タイプの違うホラー作品4編を集めた短編集。
◆「汐の声」
幽霊屋敷に泊まり込んでの撮影に参加した、霊感少女サワ。しかし、彼女には霊感などない。両親による売り込みの成果なのだ。
どうにか撮影を乗りきろうとするサワだけが気付いた、廊下を走る足音、少女の影、風呂場の水音、抽斗の中の薬の包み。気のせいなのか幻覚か、それとも……?
山岸凉子作品で怖い話というと必ずと言って良いほど挙がる本作、ついに電子化!
紙の本で何度も読んでいるのに、今頃ようやく気付いた主人公のヤバいセリフ。
『ママもパパもいない所で寝るなんて…』
えっ! まさか、寝室はさすがに別、だよね……?
もう一つ、完っっっ全に見落としてた!フキダシにしか目が行ってなかった。
怯えきった主人公が撮影スタッフたちの部屋に混ぜてもらったシーン。『サワさんはマージャンやるの?』とか喋ってるコマ……いるじゃん!(笑)すごくさりげない。あまりの見落としに爆笑してしまった。
この調子だと他にも見落としてそうだな~。
以前は、私は主人公に対して批判的だったのだが、今回時間を置いて改めて読んだら、なんとも気の毒に感じた。まだ17歳、共依存ぶりからするとかなり厳しそうだが、毒親から離れるチャンスはまだあったはずなのに、と思う。
◆「千引きの岩」
親の離婚で転校してきた可南子。学校には戦前からあるという体育館があった。そこへ入って行く人影を可南子は何度も見ているのだが、その体育館は使われていないという……。
微妙に受け身だが負けず嫌いの可南子、いかにも運動音痴な秀才といった見た目の榊、イケメンだが脳筋野生児の西町。山岸キャラとしては異色の3人が活躍するホラー。
結構怖い話なんだけど、脳筋西町が全てを薙ぎ払う!(笑)
最後、ヤバい雰囲気で終わるんだけど、そこまでヤバいものとするには根拠が弱い気がする。この程度の曰く付きの場所なんて、ごまんとあるでしょ。
◆「夜叉御前」
両親と祖母、幼い弟妹と共に山奥の古い家に引っ越した紀子は、病気の母に代わり家事を一手に引き受けている。そんな忙しい暮らしの中、彼女は視線を感じる。鬼の顔をした女の視線を……。
収録作品中、ヤバさ1位。死霊も裸足で逃げ出すんじゃないか?(足があるか知らんけど)
この主人公、なんとビックリ、15歳! 真相よりもびっくりだわ。
◆「キルケー」
最終バスを逃し、山の中で道に迷ったハイキングの中学生たち。山奥らしからぬ立派な館を見つけ、一晩泊めてもらうことに。館に住むのは妖艶な婦人とたくさんの動物たち……。
山岸凉子にしては珍しい、単純明快なホラー。元ネタである「オデュッセイア」等を読んだ人には展開の予想がついてしまうのでは。っていうか、タイトルで既にネタバレしてる?