卒業生には向かない真実 〈自由研究には向かない殺人〉シリーズ (創元推理文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 冒頭からすでに前回の事件がトラウマになっているピップの様子がありありと見え、マックスから慰謝料よこせって言われてるし、日本でも処方されてる合法のものではあるものの(入手方法は恐らく向こうでも違法)抗不安剤漬けになってるし、気が重くて仕方なかった。
    前作でピップに厳しい感想を書いちゃったんですが、そういやこの子まだ大学生にもならない高校生みたいなもんだったと思って気が塞いだ。当たり前に車運転してるからそういうの忘れちゃう。
    前作の暴力的な言動や思ったことを我慢できず銃のように撃ち込む言葉の攻撃の癖は前々回のストレスから来てると判断しても良かったのかもしれないなと今回感じた。序盤まではね。

    なのにポッドキャスト(推理)またやるんかい!?それもお金のために!?元の自分に戻るためというお題目(それも心を病んだピップの無理やりな思い込みから来てるやつ)はあるとはいえ!?と若干引いてしまった。
    やはりピップを好きになれないかも、でも支離滅裂で自傷のような行動だからなんだか同情もしなくもない…と憐れみ半分理解不能半分で読み進めた。

    まさかこんなことになるとは!またしても「まあこいつが今回の犯人だろうな」は簡単にわかっちゃったけどそこが本題ではなかった。それにしたって、ラヴィも止めてあげて!という気持ち…ナオミの事故をもみ消したのと同じことやっとる…。そして信頼している友達も巻き込んどる…。前回前々回とピップの行動に疑問符が湧いたのですが、伏線なのか作者さんの素なのかで評価が変わるな。
    DTキラー冤罪疑惑のことや自分のたくさんの経験から警察に不信があるのはわかるし、殺されそうになったり犬の死の真相を知って逆上したのもわかるが、なんで毎回自分に不利なやり方を選ぶのだろう?見つかって捕まって裁判になったらより重い罪になるのにと不思議だった。案の定詰めが甘くてヘッドホン残してるし。いや、自分が死ぬかもと思ったら正しい判断は出来ないだろうとは思うし、その国の警察組織や法律にもよるとは思うのですが。

    ラストは逃げ切った…でいいんですよね?
    仇のジェイソンをやっつけ、憎きマックスを陥れ、ムカつきホーキンスに一杯食わせ、読者に一石を投じる終わりですね。スッキリするかというと、全然しないです。例えジェイソンがどうしようもないクズだったとわかっていてもモヤモヤする。ピップの恐怖も怒りもそれまでの被害者たちの無念もすごくよくわかるのだけど。
    日本でも最近けっこう大きなそれらしい事件あったと思いますが、司法大丈夫?って話は見聞きするんで気持ちはわかる。
    でもピップたちがやったのって結局ビリー・カラスから一方的な自白を聞き出して冤罪なすりつけた警察と同じことではないかと思うと…。
    何より私はラヴィだけでなく、大切で家族にも等しいだろう友人数名を巻き込んだのがどうしても受け入れられなくて。ラヴィとピップだけで全部やってたらもしかしたらもっと評価高かっただろうか…いや、それでも微妙かな。
    どんどんページをめくらされたし、面白いは面白いし前日譚のお話がもう出版されてるのでそっちも読むけどどうも読後感のせいで星が少なめになっちゃった。

    今はマックスが捕まって判決下ってめでたしめでたしですけど、ビリー・カラスやサルとアンディの事件のように、いつか第二のピップが現れて、真犯人はこいつでしたよ!ってやる可能性はあるよね。それに怯えて生きるのか。
    何よりピップは人を殺した罪悪感と一生生きていくわけで、なんとも言えない苦さが残りました。

