黒化する世界 ――民主主義は生き残れるのか?―― (扶桑社BOOKS) [Kindle]

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  • 北野幸伯さんは19歳からモスクワに留学(モスクワ国際関係大学国際関係学部卒)し、「ロシア政治経済ジャーナル」を配信する。2018年からは安全のため家族と日本に拠点を移した。佐藤優さんやエマニュエル・トッドさんのようにロシア側の視点も提供してくれる人と言えそうだ。

    本書で登場する用語説明:
    ●黒化:独裁化し他国に武力侵攻する国家を指す(ロシアやベラルーシ、香港などは選挙制度の形式を取るが「なんちゃって民主主義」で限りなく黒に近い、という)。
    ●白化:民主化と定義する。

    これらは北野さん独自の言葉で、グレーの国々が「香港の国家安全維持法の成立」以降、黒に傾いたと主張する。民主主義陣営が独裁国家の勢力拡大(反政府勢力を武力弾圧し法整備して投獄せよ!)に有効な対策を示せなかったからだ。ミャンマーの軍事クーデター、アフガニスタンのタリバン復権、ベラルーシのルカシェンコ不正選挙など次々とグレー諸国が黒化した。そこにプーチンのウクライナ侵攻がNATOも国連も直接的に武力対抗できないことを証明してしまった。

    ーーでは、このまま世界は黒化してしまうのだろうか?

    北野さんは世界が黒化するとは考えず、プーチン政権は弱体化を辿って崩壊すると予測する。黒勢力の「ラスボス」である習近平も中から崩壊するだろう、と。

    その理由として、まず民主国家陣営から敵視されると経済成長が停滞することが挙げられる。事実、ロシアはクリミア侵攻以降は経済成長が急停止し、ウクライナ侵攻後は凋落。中国もコロナで停滞、不動産バブルも崩壊した。習近平が毛沢東の「共同富裕(文化大革命)」を再び掲げたことがその証拠で、経済成長ができないからこそ、富裕層から没収して貧困層への再分配を試みるのだ。
    そして最後は黒国家は「独裁政権だからこそ、崩壊する」と断言する。経済不安が続けばどの国民でも不満が貯まる。民主国家では政権交代することでガス抜きができるが独裁政権はできない。だから大衆の不満エネルギーは、仮想敵を外国に作って戦うか、時の政権に向かうのである。

    しかしこの主張には、毛沢東が文化大革命で得た成果の重要な論点が欠けているように思う。「大躍進政策」の大失敗で国民からも共産党内からも支持と求心力を低下させて崖っぷちだった毛沢東が、文化大革命で政敵の劉少奇や鄧小平を失脚させて、さらに「共産党を維持させること」に成功したということ。日本で言えば、小泉純一郎さんが「自民党をぶっ壊す」というスローガンで自民党政権を維持したのにも重なる。大国の政権は内部の一部を壊すことで一旦疲弊させた後の回復で政権の延命を図ることもある。

    とは言え、中国の人口が急減することは事実なので経済成長は難しいだろう。北野さんの予言通りになるか彼のYoutubeチャンネル「パワーゲーム(https://www.youtube.com/@user-fx4cj8gg2w)」を観ながら追っかけようと思う。

  • 米国の工作(意図)が手に取るように分かる素晴らしい本。
    イラク戦争は、基軸通貨を守るため、枯渇すると言われる原油を確保するため。
    カラー革命は、ロシアの石油企業をプーチンに買収阻止された報復などなど。
    裏側を繋げてくれます。

  • 読みやすくわかりやすいです。

  • 85 黒化勢力に勝つ方法~ 北野幸伯『黒化する世界 -民主主義は生き残れるか-』を読む

    ■■ Japan On the Globe(1285)■■ 国際派日本人養成講座 ■■

     Common Sense: 黒化勢力に勝つ方法
     ~ 北野幸伯『黒化する世界 -民主主義は生き残れるか-』を読む

     黒化勢力すなわち独裁国には、独裁主義からくる3つの弱点がある。それは自由民主主義の強い点でもある。
    ■転送歓迎■ R04.09.18 ■
    無料購読申込・取消: http://blog.jog-net.jp/


