- Amazon.co.jp ・電子書籍 (404ページ)
感想・レビュー・書評
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寝しなに少しずつ読んでゴール。ブクログですすめてもらい、手に取りました。「旅する練習」に続いて今年二冊目のロードノベルを堪能しました。ご馳走さま。
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AIが管理する未来を描く小説や映画は多いが、概ねディストピアが鉄板となっている。
しかし今作は、AIと人類のユートピア...対等な対話を描いている。
世界は「タイタン」と呼ばれる12基の巨大なシステムに、人間社会の全てをゆだねているが、そのうちの1機稼働年数の短いコイオスが機能低下に陥る、その原因を探るため若い心理学者(この世界の人間は労働をしていないため、あくまで趣味?の範囲の研究者のようだが)の内匠がカウンセラーとなることが内密に決められる...。
かなりのページ数であるし、ところどころ細かいことが気になるが、AIと人類の近未来に希望が持てる小説であったことが何より印象深かった。 -
AIとロボットが発達し、ほとんどの人間が"仕事"から解放された世界。ある日、心理学博士である主人公は謎の男から"仕事"を依頼される。その仕事とは、社会円滑化のために開発された『タイタンAIのカウンセリング』だった。
「面白い文章とは、"発見"がある文章である」
以前感想を書いた本に掲載されていた言葉だが、面白いSFはまさに"発見"の宝庫だと思う。
例えばこの『タイタン』の場合、人間が"仕事"から解放されると世界はどう変わるかが描かれているわけだが。事例の一つとして、仕事がなくなる→給与という概念もなくなる→貨幣経済自体が世界から消えている。
なるほど、と一つ発見したのもつかのま、主人公はその貨幣経済を「まだるっこしい」の一言でバッサリ切り捨てている。確かに貨幣なしで購入できる世界からすればお金のやり取りなんてまだるっこしいわな、とまた一つ発見し、主人公の思考が完全に『タイタンの世界』の住人であることも合わせて発見し、思わずニヤリとしてしまう。
SFジャンルでは当たり前のことなのかもしれないが、『キャラの思考がその世界に沿っていない』物語も多いので、つい嬉しくなってしまうのだ。
上述はほんの一例だが『タイタン』は発見、つまり面白さに満ちあふれた作品だと自信を持ってお薦めできる。練りに練られたSFを愛してやまない方はぜひ。
小数点までつけられるなら★4.5。 -
野崎まどにしては真っ当なSF小説。
真っ当であることが良いか悪いかは読者に委ねられるだろうけど、僕は嫌いではなかったかな。
好きな仕事も嫌いな仕事もあるけど、生きること自体が仕事なら、まあ仕事してやるかな、と。 -
AIのカウンセリング、人が仕事をしなくていい世界において仕事の意味を探す旅に出るAIと人間、AI同士の対話など
意外性のある設定と展開が多く面白かった
終盤の逃走劇が物語の中で少々浮いている嫌いはあるが
中盤のロードムービー的な展開を通して一つのテーマについて考え抜かれた先の結論は
普遍的であっても説得力のある良いもので、この手の書き方は著者の十八番のようにも思える
最後の写真の解釈ができていないのだけど、どう考えるのが正解だろうか? -
自分の中で最高傑作をほしいままにする作品。
飾りつけを過度にしない文体でするすると読みやすい。
しかし表現描写にはこだわっている箇所もしっかりと存在していることが素晴らしい読みやすさと芸術性を感じさせてくれる。
仕事に対して真摯に考え対話を続ける作中の行動力に感服する。
最後の答えにたどり着いたときストンを腑に落ちた。
記憶を消してまた読みたいと思うし、この内容を絶対に忘れたくないとも思う -
野崎まどの著作ということで期待して読んだものの、期待外れだった。
特には純粋機械化経済の社会増をどう描くのか、に期待したところ、確かにそれなりの解像度ではあったものの(描写の参考にはなった)サプライズはなく、特に作劇上は単なる背景設定的であって、物語の筋との密接性は低かったと思う。
仕事についても「仕事とは何か」という現代的一般論は語られつつ、あくまでバディであるタイタンにおいてのそれの論であって、「仕事をしなくなった社会や人間がどうなったか?」「仕事が忘れられた時代においてどう捉えられるか?」という観点での考察は乏しい。
また、登場人物たちも(当初こそ「えっ、仕事?」的な未来的リアクションだったが)普通に仕事していて、国連の上層含めて、彼らが仕事をしている動機付けや、非効率が許容されることの説明とかがなかった。なぜそれらは趣味ではなく仕事なのか、ポジションがあるのか、それは社会としてどのように要請され、誰がどのような形の報酬を払うのか。一切言及ナシ。
本書の主題は「AI社会で鬱病になったAIをカウンセリングする」というログラインに尽きる。ので、主人公とタイタンとの対等な人間ドラマが主題。だけどこのあたりは退屈だったし、あんまり驚きもなかった。
タイタンに身体があって立ち上がったり、歩いたり、別種のタイタンと戦ったり、人間の中にタイタンが現れたり、という外連味のあるビジュアル的描写はさすがだったけど、説得力に乏しかった。
というか対話してたのは蒸留した別系統モデルであって本体に影響ないんじゃなかったっけとか。能力的にもう少し色んな事わかるんじゃないかとか。機能制限とか社会上層部の在り方とかがトップダウン思考的ご都合主義で描かれすぎてたりとか。ステレオタイプ気味の人間ドラマを先行しすぎて、設定の粗や飛躍が気になったり、ついていけなかったりした。
ラスト1/4はまあおもしろかったけど、まあ、、、という感じ。
親和のアナロジーをうまく織り込んでるのはなるほどと思った。 -
DMMブックスにて読了
AIの発達によって人類には仕事がなくなった
このユートピア?といえる世界でAIの中枢であるシステム(タイタン)が不調をきたす
不調の原因は何か
AIは何を自律的に考えているのか
仕事とは何か
温かみを感じるSFで私の好きな1冊です♪
温かみを感じるSFで私の好きな1冊です♪