墨のゆらめき [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 自分の結婚式の時の筆文字が忘れられない。それはもう「美文字」としか表現のしようがなくて、心が洗われて、不覚にも感動を禁じ得なかった。だれが、どのようにして書いているのだろう?
    本書を見かけ、筆耕士の世界を知りたくて一も二もなく手に取った。
    本書は筆耕士とホテルマンの物語で、最後にドドーッと伏線が回収されていく。三浦さんの文章がこれまた流麗で読みやすいことこの上なかった。特に、書の作品に取り組む場面の描写は何度読んでも凄みが伝わってくる。
    きっと、感動を与える文字ってこうして生まれるのだと思った。というか、そもそも文字で感動させるってかなりすごいことだと思う。自分の結婚式の諸々の文字はこうしたホテルマンと筆耕士の関わりのなかでできたのだと思うと、なるほどそういうことかと腑に落ちた。
    自分も学生の時分悪筆だったが、たまたま書道で有名な学校にいて、先生の教え方が抜群にうまかった。字ってきれいになるんだとたった一コマの中で実感できた。
    その経験もあってか、大人になって通信講座で書道を修了した。一つの課題について100枚は書くと決めたから何だかんだで6千枚は書いたと思う。
    でもプロの筆耕士はいろいろな書体を再現できるというから驚きだ。その上自分だけの筆致があるというのだから、そりゃ腱鞘炎にもなりますよねと思う。当の自分はお手本写すだけで精一杯。人並みの文字になっただけで満足です(^o^)
    今の時代は、論文や書類もみんなパソコンで打っている。これから「打ちこむ」ことが書くことに取って代わられていくのだと思う。でも、自らの手で描いた文字の価値は揺るがないと思う。
    これからも大切な時に、自分の文字で気持ちを伝えたいと思う。
    また三浦作品に新たな世界の扉を開けてもらった。

  • Audibleで聴了。堪能しました。ご馳走さま。

  • '24年2月18日、Amazon audibleで、聴き終えました。三浦しをんさんの作品、確か…初かも。自分でも、意外…

    天才的な書家と、しがないホテルマンという二人の、繋がりを描いた作品。「友情」というほどは強くなく、でも確かな、繋がり…これから先、友情となっていくんだろうな…的な、温かな良い物語でした。

    作品とは関係ないけど…なぜかずっと、三浦しをんさんって、男性だと思い込んでいました。なんでだろ(⁠。⁠ŏ⁠﹏⁠ŏ⁠)

  • 初めて三浦しをんさんの作品を読みました。
    全然展開が予想できなかった。時々笑えて時々振り回されながらもホッコリする、独身男性の物語かと。
    まさか反社会的勢力につながるとは…。

    カネコ氏とのやり取りには笑わせてもらいました。ちゅ〜る(?)に興奮する続…。
    遠田の意外すぎる過去。書家なんて言うたら、生まれも育ちも高貴なもんと思ってましたよ。生まれながらに英才教育を受けないと無理だと。
    あくまでフィクションですが、遠田のようにまっさらに近い状態であれば、不可能ではないのかもしれないな…と思いました。
    遠田が今の暮らしにたどり着くことができて、本当に良かった…。

    新潮社の墨のゆらめき特設サイトに、松苗あけみさんが書かれた続と遠田のイラストが掲載されていますが(私の頭の中のイメージとは少し違った)、こんなタッチで漫画化されたら面白そうだな、と思いました。

    なお、Audibleで聴きましたが、声優さんの朗読もすごく良かったです(あまり声優さんに詳しくないのですが、とても有名な方だそうです)。猫の鳴き声とか…笑

  • 三浦しをんさんの描く人物は,人間味に溢れ,クセはあっても,なぜだか心惹かれてしまう

    遠田氏の書を,ぜひ見てみたい

  • 読み終えて直後、えっこれで終わるの?もっと続きを読みたいなーって思いました。もっとこの2人の話読みたいので、続編が出たら嬉しいな。墨の表現がとても豊かで瑞々しい表現がいっぱいで、書の魅力が伝わってきて良かったです。あと、人から話しかけられやすい体質の主人公に、私も似たような体質なので共感を覚えました。美術館で時々書の展示を見たことはあるけれど、この主人公並みに興味を持って見たことはこれまで無かったけど、この本を読んで今度から書の見方が少し違うものになるかもしれないと思った。筆跡ってただ上手い下手だけじゃなくて、人柄とか感情とか色んなものが表現されているから確かに面白いよなって改めて思った。

  • ラスト50ページぐらいから一気に…………良かった。
    そこまでがちょい退屈だったかなぁ
    《書》に日頃から馴染み無いんで………………
    筆って………………40年以上持ってないかも(笑)

  • 読み始めはホテルマンの続と筆耕士としてホテルに登録している書家遠田とのありふれたやりとりが淡々と書かれているのかなと思っていたけれど、中盤以降ものすごく面白くなった。三浦しをん作品は何冊か読んでいるのだけれど、辞書を編纂する編集者を取り上げた舟を編むに近いものを感じた。
    友情というと陳腐になってしまうけれど、もっと強い絆が2人の間にはあったんだと思った。
    続と遠田はこのまま別れてしまうのかなと心配になったけれど、爽やかなラストに救われた。

  • 初めての三浦しをんさんの著書。オーディブルで。文章の表現が柔らかく面白く的確で幻想的で、声優が櫻井孝宏さんだったこともあり状況を鮮明にイメージしながら一気に完聴。クスリと笑う場面が何度もあり、娘に「何笑ってるの」と訝しげに聞かれることもたびたび。
    しをんさんファンになった。次は代表作を読みたいと思う。

  • ホテルマンとそのホテルに筆耕士登録している書家、2人の男性による物語。筆耕士という言葉として仕事を認識していなかったので、ホテルでの登録から受注、依頼までの話が興味深かった。『月魚』でも感じたが、三浦しをんさんの描く人2人の掛け合いがとても好き。交流を深めるきっかけとなった代筆エピソードの数々が微笑ましかった。

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著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

三浦しをんの作品

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