この部屋から東京タワーは永遠に見えない (集英社単行本) [Kindle]

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  • 集英社
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感想・レビュー・書評

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  •  地方のマイルドヤンキーは、ノンフィクションライターや、社会学者が調査して、記事や新書にしてくれるが、この小説は東京に住む30歳前後の男女の話。
     文中とても良く出でくる慶應、早稲田(ちょっと馬鹿にされている)に入学しているような、偏差値上位の人達の生態、悩みについての一人称の詩的小説。
     港区女子、毒親、パワハラ、鬱病、Tinderなどマッチングアプリ、麻布十番、西麻布等.30歳のキーワードを身近に感じている人達にとってはすごくささる小説だったと思う。自分の感想としては、「こんなんなってたんだぁ」でした。

     地方と東京の違いが悲しかった。「上には上がいる」を知ってからの戸惑いが悲しかった。
    本当か嘘か分からないので、何とも言えないが、
    時代の空気感、雰囲気を後世に残す作品になるんのではないでしょうか?知らんけど
     

  • 東京の憧れ、切なさがぎっしり詰まってますね。

  • 『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』
    (麻布競馬場)

     東京近郊の町に生まれ育ち、東京の大学へ通った40年前のわたしに、懐かしさと甘酸っぱさと情けなさをさまだらに混ざりあせながら、現実世界を描いてくれる。止めることができない読書の時間となった。

     「懐かしさ」の要素は大学に進学してその存在に初めて気づいた“育ちの違い”に愕然としたこと。それさえ今この歳になって感じるのとは違って表面的ないところから見えてくるものだけだったのに、彼ら、彼女らは輝いていた。おそらく麻布競馬場さんもそういった「向こう側」の人なのではないかと、、。
    でも、若さはそういう眩しい者とも同じ空間、時間を共有することを厭わなかった。そのあとの落込みはこの小説に描かれているとおり深いものがあったけど。

     「情けなさ」はそこから掘り起こされてくる。一生懸命勉強して大学合格したと時迄の希望はその楽しいキャンパスライフで徐々に萎んでいった。父の期待、姉の協力、母の苦労。それ迄自分ひとりが頑張ってきたと思っていたものの裏で支えていたものが見えてきたときに自分に襲いかかってきた。

     「甘酸っぱさ」はまさに時代の空気だったように思う。あの頃の東京の街はどこに行っても自分にはピカピカだった。特に夜の新宿や渋谷の繁華街のネオンや高速の渋滞で並ぶタクシーのライトの列が交差する絵は心地よい記憶と連夜の酔いの失態の記憶が絡み合って浮かんでくる。

     時代が変わるというのはこういうことなのだ。とこの作品を読んで感じた。20第後半の頃酔うとエラぶって他人に『あの人たちは過去を生きた人。俺たちは未来に向かって生きる人間。時間は未来に向かって開かれている』言っていた。(嫌なヤツだ)
     もう私も過去の人だ。繰り返される日々は現在のこと、未来のことを目にしてもそれは過去の出来事を確認する方向に向いている、あるいは、その意味を探る方向に向いていて、時間や空間を滑らかに滑って行こうとしない。

     中学生の時に村上龍の『限りなき透明に近いブルー』を読んだとき感じた、自分が生きている世界と思っている世界はごく小さな、自分だけの世界なのではないかという感覚。そしてそれは、大学に進学して核心に変わり、今はそれは必然で、永遠に続くであろうと記憶に刻もうとしている。
     
    *現代カタカナ語を随分と覚えた。



    マッチングアプリ:ペアーズ
    ーーー日曜日はいつもこうだ。美幸はいつもお酒を飲んでしまう。人と一緒にいるための楽しい手段だったはずのお酒が、今や人の不在を埋めるための麻薬になっている。話す相手も、独身のつらさを気軽に吐き出せるSNSも失った美幸は、いつも吾輩に語りかける。芝浦の静かな日曜の午後が、静かに過ぎてゆく。