    時代問わず仇討ちものや犯罪ものは普通に読むし、共感したり応援したりすることもあるけどなんでこの作品だけ微妙な読後感なのか考えたけど、ピップがどうしても暴力への衝動や自分が正義と信じたら突き進みすぎるのを抑えきれない描写がいくつかあって個人的に反発を覚えたこと、行き当たりばったりで最悪の結果になってるように見えなくもないこと、崇高な目的であるように見えないこと、恐らくノーと言わない(言えない)だろう友人に甘えすぎてるところ、一作目の善であろうとしたサルの思いやその頃のピップ自身も踏みにじってないか?という疑問なんかが引っかかったのかもしれません。

    一作目の終わりの爽快な気持ちがどこへやら。これから読む人は一作目で終えるのもアリかもしれないねとちょっと思ってしまった。
    これって本国では子供向けティーン向けじゃなかったかなと思うとなおのことこれで大丈夫だったのかな?とぼんやり考えてしまう。

    カーラが同性愛者だというのがサラッと描かれてて良かったなーとか作者さん二十代でこんなの書いたんだすごいなーとかぼんやり考えてたけどそれどころじゃなくなりましたね。

    他の方の感想を色々読んできて、「ラヴィはサルにされたことと同じことをマックスにやってるのに何か思わないのか」的なコメントに頷いてしまった。確かにな…。

  • ピップこと聡明な女子高生探偵フィッツ・アモービが新たな謎に挑む物語の三作品目。原題は"As Good As Dead"
    前作で衝撃的なトラウマのような死を目にし、司法・警察への不信を決定的にした、睡眠剤なしでは眠れないピップ。
    本作では、まさかの無罪放免を勝ち取った"最低の人間"マックス・ヘイスティングスから名誉棄損の訴追を受ける。
    頭のないハト、不思議な落書き、自らに忍び寄る不穏なサインに気付き始めた彼女は再びスプレッドシートに事実をまとめ、”敵である可能性のある人物リスト”に周囲の人間の名前を記し始める。
    同時にとある連続殺人と冤罪の疑惑に気づき、再びリトル・キルトンとの関係性と、アンディ・ベルのもう一つの姿に近づいていく。
    そしてピップの身に、最大の危機が迫ったとき、彼女は決定的な決断を下す。

    最後にピップとラヴィが出した結論の正否はさておき、知識と行動力を持ち、制度と戦う若者の姿には少なからず心を打たれる。何より、著者自身の不条理への怒りが伝わる。
    本作で描かれる主人公ピップは、前作までのまっすぐに真実を追う前向きな少女ではなく、PTSDとい思われる傷を負い、眠れず、危険に身を脅かされながらも戦う道を選ぶタフな姿。彼女自身に迫る危険に怯まず、奮い立つシーンは心が痛くなる。トラウマに戦い、司法と警察に抗い、自らの正義を貫く。予想外の展開に一作目の伏線回収、といえるような場面もあって読みごたえは十分。ミステリーとしてもすごく面白かったが、血反吐を吐き眠れずに事件と戦うピップのように、爽やかさの一切ない重苦しい読後感です。

  • ホリー・ジャクソン。ピップシリーズ三部作の最後。前作の最後に起きた事件でピップは薬物に頼るほど精神的に追い詰められていた。またマックスからの名誉毀損の訴訟もあり、そこにピップを付け狙うストーカーが現れる。警察はあいかわらず助けにならないでとうとう失望しきってしまう。前半はそのストーカーとの対決で、後半にはストーカーとの対決でピップが決断したことについて語られる。
    第一巻を読み終えたときシリーズの最後がこんなに重いものになるとは思わなかった。
    作者があとがきで触れているとおり刑事司法制度とその周辺の実態についての失望と怒りが本巻の根底に流れている。ピップの行動に賛否両論あるとは思うが、安易にハッピーエンドにせず、バッドでもない上手く混ぜ合わせた本作独自の結末に落としたのは良かった

