その裏には何か非物質的で絶対的な("神"とでも言えるような)ものがある。

    絶対性を突き詰めること。膨張し続けて、神様は「全て」になる。ぼくらは神様の一部として、愛を表現する。それは、ぼくらそれぞれの愛を、それぞれ異なるあり方で浮き彫りにする、まさに相対的なものになっていくのでは?


    限りない絶対性→相対性?
    限りない相対性→絶対性?


    獣のように、狙った獲物だけをとにかく追いかける(愛する)こと。他の獲物への相対的な注意がまったくのゼロになったとき、突き詰めればそれは絶対的な愛へと昇華されるのではと思う。




    短歌とか、愛とか、絶対とかを語る上で、短歌の中の〈わたし〉とか、わたしたちを超えた超越的な、神格的な主語のことを考える必要はあって



    でもその辺の関係性や自分自身を、まだうまく定められないままでいる。

  • ひとつひとつ、指でなぞるように1ページを愛しく思いながらよんだのはこの本が初めてかもしれない、と思うほどに素敵な本だった。
    どの短歌も本来はだれかの為で決して私宛なのでは無いのだが、それでも琴線に触れた短歌を見て思わず涙を零した。

  • 1人の読者のために書いた短歌が、なぜわたしの心を奪ったのか分からないです、とてもすごいこと、それはすごいことです。だって日本に生きているたった一人の人間に向けて書かれた短歌が、こんなふうに1冊の本になっていること自体がエゴでしかないわけなのに、それが誰かに読まれていて、社会で誰かを救っているというのは、すごすぎませんか、、、

  • ・言葉選びやひとつひとつの句の構成がすてき
    ・テーマ渡されてそれがこんな風に昇華されるのか〜という感動がある
    ・これだけの短い文章にこんなにメッセージ性が詰まるものなのか!という驚きがあったので自分でもチャレンジしたい

  • とてもいい句、自分はそれを欲する心境ではなかったのであまり響かず。

  • 著者が「こういう内容で短歌作ってください」との依頼を受けて特定の個人に送った短歌を、依頼者から送ってもらって一冊の本にしたもの。見開きで右ページに依頼内容、左ページにそれをもとに作られた短歌が掲載されている。
    私のために作られたわけではないのに、心臓を射抜かれたような気持ちになる歌がいくつもあった。以下、短歌をそのまま載せるのは良くないと思うので番号のみ…

    No.022
    かわいい歌。二人が『ぶつかりながら』というのが良い。ぶつかるは喧嘩や不仲ばかりを表現しているわけではないと私は解釈した。
    No.026
    子ども目線での歌。私も昔はきっとこんなふうに思ったはず。でも今となっては母目線で読んで「お母さんないちゃうよ~」ってなってる。
    No.033
    モヤモヤがテーマの歌なのに、なんでこんなに明るさ(物理的な明るさ)が感じられるのか。すごい。
    No.064
    かわいい。なんかかわいい。
    No.068
    学校の先生がテーマの短歌。私は学校に対していやな記憶ばかりあるけど、この歌のようなこともあったんだろうな、私が気付かなかっただけで。
    No.078
    ぴんと張り詰めた日常がふっと和みそうな歌。四角四面な私のために誰かが依頼してくれた歌かな、ってくらい私にドハマリした歌。泣いちゃうよ。
    No.094
    これ読んで泣かない人いる?????????????

    ・ふと浮かんだこと
    他人様が他人様に宛てた短歌で涙する私のどうでもよさ

  • どれひとつとして自分のために書かれた言葉などはいのにどうしてこうも救われるのか
    言葉のもつ可能性や祈りが詰まった一冊

  • 世界でたった一つのお守りのような言葉で紡がれた短歌。この中のどれもが、あとがきにもあるように、あなたのためであり、誰かのため。100の短歌の中には自分のお守りにしたい歌もあり、胸にすとんと落ちていく歌もあり、やっぱり私も短歌が好きだなと思った。

  • 歌人・木下龍也さんが「依頼者からメールで届くお題をもとに短歌をつくり、便箋に書き、封書にして届け」たものから、100首を収録した短歌集。

    みんなが様々な悩みを抱えて、お守りのような言葉を求めていることがいじらしいと思った。
    木下さんの、暗に明にお題やメッセージを含ませた短い言葉たちに惚れ惚れした。

  • 3教室を生き抜くため
    違いとは間違いじゃない窓ひとつひとつに別の青空がある

    10不平等だからこそ生きたいと思える
    大きさも深さも違う花瓶にはそれぞれ似合う一輪がある

    11タイムリミットを感じる27歳独身への誕生日祝い
    お手本を見終えたきみは卓上でもっとも上手くケーキを食べる

    26こんな世界に生まれた子は幸せになれるのか?未来に希望が持てる短歌
    いじわるな星だとしても母さんがそこにいるなら生まれてみるよ

    33たくさんの選択に悩んでも大丈夫だと思える
    「悩む」とは想像力に火をつけて無数の道を照らすことです

    40頑張らなくてもいいんだよ
    もがくほどしずむかなしい海だから力を抜いて浮かんでいてね

    45すぐに悲しくなったりつらくなったりして、楽しい日々があることを忘れてしまう。憂鬱に飲み込まれているときでも光を思い出せるような短歌
    かなしみは寒がりだからすぐきみの胸の暖炉に集まるんだね

    52長い間片想いしていた相手からもう前に進む
    ふりむけば君しかいない夜のバスだから私はここで降りるね

    71好きなものや好きな人をずっと大切にできるやさしい祈り
    宝箱あけっぱなしにしておくよこわれたままで帰ってきてね

    72二十代後半の焦り
    ゆっくりと翼を手入れした君はどんな風でもきれいに乗れる

    79夜型に胸を張れる
    これから続く線路への点検は無数の夢の外で始まる

    92安定した幸せへの、そわそわする幸福感
    足のつくことに戸惑うこれまでは溺れるだけの海だったから

    100生きたいと思える短歌
    君という火種で燃えるべきつらくさみしい薪があるんだ、おいで。

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著者プロフィール

一九八八年山口県生まれ。歌集は『つむじ風、ここにあります』『きみを嫌いな奴はクズだよ』(ともに書肆侃侃房)『あなたのための短歌集』『オールアラウンドユー』(ともにナナロク社)。その他、短歌入門書や共著歌集がある。

「2024年 『現代短歌パスポート3 おかえりはタックル号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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