タイタン (講談社タイガ) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 寝しなに少しずつ読んでゴール。ブクログですすめてもらい、手に取りました。「旅する練習」に続いて今年二冊目のロードノベルを堪能しました。ご馳走さま。

    • マメムさん
      初コメです。
      温かみを感じるSFで私の好きな1冊です♪
      初コメです。
      温かみを感じるSFで私の好きな1冊です♪
      2024/03/09
  • AIが管理する未来を描く小説や映画は多いが、概ねディストピアが鉄板となっている。
    しかし今作は、AIと人類のユートピア...対等な対話を描いている。

    世界は「タイタン」と呼ばれる12基の巨大なシステムに、人間社会の全てをゆだねているが、そのうちの1機稼働年数の短いコイオスが機能低下に陥る、その原因を探るため若い心理学者(この世界の人間は労働をしていないため、あくまで趣味?の範囲の研究者のようだが)の内匠がカウンセラーとなることが内密に決められる...。

    かなりのページ数であるし、ところどころ細かいことが気になるが、AIと人類の近未来に希望が持てる小説であったことが何より印象深かった。

  • AIとロボットが発達し、ほとんどの人間が"仕事"から解放された世界。ある日、心理学博士である主人公は謎の男から"仕事"を依頼される。その仕事とは、社会円滑化のために開発された『タイタンAIのカウンセリング』だった。


    「面白い文章とは、"発見"がある文章である」

    以前感想を書いた本に掲載されていた言葉だが、面白いSFはまさに"発見"の宝庫だと思う。
    例えばこの『タイタン』の場合、人間が"仕事"から解放されると世界はどう変わるかが描かれているわけだが。事例の一つとして、仕事がなくなる→給与という概念もなくなる→貨幣経済自体が世界から消えている。
    なるほど、と一つ発見したのもつかのま、主人公はその貨幣経済を「まだるっこしい」の一言でバッサリ切り捨てている。確かに貨幣なしで購入できる世界からすればお金のやり取りなんてまだるっこしいわな、とまた一つ発見し、主人公の思考が完全に『タイタンの世界』の住人であることも合わせて発見し、思わずニヤリとしてしまう。

    SFジャンルでは当たり前のことなのかもしれないが、『キャラの思考がその世界に沿っていない』物語も多いので、つい嬉しくなってしまうのだ。

    上述はほんの一例だが『タイタン』は発見、つまり面白さに満ちあふれた作品だと自信を持ってお薦めできる。練りに練られたSFを愛してやまない方はぜひ。
    小数点までつけられるなら★4.5。

  • 「AI怖い、それを悠々使いこなせる世代の台頭も怖い、やっていけねえ」ってぶつくさ言ってたら同僚Oから「これが直接救いになるかと言われたら違うかもだが」と勧められた本

    AIの目覚ましい発達によって働く必要のなくなった人間は貨幣も必要なくなり購買ではなく「コレクト」を行って日々を過ごしている、というあらすじを聞いて「え、でもモノを買うのってそこに希少性とか高い代償と引換に得られるエクスタシーとかも重要なはずなのに、コレクトは一体なにが楽しいの?」と聞くと「本題はそこじゃないから…」とめんどくさそうな反応されたが、本編を読んでもやっぱりそこは解明されていなかった

    そもそも自分はベーシックインカムが確立した世の中になっても働き続けるはず、と今時点では思っていて、「暮らしていけるお金があるならすぐに仕事なんてやめるぜ!」と言える人はなにかしらアウトプット系の趣味や打ち込めるものを持ってる人だと睨んでいる、そういう意味では、AIから仕事を奪われるという過渡期を経て仕事をしなくてもいい世界にまで至ったとしても自分にとってはディストピアな可能性が大である

    隙自語が過ぎたけど、
    そういうちょっと偏った自分の思想に対しては前評判通り安心材料になる話ではなかったけど、
    それにしてもでっかい脳をそのまま作っちゃうとかそれが歩くとか発想はめちゃくちゃ面白かった

    しかしこんだけ高性能なコイオスがたった1人の人間との対話で刺激足り得るのかとか(AIとの恋愛の映画で裏で何万人とやりとりしてたってオチがずっとちらついた)
    後から作られたフェーベが処理で負けちゃう理屈がいまいちわからんかったりとか
    コイオスの処理能力に対して人間への奉仕作業が簡単すぎることと、コイオス離脱でタイタンの能力にガタがくるのとの両立とか
    結末がタイタン内で完結するところとか(人間がタイタンに対して感謝とか人権を与えるって流れなんだとばかり)
    おおん?ってなるところもあったけど
    コイオスのキャラクターは可愛いし、同僚たちもいいキャラで(雷はエルっぽすぎてずっとそれで脳内再生されてた)、仕事についてイメージから言語を使って解きほぐされていく感覚も読んでて心地よかった

    15〜20Rが標準の世の中になれば仕事しなくても楽しめるかな〜

  • 仕事とは何かに対するオリジナリティある考察が面白い。
    仕事がなくなった世界だからこそ、
    仕事とは何かということに対して向き合える。
    そういえば、自分がバスケットを高校で引退した後で、
    バスケットについての理解が深まるということが度々あった。
    そういうのに似ているかもしれない。

    AIの作り方も面白い。
    人間に役に立つためのAIだから、人間と同じような器官が必要。
    ここら辺は『小説家の作り方』の<<答えを持つもの/アンサーアンサー>>の在原露こと鈴木朋子さん思い出させる。