    【抜粋】


    ■7.国内の「黒化勢力」と戦う

     プーチンの失敗を例に、独裁国家の脆さを見てきました。これを反面教師として、自由民主主義国家としては、まさにこの正反対を行って、自らを強くする必要があります。具体的には、正確な情報の共有、衆智の結集、国内外での協力の3点です。

     しかし、我が国は国内に「黒化勢力」を抱えており、彼らがこの3つの面で、日本の力を弱めています。周辺の「黒化国家」群に対応するのと同時に、国内の「黒化勢力」とも戦わねばなりません。

     まず第一の「正確な情報の共有」ですが、テレビや新聞などの偏向オールドメディア、そして学校での偏向教科書、偏向教員が、嘘の情報を日本国民に流し続けています。たとえば、安倍元首相の海外からの膨大な弔意メッセージに我々は驚かされましたが、いかに偏向オールドメディアが、安倍元首相の功績に関して、正確な情報を伝えていなかったかを端的に示しています。

     第二は「衆智の結集」です。本来なら国会とは国民各層、各地域の「選良」が議論を通じて衆智を集め、国家としてより良い政策を考えていく場です。ところが立憲民主党などは、先年の「もりかけ」、今は旧統一教会問題などで、政府の足を引っ張ることしか、していません。

     政府与党も揚げ足とりからいかに逃げるか、という姿勢で、対「黒化国家群」との対応に関するまともな議論をする気がありません。議論の中核であるべき改憲問題でも、これらの「黒化」勢力は、改憲審議そのものを忌避して、憲法改正をストップさせてきました。国会が、本来の「衆智を集める」場として機能していないのは、「黒化勢力」の妨害によるものです。

     第三の「国内外の協力」では、たとえば左翼政党が本当に労働者の味方であったら、派遣労働制度、外国人労働者、製造工場の国外流出、農林水産業の衰退などの問題に真剣に取り組んで、労働者が活き活きと働けるような環境整備に取り組んだはずです。それによって、日本経済ももっと元気になっていたはずです。

     また、たとえばアジア、アフリカの貧しい国々との独自のパイプを作り、それらの国々との共栄政策を追求する、という事で、日本の国際協力関係を増進する事もできたはずです。

     我が国が政治経済の両面で停滞、衰退しているのは、情報、智慧、力の結集を阻害する国内の「黒化勢力」のためです。我が国の生き残りのためにも、こうした国内の「黒化勢力」を早く一掃して、自由民主主義の力を増進しなければなりません。

     ロシアの敗退が明らかになり、現代の「黒化勢力の核」は中国です。北野氏の新著では、中国に関する分析も詳しくなされています。我々の子孫が、この「黒化勢力」の下で、暗黒の暮らしをしなくとも良いよう、現在が踏ん張りどころです。そのためにも、「黒化勢力」の脆さをよく弁え、自由民主陣営の強みを国内外で最大限に発揮していくことが必要なのです。
    (文責 伊勢雅臣)

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著者プロフィール

国際関係アナリスト。1970年生まれ。19歳でモスクワに留学。1996年、ロシアの外交官養成機関である「モスクワ国際関係大学」(MGIMO)を、日本人として初めて卒業(政治学修士)。メールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」(RPE)を創刊。アメリカや日本のメディアとは全く異なる視点から発信される情報は、高く評価されている。2018年、日本に帰国。
著書に『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日』(草思社)、『隷属国家日本の岐路』(ダイヤモンド社)、『日本人の知らないクレムリン・メソッド』(以上、集英社インターナショナル)、『日本の地政学』(小社刊)などがある。

「2022年 『黒化する世界 ――民主主義は生き残れるのか?――』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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