植物少女 [Kindle]

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想・レビュー・書評

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  • みおを出産する時に脳出血で植物人間となった深雪。植物人間の母が亡くなるまでのお話。
    みお目線で書かれているのだが、ストーリーや感情の揺れ動きも特段なく、前半は淡々と進んでゆく。途中、母を人形の様に扱ったりする部分には?となった。後半からは生や死について描かれているが、核心に近づくようでなかなか掴めない。こういうストーリー展開もなく淡々と書かれた小説は苦手というか、感想がなかなか出てこない。

    しかし、読んで良かったと思う。植物人間にについて関わった人当人にしか分かり得ない感情や世界があり、この本を読み終えるまでは理解できなかったと思う。植物人間になった深雪の事で、父親に再婚を勧めたり子供が可哀想だという親族が出てくる。主人公目線で見ればなんて冷たくて自分勝手なんだろうと思うのだが、私もきっとそっちの人間だ。私は植物人間に対して怖さや(本当に失礼だが)気味悪さを感じたからだ。特に自分の意思がない、コミュニケーションが取れなくても、本能的な部分は残っていて、食べ物を与えれば咀嚼して嚥下し、痛ければ手で振り払うのだ。ただ本能だけで生きている。一体生の価値とは何なのか?

    主人公は、話もできないでただ呼吸だけをしている母でもそれに違和感なく当たり前に丸ごと受け止めている。呼吸しているだけではない。肌の温もり、匂い、(反射なのか)握り返してくる手、愚痴も何もかも話せる相手として母は存在している。みおが拒絶するとこなく互いに受け入れているのはそんな母がいたからで、みおは救われていたのかもしれない。決して神秘的な話では無いし母からのメッセージも何も無い。ただ呼吸しているだけ。それでもみおのちゃんと母親であって、ただただ自分の存在も相手の存在も認めている。それだけでもいいんじゃないかと思えた。

    でも、あくまでみお目線の話。母が受け入れてくれると思っていたのもみおの妄想かもしれない。母にわずかでも意識があるのかもわからないし、もしたら母は植物状態が苦痛で逃げ出したかったかもしれない。でも植物人間であろうとなかろうと他人なんて分からないのだから、自分の妄想でしかない。(本書と関係のない事ですみません)
    また、タイトルの植物"少女"とは。母のようにただ呼吸だけして、ただ今を生きるだけ。瑞々しく生きてみたいと言うみおの思いなのか。

  • 植物状態の母と遺された父、幼い子供の話です。
    病院での世話やほかの入院している人々の様子がよく書かれていて、生と死について考える作品なのかな、と思いました。

    個人的に読み終わったあと腑に落ちる感覚はありませんでしたが、表現は細かく、そしてリアリティのある文章でした。

  • 自分を出産しときに脳出血で植物状態になった母とその娘のお話。
    植物状態の母親しかしらない娘の母親に対する振る舞いは確かに傍若無人で不謹慎にも見えるが、この母子の普通はこれなのだと思う。
    最期、癌になった母親に対して『わたしのせいだ、わたしがお母さんにひどいことをしたからだ』と娘が独白するところで反抗期に母親に散々迷惑をかけた自分と重なってしまった…
    こんな親子の描き方があったんだなあ、と思わせられる作品でした。

  • 植物状態の母親に毎日会いに行って、お世話のお手伝いもして、
    はたから見ればいい子だねって思うのかもしれないけど、
    あれは母親を玩具にしてたようなものかな。
    感情がとも合わない交流だから仕方ないのかな。

  • 題名から違うお話を想像していた。この話でなぜ植物「少女」なのかとは思う。
    お産で植物状態になった母とその娘の成長のお話。淡々と話は進むが、感動やカタルシスはほぼない。

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著者プロフィール

1981年京都府生まれ。2021年、「塩の道」で第七回林芙美子文学賞を受賞。22年、同作を収録した『私の盲端』でデビュー。その他の著書に『植物少女』。現役の医師でもある。

「2023年 『あなたの燃える左手で』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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