  • 途中からの展開が衝撃すぎて言葉にならない。1作目は爽やかなYAミステリだったはず。。。前作2作目の感想にも書いたようにピップを心配した。トラウマにならなきゃいいけどって。思いっきりトラウマになってるし、薬には手を出しているし、最初から読んでいて辛かった。そして途中、ピップがしでかした事に最後まで私はついていけなかった。そう思う私自身がつまらない大人だと指摘されている気分だ。ラヴィが最後まで天使だった。
    後書きを読んで、作者の司法や警察に対する怒りが元になっており、彼女がまだ20代の女性という事を知って、少し納得した。うん、ハッピーエンドで良かったのかな。ちょっとだけモヤッとするけど。

  • 3部作となる作品の最後がこうなるとは予想もつかなかった。読みながらずっと頭の中で「これでいいのか?」と思いながらページをめくる手が止まらなかった。
    なんとも言えない深い闇を残したままだけど、小説としては凄かった。

  • 衝撃の展開といわれていたが、前作の内容も踏まえた上で、個人的には衝撃というより納得の展開だった。むしろそこからの緻密さスリリングさに、自分が果たしてピップにどうなってほしいのかもよくわからないまま夢中でラストまで駆け抜けてしまった。三部作を通してのピップの心情の移り変わりはそういうものとして受け止められるものの、『自由研究~』を読んだ当時に感じた爽やかさが鮮烈だったので、複雑な思いもある。それでも、自分にとって忘れがたい作品となることは間違いなさそうだ。

  • まさか部長刑事が。
    てっきり薬の幻覚とか、夢オチとかそんな展開かと思ってた。
    こんな展開正直望んでなかったわ。
    救いがなくてただただびっくりした。


    それとも、自分の読解力不足で実は救いがあったんだろうか。
    先が気になってだいぶ乱読してしまった。

  • なんなのこれは。
    というのが読後の感想。
    前の2つでは直向きに事件を追ってたピップが、今作では前作のトラウマで苦しんでるし、中盤では自分もそれまで追ってた側に行ってしまうし。
    法治国家にいる私にはこの展開に全然光を見出せないんだけど、それを考えてもピップが本当の意味で救われてないと思う。

  • 1作目だけ読んでほんわかするか、3作読んで嘆賞するか
    どっちを選ぶか、ということで3部作最後の作品。
    青春ミステリとしては最高の作品だと思う。計画どおりかどうかを読者と同時進行で考えさせる後半の構成も秀逸だし、なにより3部作を通じた落とし方も素晴らしい。
    ただ、前作を引きずった鬱展開から、予想どおりの犯罪者判明の後の、安易な脱出劇を経て展開されるのは、、、。正直のところ評価の点数を付けるかどうかは迷った。
    第1作との乖離がすごくって、読者が流れ着いた先はなんという終わり方。正直、喜べない。
    謝辞にもあるように、作者の裁判制度(米国陪審員制度)への不信感と嫌悪が小説に色濃く反映された結果だと思うけど、それを逆利用して、嵌め落とした事件の評決をラストにもってきての終わり方は、個人的倫理観としては気に食わない。そう思ってしまうのは、私が法律を生業とする仕事をしているからかなあ。職業病か?
    でもこの3部作、読書の面白さを充分楽しませてくれる作品であることに間違いはない。

  • 第一部の終盤、もうダメだー死ぬーとハラハラした後、
    あっそうくるんだ、とむしろ見直しました。

    この後半の展開がなかったら、ある意味、ただの名探偵モノになっていたというか、
    この展開があったからこそ★5つをつけたい。

    三部作構成も素敵ですね。
    三部作の魅力(威力?)を遺憾なく発揮というか、
    最初からこういう話だったんだなぁというか・・・

    映画「スクリーム3」でも「なぜならそれは最終章だからだ 過去が襲ってくる
    主人公の死もあり得る」とかなんとか言ってましたが(いや死んでないけど)、
    なるほど三部作っていいものですね。

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