「若者の読書離れ」というウソ (平凡社新書1030) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • ここでいわれている若者というのは、小学生から中学生、高校生、一番中心になるのは中学生かなぁという印象だね。小学生はわりと本を読み、年齢があがるにつれて読書量が減っていき、大人になるとほとんど読まないというのは、よく聞く話。読書離れなんていうけど、昔と比べて今はむしろ読んでいる方ですよ、という話と、そういう若者がどんな本を読んでいるかという傾向の話。なかなか興味深かった。

     俺は比較的読書する方の大人だと思うけど、本書に出てきた『バトルロワイヤル』とか、『古典部』シリーズは読んでいた。でも、ほとんどの作品は名前は知っていても、あまり読もうという気にはならないなぁという作品群だったね。そういうものなのだと思う。若者が求めるのはわかりやすさ、感情の振幅、大人に勝つカタルシス、なるほど年代によって求めるものがかわるのだろうな、と感心した。

     太宰治の『人間失格』は、有名すぎて読む気にならなかったんだけど、いずれ読みたいと思ったね。

  • 「若者の読書離れ」の虚構をデータとともに指摘しつつ、「では若い読者たちはどんな本のどういった部分に共感しているのか?」という分析がおもしろい。自分は本を読まない若者だったが、ここで考察されている傾向には今の自分の感性と重なる部分も反発する部分もあり、興味深く読んだ。わずかながら、「読まない」人だけでなく「読めない」人にもちゃんと言及があるのが嬉しい。

  • 若者は世間一般に言われているほど本を読んでいないわけではない。中高大という学生期であるがゆえに大人と読書傾向が違う。TikTok売れという現象あり。ここで売れるのは一定の評価を得たものがほとんど。若者の読書のコンテンツの特徴分類(3大ニーズと4つの型)が興味深い。①自意識+どんでん返し+真情爆発,②子どもが大人に勝つ,③デスゲーム,サバイバル,脱出ゲーム,④余命もの(死亡確定ロマンス)。大学生の不読率が50%弱,これは成人の不読率とほぼ同じで,大学のユニバーサル化が原因という考察は納得した。

  • 筆者が「読書の得意不得意は親の読書量や家の蔵書数というこれまでの環境要因ではなく、行動遺伝学、つまり遺伝で決まっている」とした根拠の論文が疑問。論文の原文を読んだが、著者の行動遺伝学者安藤さんは社会学が専門で遺伝学の専門ではない。文献では一卵性双生児と二卵性双生児を対象に読書への関心を検討している。しかし、統計学としては母数が足りないこと(本人も考察で指摘)、統計上の有意差の設定もあいまいである。
    これを学術的に唯一の根拠として、若者の読書傾向を語るのは科学的に不適切である。

    YA世代がアンケートで読んだという本をジャンル分けし、各ジャンルを内容から考察するのは面白い手法だと思ったが、最初に決めた4つの型に当てはめて解説するだけでなく、それぞれのジャンルが型からどうはみ出て別のジャンルと差が出てくるか、を考察することで、さらに広がったと思う。

  • 第一章と第四章しか読まなかったけど面白かった。朝読、BookTok、「なろう系」小説というものを始めて知って、最近の出版動向の一端を知れて勉強になった。
    出版不況は概ね新聞雑誌の売上減少で説明できるというのはナルホド感。大要、若者の読書量は何十年も変わっていないというのは意外なような、そうでもないような。

  • 令和の中高生がどんな本をどれくらい読んでいるのかを紹介した本。息子はまだ小学生だけど、今後どんな本を読んでいくのかなと興味深く読んだ。
    2000年代に中高生だった身としては、ラノベが若者に読まれなくなったという事実にビックリした。
    イメージでは、アニメ調の表紙のハーレムものとかご都合主義の転生ものとかがもっと流行ってるのかとおもいきや、そういう傾向でもなかった。ちゃんと実際どうなのかを知るのは大事だなと実感。
    著者の、良い悪いの評価はせず、事実を興味深く観察して述べる、という姿勢が良かった。

  • ふむ

  • 学校図書館の現場にいて感じる「高校生によく読まれる本・高校生の読書傾向」について、データを元に言語化されていると思った。著者の分析による中高生が本に求める「三大ニーズ」とそれに応える「四つの型」は、まさに定番の作品に共通の説明となっている。高校生に人気のレーベルの入れ替わりや、よく手に取られる作家の変遷、20年経っても人気が変わらない作品の分析についても、なるほどと感じた。小・中学生の動向もあり、興味深い。[NDC] 019[情報入手先] web新刊案内[テーマ] フリーテーマ(備前R5-2)

  • 統計的資料に基づいて、小学生の読書量は増えていること、中高校生については横ばいであることを示し、若者が読書離れを起こしているわけではないことを示す。そのうえで、よく読まれている本の類型化をはかる。が、類型化が薄い。よく読まれている本の紹介に帰しており、記号論的に読者のアイデンティティと主体の構成を明らかにしようとするCultural Studies的なアプローチをとってもらえたら面白かったかも。それにして、読書するかしないかは、遺伝的らしいが・・・(T.N)

  • 知らない世界の話があった。
    そして
    日頃疑問に思っていたことのヒントになった。

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著者プロフィール

ライター。1982年青森県むつ市生まれ。中央大学法学部法律学科卒。グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA)。出版社にてカルチャー誌や小説の編集者を経て、独立。マーケティング的視点と批評的観点からウェブカルチャー、出版産業、子どもの本、マンガ等について取材、調査、執筆している。単著に『いま、子どもの本が売れる理由』『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』(星海社)『ライトノベル・クロニクル2010ー2021』(Pヴァイン)など。

「2022年 『ウェブ小説30年史 日本の文芸の「半分」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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