ウクライナ戦争 (ちくま新書) [Kindle]

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  • 筑摩書房
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  • 2022年2月24日に始まった第二次ウクライナ戦争。「これだけの大戦争が何故起きてしまったのか。それは本質的にどのような戦争であるのか。戦場では何が起きており、日本を含めた今後の世界にどのような影響を及ぼすのか」、2022年9月末時点までの状況をロシアの軍事専門家が解説した書。

    ニュートラルかつ平易に解説しているので、とても分かりやすかった。日々ニュースを追いかけるのは苦手なので、纏まった解説書が参考になって有難い。

    プーチン大統領がこの戦争を始めた意図について著者は、「「自分の代でルーシ民族の再統一を成し遂げるのだ」といった民族主義的野望のようなものを想定しないと」説明がつかないと言っている。

    この戦争、全面戦争や核戦争へ拡大する恐怖を抱えながら、水面下で難しい舵取りがなされているんだな。いざとなったら行くところまで行ってしまう、ということか。「西側の対ウクライナ援助を思いとどまらせていたのは、これまで幾度も触れてきた西側の恐怖──ウクライナへの援助を戦争行為と見なしたロシアが戦争をNATO加盟国にまで拡大させるとか、核戦争に踏み切る可能性であった。「ウクライナが勝てるだけの支援」と「第三次世界大戦の回避」という二つの相反する要求の間で、西側は板挟みになっていたのである」。つまり、ロシア・プーチン大統領が倦んで停戦したくなるまでこの戦争、ダラダラと続けるしかないということなのだろうか?

  • 今回の戦争の概要と小泉氏の解釈、といったところ。
    いいとか悪いというよりは、新聞や雑誌よりは細かい情報が得られる、という程度に考えたほうがよさそう。正確性よりも速報性を重視した本だと思えばよいのかもしれない。
    継続中の戦争であることから、状況は変化し続けているし、情報も当初は出ていなかった情報が出てきたり、または誤った情報であったりするだろうから、この本に書かれていることが完全に事実であるということもないだろう。また、小泉氏の立場などもあって、バイアスがかかっていることも想定される。
    文庫の帯には「全貌を読み解く」と書いてあるが、そこまでではなく、いったんこれまでの情報を整理した、という印象。

    個人的には今回の戦争については以下の点に興味があるのだが、このあたりについては触れられていなかった。
    ・ロシア、ウクライナ双方の世界に対する情報提供、情報操作。特にウクライナがスターウォーズにおける帝国軍と反乱軍のようなわかりやすい(応援しやすい)状況を作り上げた手腕の巧みさ。こういう演出・操作をするのは広告代理店なのだろうか。
    ・そもそもウクライナは脛に傷を持たないのか。
    ・アメリカは積極的に武器を提供するが、積極的に和平交渉を提案しないのはなぜか。武器を提供することで、実戦のデータを収集できるからではないか。
    ・世界中の企業がこぞって援助し、戦争が広告媒体のようになっていたこと。これはどの程度の費用対効果があるのだろうか。
    ・イスラエルとパレスチナの戦争では、カミカゼドローンやアイアンドームといった兵器の活用、事前通達をしてのピンポイントの攻撃で短期で戦闘終了したが、今回は泥臭い戦闘をしている印象があるのはなぜか。

  • この戦争をどう理解するか? その構図の整理に適書。プーチンは非合理とも思えるこの戦争をなぜ始めたのか? 彼の動機とゴールの確かなところは未だ不明だけれども、現状いわゆるハイブリッド戦争とかではなく古典的戦争の様相を呈している。今後もし小型核が使用された場合エスカレーションを止める理論はないという。
    ウクライナと日本の地政学的な立場が日米同盟以外似通っていることから、中国の領有海域拡大に伴う有事に対してどのような準備が必要か、この戦争を鏡として日本の喫緊の課題を考える一助にすべき。

  • 第一級の戦争論なのかわかるほど、造形が深いわけではないが。

  • 戦争が何がどのように進んでいくのかがわかった。

  • 忙殺されるメディア出演のコメントや解説を改めてテキストに起こしたような内容は、戦争終結していないのだから、しょうがない。
    しかし、ウクライナ侵攻にいたるロシアの軍事思想を説明補足するために、未翻訳のロシア軍人や専門家の論文が多数出て来くるのは、さすがロシア軍事研究の第一人者たる証し。ちなみにBSフジプライムニュースで著者が出演されるときのYoutube配信は全てチェックしています。

    外交官出身のロシア専門家や即時停戦を主張する政治家とは一線を画す。敢えて誰とは言わんが。

  • 著者は、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以来、一躍時の人となった。
    刻々と変わりゆく情勢の中で、多忙なスケジュールを縫って本書をまとめ上げた著者のバイタリティーには感服する。

    本書は、2022年9月までを扱っている。しかしそれは、(「あとがき」にもある通り)この戦争を総括するタイミングとしてはまったく適切ではない。
    本書の賞味期間は非常に短く、あと1年もすれば存在意義が失われてしまうだろう。

    はっきり言って読みにくい。軍事用語が断りなく出てくるが、よほどのミリタリーオタク以外には厳しいだろう。
    また、およそ一般的とは思えないアルファベットの略語が無駄に多用されていて、ずっと前の方のページを繰らないと定義が見つからず、ストレスが溜まる。

    では結局、この戦争をどう理解すればいいのか?
    その答えを期待しながら読み進めるも、最後の最後になって「プーチンに開戦を決断させた動機は何であったのかは、現時点では『よくわからない』と認めるほかない」などと言われると、脱力するほかない。

  • 大変勉強になった。

  • ・2022年2月24日午前5時戦争開始
    ・ウクライナ戦争は正当性を欠いた「侵略」でありロシア側が悪い
    ・占領されていたブチャは陰惨な姿の遺体で埋め尽くされ集団墓地も作られていた

  • [期日](2023.05.23 火)
    [書名]『ウクライナ戦争』
    [著者]小泉 悠
    [出版]ちくま新書
    [概要]ウクライナ戦争は
        何故始まり何が起きているのか?
    [感想]
      ・戦争自体が終わってないので、
       全体の総括はまだ出来ない。
      ・ロシアとウクライナの歴史的背景、
       世界情勢の中での"綱引き"、
       プーチンの個人的こだわり、
       などの要因で始まった、
       大きな格闘戦。
      ・ドローンや、ミサイル、
       ロケット砲など、
       新兵器がお目見えするが、
       筆者は「古い戦争」と断じる。
      ・当事者にとっては、
       分析や評論はどうでも良い事。
       解決法が見出せないでいることに、
       言葉の限界を感じる。

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著者プロフィール

小泉 悠(こいずみ・ゆう):1982年千葉県生まれ。早稲田大学社会科学部、同大学院政治学研究科修了。政治学修士。民間企業勤務、外務省専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所(IMEMO RAN)客員研究員、公益財団法人未来工学研究所客員研究員を経て、現在は東京大学先端科学技術研究センター(グローバルセキュリティ・宗教分野)専任講師。専門はロシアの軍事・安全保障。著書に『「帝国」ロシアの地政学──「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(東京堂出版、2019年、サントリー学芸賞受賞)、『現代ロシアの軍事戦略』(ちくま新書、2021年)、『ロシア点描』(PHP研究所、2022年)、『ウクライナ戦争の200日』(文春新書、2022年)等。

「2022年 『ウクライナ戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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