    仕事とは何かの結論(=影響すること、変化を起こすこと)はシンプルで衒いがない。
    それが"私たち"(=自我を持つ観測主体)にとってとなると条件が加わる。
    "影響を知る"ことと"仕事と結果が見合っている"こと。
    つまり力を出して、その力に見合った(大きすぎも小さすぎもしない)影響がフィードバックされること=やりがいが必要。
    転職活動中に読んで、今の会社に抱える不満の一端は
    確かにこういうところにあるなと感じた。
    また、やりがい=その仕事をやりたいと思えることと考えると、
    人は仕事とフィードバックを通して人と関係したい、
    ということがあるのではないかと思える。
    そういう点では、『2』で最原最早が言っていた「だから私たちは愛さずにはいられない、愛されずにはいられない」という言葉を思い出す。

    ギリシャ神話を背景にしてあるのも面白い。
    ギリシャ神話やほかの神話も読んでみたくなった。
    SFではあるが、神話の背景やロードムービー的進行が
    ファンタジーっぽさも出してて、
    小難しいことを考えずに楽しみやすいようになっていると思う。

    男女の交わりについての考え方も面白かった。
    そういった行為が激しくなりやすく、
    時には暴力といえるレベルになったりするのも、
    確かにそういうことか、と思えた。

    最後の部分も、おぞましいような、救われたような、
    まさに神話のような結末といえるんじゃないか。

    ほかのまど作品はスパイスが強すぎて、
    自分は好きだけどほかの人に誰でもお勧めできるかはちょっと…
    という感じだったが、
    この作品はだれにでもお勧めできる。

    マジで野崎まどは天才やと思った。

  • 野崎まどにしては真っ当なSF小説。
    真っ当であることが良いか悪いかは読者に委ねられるだろうけど、僕は嫌いではなかったかな。
    好きな仕事も嫌いな仕事もあるけど、生きること自体が仕事なら、まあ仕事してやるかな、と。

  • AIのカウンセリング、人が仕事をしなくていい世界において仕事の意味を探す旅に出るAIと人間、AI同士の対話など
    意外性のある設定と展開が多く面白かった
    終盤の逃走劇が物語の中で少々浮いている嫌いはあるが
    中盤のロードムービー的な展開を通して一つのテーマについて考え抜かれた先の結論は
    普遍的であっても説得力のある良いもので、この手の書き方は著者の十八番のようにも思える
    最後の写真の解釈ができていないのだけど、どう考えるのが正解だろうか?

  • 自分の中で最高傑作をほしいままにする作品。

    飾りつけを過度にしない文体でするすると読みやすい。
    しかし表現描写にはこだわっている箇所もしっかりと存在していることが素晴らしい読みやすさと芸術性を感じさせてくれる。

    仕事に対して真摯に考え対話を続ける作中の行動力に感服する。

    最後の答えにたどり着いたときストンを腑に落ちた。

    記憶を消してまた読みたいと思うし、この内容を絶対に忘れたくないとも思う

  • 野崎まどの著作ということで期待して読んだものの、期待外れだった。

    特には純粋機械化経済の社会増をどう描くのか、に期待したところ、確かにそれなりの解像度ではあったものの(描写の参考にはなった)サプライズはなく、特に作劇上は単なる背景設定的であって、物語の筋との密接性は低かったと思う。

    仕事についても「仕事とは何か」という現代的一般論は語られつつ、あくまでバディであるタイタンにおいてのそれの論であって、「仕事をしなくなった社会や人間がどうなったか?」「仕事が忘れられた時代においてどう捉えられるか?」という観点での考察は乏しい。

    また、登場人物たちも(当初こそ「えっ、仕事?」的な未来的リアクションだったが)普通に仕事していて、国連の上層含めて、彼らが仕事をしている動機付けや、非効率が許容されることの説明とかがなかった。なぜそれらは趣味ではなく仕事なのか、ポジションがあるのか、それは社会としてどのように要請され、誰がどのような形の報酬を払うのか。一切言及ナシ。

    本書の主題は「AI社会で鬱病になったAIをカウンセリングする」というログラインに尽きる。ので、主人公とタイタンとの対等な人間ドラマが主題。だけどこのあたりは退屈だったし、あんまり驚きもなかった。
    タイタンに身体があって立ち上がったり、歩いたり、別種のタイタンと戦ったり、人間の中にタイタンが現れたり、という外連味のあるビジュアル的描写はさすがだったけど、説得力に乏しかった。

    というか対話してたのは蒸留した別系統モデルであって本体に影響ないんじゃなかったっけとか。能力的にもう少し色んな事わかるんじゃないかとか。機能制限とか社会上層部の在り方とかがトップダウン思考的ご都合主義で描かれすぎてたりとか。ステレオタイプ気味の人間ドラマを先行しすぎて、設定の粗や飛躍が気になったり、ついていけなかったりした。

    ラスト1/4はまあおもしろかったけど、まあ、、、という感じ。
    親和のアナロジーをうまく織り込んでるのはなるほどと思った。

  • DMMブックスにて読了
    AIの発達によって人類には仕事がなくなった
    このユートピア?といえる世界でAIの中枢であるシステム(タイタン)が不調をきたす

    不調の原因は何か
    AIは何を自律的に考えているのか
    仕事とは何か

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著者プロフィール

【野﨑まど(のざき・まど)】
2009年『[映] アムリタ』で、「メディアワークス文庫賞」の最初の受賞者となりデビュー。 2013年に刊行された『know』(早川書房)は第34回日本SF大賞や、大学読書人大賞にノミネートされた。2017年テレビアニメーション『正解するカド』でシリーズ構成と脚本を、また2019年公開の劇場アニメーション『HELLO WORLD』でも脚本を務める。講談社タイガより刊行されている「バビロン」シリーズ(2020年現在、シリーズ3巻まで刊行中)は、2019年よりアニメが放送された。文芸界要注目の作家。

「2023年 『タイタン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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