    大街道:愛媛県松山市

    カーサブルータス:建築・住宅雑誌

    dancyu: 全国の食いしん坊のための食と暮らしを豊かにする体験型メディアです。

    モンキーブレッド: スパイスとバターにディップしたパン生地(もしくはビスケット生地)をクグロフケーキ型に詰めて焼くちぎりパン。 ナッツ類、ハチミツやシナモンにたっぷりのバターの風味をきかせたり、家庭によっていろいろなアレンジがあります。

    互いを見下し、でも見下すに足りる成果はなく、結果僕らはみんな雰囲気だけでした!と気付き、低い地べたで、みんな気まずそうにしていました。

     本物の文化人というか、文化資本に囲まれ、それを吸い込みながら育ってきた人が慶應にはたくさんいました。お父さんがデザイナーとか、お母さんが美大の先生だとか、やっぱりそういう子たちにたひと目で分かる雰囲気があったし、彼ら自身もバンドをやっていたりと、「向こう側」にいました。

  • ネット等で話題になっており、「面白い」との書評もあったので、手に取った。
    一気読みしてしまったが、虚しさが残る読み物であった。

    この時代、人生の選択肢は多様化している。一方で人の価値観が必ずしも進化していない現実があることを突きつけられた。金、学歴、ルックス、会社・職種、出身、人脈・・・といったことで優劣をつけて、人を見下したり、人に嫉妬する。
    特に男女の出会いの機会がマッチングアプリ等にシフトしていく中で、この手の情報で人を識別する傾向が強くなっているのでは、との印象をもった。

    そのような苦悩と葛藤の事例を田舎から東京に来た様々な人物像を使って小話に仕立てあげている。特に登場人物が人と自分を比較し、自ら不幸の淵に落ちていく様が悲しい。

    自分の幸せを明らかにし、追求すること。その中で必ず出てくる挫折を乗り越えるための術を身に着けること。生き甲斐とも思えることを見つけること。そして人と比較することが不幸の始まりであることを認識すること。
    その大事さを実感させられた読み物であった。

  • 最初のストーリーが良い。
    先生も挫折したことあるよ、と聞いた生徒たちは羨ましい。

  • 2024/04/02

  • 他人の、東京へのコンプレックスとか郷愁とか嫉妬とかの濁った気持ちを煮詰めて、グラス何杯も喉に流し込むような気持ち悪さ。
    某巨大掲示板のまとめを見てるようだ。
    気分が滅入る、読了感は悪い
    だが、つい覗いてしまう

    最初の話の切なさに心打たれて読み進めると、だんだんと気分が悪くなる。
    特に最後の話は、「してやったり感」が透けて見えてイラッとした
    ショートストーリーだから次々読めてしまうが、その分、何度も嫌な気分になる

    ってか東京ってこんな街なのか?
    いつどこに住んでても、考え方一つでどうとでもなるし、登場人物が東京にこだわる理由がわからない。いや、楽しい街ではあるけど。
    こんなもの読んでる時間があるなら、湯船につかって暖かい布団でさっさと寝ましょう

    人には全く薦められないが、でも読んだ人の感想は気になる、そんな作品。

    でも色々考えさせられてしまったので、星4!

  • 寺山修司の、競馬は人生の比喩ではない、人生が競馬の比喩だというフレーズがあるが、それがまだよくわかっていない。著者はこのフレーズを知ってるんだろうな、解釈を知りたい、理解したい、とおもった。

  • 2023/11/1
    全方位的に重くなる
    住む場所とか居る場所とかにこだわることのなくなった自分はある意味歳をとったってことかな。
    なんらかの形で似たようなことがあったようななかったような
    今はもう思い出せない

  • 筆者と同じ91年に生まれ、大学まで関西で、就職してから上京してきた自分には刺さるものがあった。

    でもこの本に共感できない人の方が幸せなんだと思う。

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